39 警報レベルA
コーネルキアには野良神の接近を知らせる緊急警報というものがある。
騎士が付近の村々に発令するんだけど、出されたら必ず避難しなきゃならない。その場ですぐに討伐できなかったってことだから。
カン! カン! カン! カン!
トレンソお父さんが集会所の屋根に上り、設置されている鐘を打ち鳴らした。
村中の家から広場に人が集まり始める。
最初に飛びこんできた騎士に続き、四人の騎士が村に入ってきた。早速、リーダーの女性が部下達に指示を出す。
どういう状況か知りたい。私は彼女の元へ。
「すみません、警報レベルを教えてください」
「あなた! トレミナさんじゃない! どうしてここに!」
たぶん私の顔はコーネガルデの騎士全員に知れ渡っている。トーナメントや叙任式で散々注目を浴びたので。
あれ? けど、このリーダーのお姉さん、見覚えが……?
あ、二年生の部で一回戦の後、私を逸材とか怪物って呼んだ人だ。
「このノサコット村は私の故郷で、今は帰省中です」
「そうだったのね……。私は第127部隊隊長のミラーテよ。えーと、警報レベルだったわね。それなんだけど……、あのね」
彼女は言いにくそうに顔を近付けてきた。それから小声で。
「……レベルA、なのよ」
「何っ……」
絶句したのは一緒にいたコルルカ先輩。
私達はお母さんの濃い味付けの料理にも飽きてきたので、村唯一の食堂に昼ご飯を食べにいく途中だった。
警報レベルは野良神の強さによって分けられている。
レベルE = 現存戦力で倒せるが、少し時間を要する。
レベルD = 現存戦力で倒せるが、相当時間を要する。
レベルC = 現存戦力では倒せないが、相当時間稼ぎができる。
レベルB = 現存戦力では倒せないが、少し時間稼ぎができる。
レベルA = 現存戦力では倒せないし、全く時間稼ぎもできない。
ここで言う現存戦力とは、ミラーテさん達五人のこと。もちろん全員が学園の卒業生で、かなりのマナの使い手。
その彼女達が全然立ち打ちできない神獣が、すぐそこまで迫っているんだ。
「本当に五人掛かりでも歯が立たないんですか?」
「あ、五人じゃないわよ。二人が遠巻きに監視してるから、七人ね。七人掛かりでも絶対無理なの」
余計に悪いです。
ミラーテさん、長い髪を後ろで結って大人っぽい雰囲気だけど、どこか頼りない感じがする。部下の人達の手前、本人にそんなこと言えるわけないけどね。
と思っていたら、コルルカ先輩が。
「ミラーテ隊長はどこか頼りないな。大丈夫なのか」
「だ! 大丈夫よ! 近くにいるナンバーズを呼びに走らせたから! きっと応援に来てくれるわ。……そ、それにターゲットがこの村を襲うとは限らない。……素通りしてくれるかもしれないし」
…………。
……頼りない。
「先輩、装備を取りに戻りましょう」
家まで駆けつつ、ナンバーズについて、先輩に教えてもらった。
騎士団のランキング十位以内をそう呼ぶらしい。レゼイユ団長、ジル先生を筆頭に、実力者揃いで別格なんだって。
他の騎士がチームを組んで活動するのに対し、ナンバーズは基本的に一人。ワンマンアーミーだ。高い機動力で各地を巡る。
セファリスはそれに連れ回されたんだね。
と噂をしていると、避難中の姉とばったり。
「心配ないわよ! トレミナはお姉ちゃんが守ってあげるからね!」
こちらは頼もしい限り。彼女も武具を取りにいった。
三人で装備を整えて広場に戻ると、騎士がさらに二人増えていた。野良神の監視に当たっていた人達だ。
彼らから報告を受けていたミラーテさん。震える声で呟き出す。
「……敵が、来る。素通りしてくれない……。……応援は、間に合わない……。私達で足止め、……するしかない……」
本当に大丈夫ですか。顔面蒼白ですよ。
ミラーテさんはジル先生と同じ学園一期生で、
年齢は少し下の十九歳。
学園が始動して七年なので、コーネガルデ騎士は大体二十歳前後です。
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