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33 武装少女

 おみやげの魔法具も一通り選んだ。

 これを待っていたようにセファリスが。


「お姉ちゃん、魔導具の方も見たいんだけど、いい?」


 魔法具があらかじめ魔法の付与された、誰でも使える道具なのに対し、魔導具は使用者がマナを込めないと効果を発動しない。

 一般人には扱えず、主に戦闘兵器として作られるのが魔導具だ。


 コーネガルデの騎士達が装備する、黒い剣や鎧も魔導具で、マナを流すと切れ味や強度が増す。

 皆さん普通に持ってるけど、兵器と言うだけあってかなり高価なんだよね。

 騎士の支度金五百万ノアはほぼこれのためだったりする。自分に合った装備をあつらえなさい、ってこと。

 だから全員お揃いの格好ってわけじゃなく、結構個性が出るよ。


 そして、騎士の人達が利用するのが、魔導研究所に隣接する専門の販売店。

 私もここで装備を整えておくよう、ジル先生から言われている。

 休みが明ける直前に来るつもりだったけど、ついでだし見ておこうかな。


 入店時に身分証の提示を求められた。厳重だ。


「それでお姉ちゃんは何を買いたいの?」

「できれば一式ほしいんだけど……、剣一本しか買えないわ」


 店内にずらりと並んだ武具。

 いずれも破格で、ショートソードでさえ百万ノアもする。


「どうしてこんなに高いんだろ」

「通常、魔導具に用いられる素材は黒響石というマナ伝導のいい鉱石さ。コーネガルデではこれに煌銀という稀少金属を混ぜ合わせ、さらに伝導率がよくて硬い黒煌合金を開発したんだよ。コストがかさむのは仕方ないさね」


 私の呟きに答えてくれたのは、後ろで作業をしていた年配の店員さんだった。

 白髪のおばあさんで、七十歳は超えているように見える。

 彼女は私の背負った剣をちらりと。

 叙任式でリズテレス姫にもらったものだ。


「なるほど、あんたがトレミナか。納得のマナ量だよ。その剣はここに置いてあるどれよりも質がいい。あんたのために作られた特注品だからね。大事にしな」

「はい。あの、あなたは……?」

「名乗るのが遅くなったね。私はマリアン、魔導研究所の所長さ」


 店員さんじゃなくて偉いさんだった。

 確かにどこか威厳がある。

 腰もまっすぐで、この年代なだけあってマナの量は相当なものだ。

 鍛錬を続けていればこうなれるのか。私の目指すべき姿がここに。

 憧れの眼差しを向けていると、マリアンさんがスッと顔を寄せてきた。


「この髪は生まれつき白かったんだよ。私も転生者だ」


 え? どういうことだろう?

 姫様の話にそれらしき人は……、待てよ、転生したのは四人と一匹って姫様は言った。理津さん、享護さん、由良さんの三人と、勇太郎さんの一匹。

 あと一人は? あの場面で他に亡くなった人なんて……、……いる。

 爆発した店舗のドアを開けた、作業着姿の女性だ。


「じゃあ、マリアンさんは最初の転生者だったんですね?」

「そうさ。あんたはおっとりした子だと聞いていたけど、頭の回転は速いね。いいことだよ。んじゃ、私からも贈り物だ。今日は装備を買いに来たんだろう?」

「いえ、私は見るだけのつもりで」

「もう揃えていきな。鎧なんかは体に馴染むまで時間が掛かるから、早いに越したことはない」

「はい、そうします……」


 威厳のある年配の方にはどうも逆らいづらい。

 マリアンさんに言われるまま、後ろについて店内を歩く。


「まず盾はこれだ。中サイズで今のあんたでも使いやすく、付与もついている。〈プラスシールド〉は知ってるかい?」

「はい、一度見たことがあります」

「なら話が早い。この盾は念じるだけで同じものが出せる。厳密には違うがまあ同じだ。とりあえずやってみな」


 盾を掲げてイメージすると、前方に半透明の盾が出現。

 こんな戦技のついた防具もあるとは。

 値段を見ると、なんと四百万ノア。

 おお、やっぱりいい物は高い。


「ちなみにあんたの剣にも似た戦技が付与されているよ。〈プラスソード〉だ。念じれば剣の先にマナの刃が伸びる。神獣はでかいから役に立つはずさ。気付いてなかったろ?」


 全く知りませんでした。

 そんなの教えてもらわなきゃ分からないよ。聞いておいてよかった……。


 この後もマリアンさんは、兜、鎧、小手やすね当てと、私の防具一式を選んでくれた。どれも戦技か魔法の付与つき。

 私自身は使える技能が〈トレミナボール〉一つだけなのに。

 完全に装備に負けている。

 それより、良い品ばかりなだけあって、総額一千万を軽く超えたのですが。


「気にしなくていいよ。贈り物って言ったろ」

「どうしてここまでしてくれるんです?」

「簡単な話だ。あんたを強くすることが、この国を、そして、あの子達を守ることにつながるからさ」

「あの子達って、転生者の皆さんですか?」

「そう。前世の爆発事故はどうしようもなかったって皆言ってくれているし、ユウタロウなんて神獣になれてむしろ感謝してると言ってくれているけどね。私はそうは思ってないんだよ。……私の不注意が招いたことなんだ」


 マリアンさん、ずっと自分にそう言い聞かせて生きてきたのかな。

 私なんかに分かるはずもないけど、何となくそんな風に感じた。


「余計なことを話したね。ま、そこまでの装備になったのはあんただからだよ。マナの多いトレミナならしっかり使いこなせるだろ。頑張りな」


 言われてみれば、付与されている技能も動力源は私のマナだ。

 これでしっかり国を守ってほしい。

 そう言われた気がした。

 ありがたくいただいておきます、マリアンさん。



 なお、程なく私は本当に、心底彼女に感謝することになる。


 これらの武具がなければ、私は確実に死んでいただろうし、私の村もなくなっていただろうから。

戦闘準備、整いました。

マリアン所長とリズテレス姫の、前世の死の時間差は約一分。約六十歳差です。


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― 新着の感想 ―
[一言] マリアンさんは…大変だったろうなぁ…
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