5 神獣と剣神
高い壁と強固な結界に隠蔽された都市、コーネガルデ。
中でも特に機密性が堅守されている施設がいくつかあり、演習場もその一つだった。普段は騎士が訓練に利用する場所だけど、年に一度、学生にも使用が許される。
それが二年生から学年末に行われるトーナメントだ。
このトーナメントの結果が成績に、ひいては給与に大きく影響する。
実は学生にははっきりと順位が付けられており、戦闘能力が主な評価ポイントになる。学力はほぼ関係ない。
クラス内でもクラス対抗戦でも夏から無敗の私は、堂々の学年一位。
十一歳にして月給は四十七万ノア貰っている。
当然のように、今回の優勝候補にも挙げられていた。
トーナメントを翌日に控え、セファリスが二人で壮行会をしようと言い出した。
街へと繰り出すことに。
大人以上の給料を貰ってる私だけど、あまり物欲がない。なので、お金は主に貯金か、比較的興味のある食べることに使っている。
壮行会は私がよく行くお店でやることになった。
店内に入ってすぐ、セファリスは欲しい物があると出ていった。
姉は物欲の塊だ。
彼女の順位は学年八位。十二歳という年齢を考えると驚くべき位置だ。
私が言うと嫌味に聞こえるかもしれないけど、トップ十内の他の生徒は全員十五歳以上。二年生の段階ではまだそれほどマナの実力差はないから、やっぱり上位者は年齢が上の者が多い。
その中でセファリスは八位にいるんだから、本当にすごいと思う。私が言うと嫌味に聞こえるかもしれないけど。
ともかく、彼女は私とそう変わらない給料を得ている。
が、さっき言った通り物欲の塊なのですぐに散財してしまう。
どうせ今日も、服とか靴とか買いに行ってるんだろうな。
服なんて着れたらいいし、靴は履けたらそれでいいじゃない。いや、靴はサイズが合ってないと困るけど。
……なかなか戻ってこない。先に食べ始めよう。
私がこのお店をよく利用するのは、お気に入りのメニューがあるため。ポテトの入ったオムレツ。ふわふわとろとろの絶品だ。
「いつものやつと……、このニョッキ、それとジャガイモのポタージュで」
大体、毎回同じチョイスになる。
「イモばっかりじゃない。お姉ちゃんなんて意識的にイモを避けてるのに」
言われてみれば。無意識にジャガイモを選んでいた。
顔を上げると、セファリスが帰ってきていた。
彼女はそのままテーブルの向かいに座る。
「それで、お姉ちゃんは何を買いに行ってたの?」
「ふっふっふ、これよこれ」
そう言って取り出したのは、なんと生肉だった。
……ええ、何買ってきてるの。さすがにこれは予想外だ。
「ただの肉じゃないわ。これは、神獣の肉よ!」
そう。この世界には、神と呼ばれる獣達がいる。
普通の獣と異なり、知能が高く、恐ろしく強い。人間との関わりも深く、高位の神獣は世界の国々に所属。
信仰の対象であると同時に、戦争では決戦兵器として活躍していた。
とにかく、神と言うだけあって、人が敵う相手じゃない。
……そういえば、人間でありながら、彼らと対等に渡り合える人達がいるって聞いたことがある。
何だっけ、確か……。
剣神。
人の限界を超え、神に劣らぬ力を備えた者達。
人類最高戦力とか呼ばれている。
まあ、私には全く関係のない話だ。
私の夢は最高のジャガイモを作ることだから。
お読みいただき、有難うございます。