表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/212

58 [チェルシャ] ミイラ少女の成り上がり

 リズテレス姫と私は食事に行くことにした。

 コーネガルデの繁華街から少し離れた路地裏にあるお店。

 ここは私が姫様に紹介したとっておきの場所だ。

 キッチン『ポテリアーノ』。

 小さなレストランだけど、その味はどんな高級店にも負けない。

 コーネルキア中の、いや、周辺国も含めた一帯の名店を食べ歩いた私が保証する。特にジャガイモを使った料理が絶品で、一番のおすすめはふわとろのポテトオムレツ。


 テーブルの向かいに座る姫様が思い出したように。


「トレミナさんもここの常連なの。彼女もオムレツは必ず頼むと言っていたわ」


 ……さすがトレミナ。本物を探り当てる嗅覚と舌まで備えているとは。

 騎士にしておくのは惜しい逸材。

 そういえば、奴はジャガイモ農家になりたがっていた。あれだけ戦闘と料理の才に恵まれているのに贅沢な話だ。

 ま、私も以前は騎士になるつもりなんて全然なかったんだけど。


 目の前のリズテレス姫を見つめた。

 真っ白な髪に、知性を感じさせる眼差し。

 こことは異なる世界からやって来た姫様。

 全ては、彼女の力になるため。



 私がコーネガルデ学園に入学したのは十一歳の時。

 別に騎士になんてなりたくなかった。目的はただ一つ、錬気法の習得。

 マナを扱えれば、この不幸な体質を克服できるかもしれないと思ったからだ。

 私の肌は生まれつき日光にとても弱かった。太陽を浴びると、火傷したように赤くなる。

 なので、常にフードを深く被り、顔や手には包帯を何重にもして巻いていた。

 そんな私の当時のあだ名はミイラ少女だった。

 屋外での運動など恐怖でしかない。体力がつくはずもなく、学年順位は当然ながら最下位。だけど順位なんて、……気にはなったけど、それより一刻も早くマナを身につけたかった。


 一日の大半を瞑想に当てる。

 学園での授業中も、寮に戻ってからも、ひたすら瞑想。

 その甲斐あって、入学から二か月でマナを認識できるように。

 そこからは毎日、限界を超えて〈錬〉りまくった。

 まず早朝から二時間の〈錬〉。集中力を使い果たし、学園では抜け殻のように過ごす。夕食後にまた二時間の〈錬〉。済むと泥のように眠った。

 この頃はリアルミイラと呼ばれたものだ。


 私を突き動かしていたのは、思いっ切り日の光を浴びたい、という想いだけだった。マナを纏えばその夢が叶うかもしれない。

 決行は二年生に進級した直後と定め、それまでに少しでもマナを増やすことにした。


 月日は流れ、二年に上がった私は、学園でのマナの使用が解禁された。

 相変わらず体力がなかったけど、私にはこれを補って余りある量のマナが備わっていた。同級生達の約四倍といったところ。


 初日の体力測定で、最下位から一気にトップへ。

 最後の手合わせでは、剣を合わせた瞬間に相手の木剣が砕けたので、オール不戦勝となった。

 この日はミイラ覚醒デーと名付けられたっけ。

 そんなものより、私にはもっと大事な行事があった。


 マナを〈闘〉の状態で維持し、右手の包帯を解く。

 おそるおそる日光の中へ。


 え、赤くなっていく……。

 そんな! どうして! い! 痛いっ!


 私は絶望した。

 この一年間は何だったのか。


 しばらく呆然としたのち、夜更けになって寮を出た。

 もうここにいる理由はない。帰ろう。


 しかし、時間が時間なだけに、街の外へつながるゲートの所で止められる。

 学園に連絡が行き、なんと理事長がここにやって来るとのこと。

 なぜ一生徒のために学園の運営者がわざわざ来るのか、びっくりしかなかったが、本当に驚いたのはその後だった。


 現れたのは十歳にも満たない少女。

 真っ白な髪の彼女は、この国の姫、リズテレスと名乗る。

 私の話を聞くと、すぐに考えに耽り始めた。


「おそらく紫外線が原因のアレルギー症状ね。あなたの〈闘〉であまり緩和されないとなると、防御系技能も効果は期待できないかしら……」


 何この姫様……。

 ……本当に、子供?

 シガイセン? アレルギー?


 やがて結論が出たらしく、リズテレス姫はこちらに向き直った。


「可能性はとても低いけど、あなたの望みを叶える方法があるわ」

「お! 教えてください! 低くてもいいです!」


 彼女は少し間を取ったのち、人差し指をピンと立てた。


「光属性の習得よ」

評価、ブックマーク、いいね、感想、本当に有難うございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。





書籍化しました。なろう版へはこちらから。
↓をクリックで入れます。




陰キャ令嬢が沼の魔女に。

社交界で沼の魔女と呼ばれていた貴族令嬢、魔法留学して実際に沼の魔女になる。~私が帰国しないと王国が滅ぶそうです~








強化人間になってしまった聖女のお話です。
↓をクリックで入れます。




腕力で世界を救います。

強化聖女~あの聖女の魔力には武神が宿っている~








こちらも連載中の小説です。書籍化します。
↓をクリックで入れます。




事故で戦場に転送されたメイドが終末戦争に臨みます。

MAIDes/メイデス ~メイド、地獄の戦場に転送される。固有のゴミ収集魔法で最弱クラスのまま人類最強に。~




書籍 コミック


3hbl4jtqk1radwerd2o1iv1930e9_1c49_dw_kf_cj5r.jpg

hdn2dc7agmoaltl6jtxqjvgo5bba_f_dw_kf_blov.jpg

1x9l7pylfp8abnr676xnsfwlsw0_4y2_dw_kf_a08x.jpg

9gvqm8mmf2o1a9jkfvge621c81ug_26y_dw_jr_aen2.jpg

m7nn92h5f8ebi052oe6mh034sb_yvi_dw_jr_8o7n.jpg


↓をクリックでコミック試し読みページへ。


go8xdshiij1ma0s9l67s9qfxdyan_e5q_dw_dw_8i5g.jpg



以下、ジャガ剣関連の小説です。

コルルカが主人公です。
↓をクリックで入れます。




コルルカの奮闘を描いた物語。

身長141センチで成長が止まった私、騎士として生きるために防御特化型になってみた。




トレミナのお母さんが主人公です。
↓をクリックで入れます。




トレミナのルーツを描いた物語。

婚約破棄された没落貴族の私が、元婚約者にざまぁみろと言って、王国滅亡の危機を逃れ、ごくありふれた幸せを手に入れるまで。



― 新着の感想 ―
[一言] アルビノだったか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ