51 白の厄災 一撃必殺
【白王覇狼】は体勢を立て直すべく後ろに跳び退いた。
この隙にチェルシャさんは、私に向けて手をかざす。
分離した光が私の全身を覆った。
温かい光……。守られてる感じがする。
「私の加護。トレミナなら、それで〈闘〉でも大丈夫なはず。二人であの狼を倒そう。予定は変更」
「倒さない予定だったんですか?」
「倒せない予定だった。そもそもすでに黒い方が討伐されているのに驚いた。報告で聞いていた戦力では絶対に無理な相手。どうやった?」
「皆で協力して、です。それよりチェルシャさん、敵について知ってるんですか? 森の中に沢山いるんですけど」
「奴らはドラグセン。詳しくは後続に聞いて。とにかく、私は防衛に徹する予定だったけど、こういう状況なら話は変わってくる。白い方も仕留めて、肉をいただく」
やっぱりお隣の大国ドラグセンか。
そんな気はしていたよ。狼達はあっちの出身だし。野良神やめて軍門に下ってたのかな。つまり、守護神獣になったということだよね。
ドラグセンに所属しているのは竜族ばかりって聞いていたけど、狼でも入れるのか。
それで、こんな田舎の村を攻撃してくる目的は何だろう。
やけにコソコソしてるのも気になる。まあ、考えるのは後にしよう。
とりあえずこの巨狼をどうにかしなきゃ。
……チェルシャさんが不敵な笑みを。
「私に秘策がある。そして、試したい技もある」
ふむ、伺いましょう。
――――。
剣を抜いた私は〈プラスソード〉を発動。【白王覇狼】に向かって駆けた。
すぐに〈ステップ〉を使って空中機動に移る。
〈闘〉使用時の残り戦闘可能時間は約八分。マナを気にすることなく技能を繰り出した場合は六分ほどに。
さっきよりは延びたものの、それでも結構短い。
だけど、今回は充分だろう。
相変わらず牙は怖いので、顔周りは避けて体を斬りつけていく。
チェルシャさんは少し離れた所で翼をパタパタさせ、光の刃を飛ばして私を援護。〈エンジェルブレード〉というらしい。
徹底して背後から攻撃する私に、白狼はイライラが溜まってきたようだ。
そろそろあれが来そうだね。
【白王覇狼】は顔を上げる仕草を見せた。
遠吠えと同時に周囲の空気が凍てつき始める。
直後、狼の体からは無数のつららが。
シュザザザザザザザザッッ!
盾を構えて〈プラスシールド〉。天使の加護のおかげで何とか食い止める。
これ、〈水の咆哮〉だろうけど、殺傷力を上げるためにやっぱり氷結させてる。神技って自由自在だな。
心の中でぼやきつつ、氷を砕いて斬撃を浴びせた。
攻撃を続けること約二分。
無尽蔵の体力を持つかに思われた白狼も、疲労の色が濃厚に。
そうでないと困るよ。
私はずっと〈オーバーアタック〉増しで剣を振っているし、チェルシャさんも光の刃を飛ばし続けているんだから。
ついにグラッと【白王覇狼】の体勢が崩れる。
ここだ、急いで退避。
私が狼から離れるのを見届け、チェルシャさんは動いた。
二つの翼を一つに統合。
玉状に集約し、高密度のエネルギー体を作る。
パチッ、パチッ、と周辺でマナが弾ける音。
「一撃必殺! 〈エンジェルキャノン〉!」
ドシュッ!
と発射された砲弾は白狼に命中。
キィン! ズズズズズズズズズ…………ッ!
着弾点から光が広がり、やがて巨狼の体を呑みこんだ。
荘厳な煌くエネルギードームがジャガイモ畑に創造されていた。
収束後、【白王覇狼】は全身から湯気を発しながらも、四本の脚でしっかり大地に立っている。
まさかあれを耐え抜くなんて、と私はその顔を見上げた。
いや、この神獣はもう……。
振り返ると、チェルシャさんは両脚を抱えて座っていた。
見覚えのある光景だ。全てを出し尽くしたらしい。
外せば終わりの一発勝負。
恐ろしい技を編み出しましたね。
「……トレミナのボールと撃ち合ってみたい」
「いいですけど、私は絶対に避けますよ」
評価ポイントが一万を超えました。
評価、ブックマーク、してくださった皆さん、
本当に有難うございます。
これからも頑張ります。










