表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/212

34 春の女子旅

 しばらくマリアンさんから武具の特性や効果的な使い方、お手入れ方法などの指南を受けた。開発者から直々に教わるとは贅沢だ。


 結構時間が掛かっちゃったな。

 セファリスはどうしただろう。待ち疲れて先に帰っちゃったりとか、はしないか。私を探しに街に出てなきゃいいけど。


 セファリスはまだ店内にいた。

 ショートソードを手に取り、じっと見つめている。

 お姉ちゃんはさっきの魔法具街で、自分へのおみやげと言いつつ今月分のお給料を使い果たした。トーナメント準優勝の賞金百万ノアが全財産。

 買えるのはあれくらいなんだよね。


「どうして急に装備がほしいなんて言い出したの? まさか私が騎士になったから、形だけでも対抗しようと……」

「お姉ちゃんはそんな小さい人間じゃないわよ! ……レゼイユ師匠、また訓練に私を連れていくって……。自分の身は自分で守らなきゃ!」


 セファリスはかなり小さい人間だと思う。だけど、そういう事情なら仕方ない。マリアンさんのおかげで私の装備費用も浮いたし……。


「分かったよ、私が買ってあげる。一式選んで」

「ほんとにいいの! ありがとうトレミナ!」


 うちの姉は金使いが荒い。それは妹のお金でも変わらなかった。

 まず、武器はレゼイユ団長が双剣なのでそれに倣うらしい。

 刃に炎を纏わせる戦技が付与された剣と、雷の波動を飛ばせる戦技が付与された剣を購入。二本で五百万ノアを超えた。

 防具類も足すと一千万ノア近くに。


「ずっと魔剣がほしかったのよ!」

「はぁ……、遠慮なさすぎだよ。大事にしてね」

「もちろん! トレミナが買ってくれた装備だもの! ふふ、うふふ、……ん? あんな子供も魔導具を買うのかしら?」

「え? ああ、あれは子供じゃないよ。先輩だから」


 私達の視線の先にはコルルカ先輩が。

 彼女も騎士の準備で来店したようだけど、一心不乱に何かを見つめている。

 何をそんなに必死で……? あ、私のと同じタイプの盾だ。それの大盾版。コルルカ先輩なら〈プラスシールド〉の二枚重ねが可能になる。

 でも先輩、それ、六百万もしますよ。支度金だけじゃ足りないし、契約金を上乗せしても全装備買えないんじゃないですか?

 で、そうやって葛藤に苛まれているんですね。


「少しお金貸しましょうか? いくらあればいいんです?」

「トレミナ! なぜここに! ……二百万ノアもあれば、いや! ダメだ! 騎士たる者! 借金をするなど許されない!」


 面倒な人だな。

 私はカバンから札束二つを取り出す。


「じゃ、この二百万は先輩にあげます。いつか私に二百万ください」

「そ、それなら……」


 いいんだ。

 よっぽどあの大盾がほしいんですね。


 お会計を済ませたコルルカ先輩は、ほくほくしながら戻ってきた。


「感謝するぞ、トレミナ。ぜひお礼をさせてくれ。私もお前の帰省に同行し、農作業を手伝う」

「先輩は帰省しなくていいんですか?」

「私の実家は王都だ。日頃からよく帰っている」

「ならお願いしようかな。人手は多い方がいいし」





 というわけで、私とセファリス、コルルカ先輩の三人で帰省することに。


 私の家があるノサコット村は、コーネルキアの北東の端にある。

 おみやげの魔法具に私達の装備品と、荷物が多いので馬車を借りることにした。片道二日の旅になる。走れば二時間ほどなんだけど仕方ない。

 のんびり帰ろう。春の日差しで、馬車旅もピクニックみたいで気持ちいい。

 まあ、年上二人は完全にピクニック気分だけど。


「先輩、途中に大きな湖があるんですよ。釣りしませんか?」

「いいな。大物を狙うぞ、セファリス」


 姉とコルルカ先輩はすごく気が合う。どちらも似た気質だからね。


 ちなみに、野良神と遭遇することは滅多にないよ。

 騎士達が常に国内を巡回しているから。

 例外もあることにはあるんだけど……。

 ……何か、一直線にこっちへ向かってくる。

 あれは……、【蛮駕武猪】だ。


 通常より一回り大きい猪が、私達の馬車めがけて突進してくる。


 噂をすれば例外の一つが。

 あの猪はずっと走り続けていて、なかなか捕捉が難しい。そして、旅人を発見すると馬車をひっくり返したりする。

 獰猛だけど野良神としてはかなり弱いので、それほど怖がる必要はないよ。

 むしろ喜ぶ人の方が多いかも。


「バンガム猪だ! 釣りは中止だセファリス! あれを食うぞ!」

「ラッキーですね! ごちそうが走ってくるなんて!」


 沸きたつコルルカ先輩とセファリス。


 そう、【蛮駕武猪】はとても美味しい。

 春の女子旅、肉祭にまっしぐらだ。

評価、ブックマーク、いいね、感想、本当に有難うございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。





書籍化しました。なろう版へはこちらから。
↓をクリックで入れます。




陰キャ令嬢が沼の魔女に。

社交界で沼の魔女と呼ばれていた貴族令嬢、魔法留学して実際に沼の魔女になる。~私が帰国しないと王国が滅ぶそうです~








強化人間になってしまった聖女のお話です。
↓をクリックで入れます。




腕力で世界を救います。

強化聖女~あの聖女の魔力には武神が宿っている~








こちらも連載中の小説です。書籍化します。
↓をクリックで入れます。




事故で戦場に転送されたメイドが終末戦争に臨みます。

MAIDes/メイデス ~メイド、地獄の戦場に転送される。固有のゴミ収集魔法で最弱クラスのまま人類最強に。~




書籍 コミック


3hbl4jtqk1radwerd2o1iv1930e9_1c49_dw_kf_cj5r.jpg

hdn2dc7agmoaltl6jtxqjvgo5bba_f_dw_kf_blov.jpg

1x9l7pylfp8abnr676xnsfwlsw0_4y2_dw_kf_a08x.jpg

9gvqm8mmf2o1a9jkfvge621c81ug_26y_dw_jr_aen2.jpg

m7nn92h5f8ebi052oe6mh034sb_yvi_dw_jr_8o7n.jpg


↓をクリックでコミック試し読みページへ。


go8xdshiij1ma0s9l67s9qfxdyan_e5q_dw_dw_8i5g.jpg



以下、ジャガ剣関連の小説です。

コルルカが主人公です。
↓をクリックで入れます。




コルルカの奮闘を描いた物語。

身長141センチで成長が止まった私、騎士として生きるために防御特化型になってみた。




トレミナのお母さんが主人公です。
↓をクリックで入れます。




トレミナのルーツを描いた物語。

婚約破棄された没落貴族の私が、元婚約者にざまぁみろと言って、王国滅亡の危機を逃れ、ごくありふれた幸せを手に入れるまで。



― 新着の感想 ―
[一言] コルルカ先輩買収される!(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ