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40 黒の厄災 伝説の野良神

「もうやるしかないの。覚悟を決めて!」


 ミラーテさんは部下達を前にそう鼓舞した。

 ……まるで、自分に言い聞かせているみたいだ。


 短い決起集会が終わると、ミラーテさんは私の元に。

 私、コルルカ先輩、セファリス、と順に視線を送る。少し言葉に詰まったような間があり、それから一息ついて話し始めた。


「トレミナさんはまだ任務に就いていないし、そっちの二人も騎士じゃない。ここは私達が何とかするから、村の人達と一緒にいて」


 共に戦ってほしい! そんな心の叫びが、マナ共鳴で伝わってくるのですが。

 自分で言うのもなんだけど、私達は充分戦力になりうると思う。

 私はここにいる誰よりもマナが多い。

 コルルカ先輩も来月から騎士だし、同学年の中では上位にいる。

 セファリスは最近の成長が著しく、トーナメントで戦った時とは別人だ。いつの間にか、〈装〉も習得してるし。


 ミラーテさんが私達を外した理由は、経験不足とか年齢とか色々考えてだろう。

 それとたぶん、気遣い。

 装備を付けて戻ってから、お父さんとお母さん、それにセファリスの家族が、心配するような眼差しを向けてきていた。私達も戦いにいっちゃうんじゃないかって。

 ……あ、心配している人達が他にも。村の皆から同じものを感じる。

 この状況では、共に戦って、とはとても言えないよね……。


 未練を断つように、ミラーテさんは隊を率いて広場を出ていった。


「私、ちょっと見てくる」


 いつでも対応できる距離にいないと。

 何しろ、村の命運が懸かってる。


「トレミナ! 待ちなさい!」


 お母さんとお父さんがついてきて、


「トレミナちゃん! 危険じゃ!」


 村長さんと村の皆が追いかけてきた。

 結局、全員で村外れまで移動する形になった。


 ミラーテさん達七人はすでに陣形を整えている。

 彼女達が見つめるのは遠くの小高い丘。


 そこに、程なく一頭の黒い狼が現れた。


「あれって【戦狼】……、じゃないわよね。けど一頭だし、そこまで怖い敵?」


 セファリスが目を細めながら疑問を口に。


 いや、これだけ離れていてあのサイズ、【戦狼】よりずっと……。


 なお、【戦狼】とは馬より少し大きな狼で、数頭で活動することが多い野良神だ。私も村に襲来するのを二度目撃しているが、いずれも騎士達が撃退してくれた。


 黒い狼が駆け出す仕草。

 一瞬でジャガイモ畑を突っきり、気付けばもう騎士達の目の前に。彼らは慌てて一斉に戦技や魔法を発動させる。

 跳び退いた狼は、ズズン! と地面に着地した。そう、ズズン! だ。


「お、大きい……。狼族の上位種だわ……」


 呆然と呟いたのはイルミナお母さん。

 他の皆も同じく目を見張っている。

 二階建ての集会所、その屋根より遥かに高い位置に黒狼の顔がある。これで四足歩行なので相当巨大だよ。

 さらに大きいのは体だけじゃない。


「なんてマナ量だ……。トレミナ、分かるか?」


 もちろん分かりますよ、コルルカ先輩。

 困ったことに、私より断然多い。


「おそらく【戦狼】の二次進化形だろうが、もはや野良神の範疇を超えている。守護神獣をやっていてもおかしくないクラスだ」

「……【黒天星狼】じゃ」


 村長さんが思い出したようにぽつりと。


「わしが子供の頃からドラグセンで暴れ回っとる神獣じゃ。漆黒の毛の中に金色の紋様。間違いないと思うのう。あちらでは黒の厄災などと呼ばれとる。伝説の野良神じゃよ。まさか国境を越えてくるとは……」


 ドラグセンはコーネルキアの東に位置する大国だ。

 ノサコット村は国土北東の端だから割と近い。


「伝説だろうが何だろうが負けられないのよ! 私達が敗れれば! あそこにいる村人達が全員食べられる!」


 ミラーテさん、その通りだけどはっきり言いすぎです。

 彼女は黒煌合金の弓に矢をつがえ、ギリリと引き絞った。


「火霊よ! 矢に宿れ!

 火霊よ! 紅蓮の炎を燃え上がらせろ! 矢と一緒に飛んで! 〈灼轟〉!

 火霊よ! 爆ぜて私の敵を打ち砕け! 矢と一緒に飛んで! 〈フレイムバースト〉!」


 ……戦技と魔法二つを強引に合体させた。

 言霊ってこんなこともできるんだ。


「私の最大技よ! 〈スーパーメテオアロー〉!」


 放たれると同時に、矢は大きな炎の塊に。

 尾を引いて飛ぶ様は、まるで本当に空から降る隕石だ。


 ゴオォォォォ――――ッ! ドォン!


 黒狼の鼻先で激しい爆発を起こした。


「ギャン――――!」


 おお、伝説の神獣をギャンと鳴かせた。

 ミラーテさん、頼りない感じだけど隊を率いているだけはある。でもこれ、派手さの割に……。


 【黒天星狼】がブルブルッと首を振ると、炎は瞬く間にかき消えた。

 驚かせてくれた人間を睨み、グルルと喉を鳴らす。


 部隊長、思わず一歩後ずさり。


「ほとんど、効いてない……。めちゃ、怒ってる……」

しばらく戦闘が続きます。


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