31 転生者達との出会い
私はごく普通のジャガイモ農家の娘。
いきなり異世界とか転生とか言われても困ってしまうよ……。
どうしよう。分からないことばかりだ。
スマホ? アプリ?
質問すれば姫様は答えてくれるかな。
それ以前に、……何を質問すればいいかが分からない。
夜更けの公園、ベンチで隣に座るリズテレス姫に視線を向けた。
「異世界って、本当にあるんですか?」
悩んだ挙句、すごく基本的なことを聞いてしまった。
「ええ。この世界と私が前にいた世界は、コインの表と裏のような関係だと思うわ。私達のずっと以前にも向こうから来た人がいたみたいだから」
「そうなんですか?」
「間違いないでしょうね。前世の私が住んでいた国の料理が世界中に広まっているもの。コロッケやハンバーガー、ラーメンだってそうよ。あと、醤油やダシを取る文化なんかもそうね」
なんと、醤油やダシまで。
どちらが欠けても、お母さんが得意の肉じゃがを作れなくなる。異世界人に感謝しないと。お母さんの得意料理がポテトサラダだけに……。
「調味料といえばマヨネーズもよ。あれ、好きな人多いでしょ」
……異世界人はジャガイモ農家の救世主。
過去の偉人に感謝を捧げていると、姫様が「そろそろ行くわ」と立ち上がった。
しまった、食べ物のことしか聞いてない。
もっと色々と気になることがあったのに。
「ふふ、また話してあげるわ。もう迎えが来てしまったから」
とリズテレス姫が見つめる先から人が。
十五歳くらいの少年と、私より少し小さな女の子だ。
二人共きっちりした服装をしている。それより目を引くのは、いずれも姫様と同じ真っ白な髪であること。
女の子の方がリズテレス姫に詰め寄った。
「リズ、早く帰らないと王妃様にどやされるわよ。あんた、自分がまだ子供だってこと分かってる?」
「はいはい、分かってるわよ。あ、トレミナさん、紹介するわね。私の妹ユラーナと、我が国の守護神獣ユウタロウよ」
え、その名前、もしかして……。
「そう、さっき話した由良と勇太郎。私達転生者は髪や瞳の色素が抜けるみたいなの。一度死んでいる影響かしらね」
リズテレス姫は自分の髪を指先でさらっと薙いだ。
そういえば、死ぬような体験をした人は毛が白くなるって聞いた気が。実際に死んじゃってるし、転生するのも楽じゃないんだな。
いえ、それはともかく、そちらの神獣の方はどう見ても人間なのですが。
私の視線に気付いたユウタロウさんがニコリと微笑んだ。
「この体はアバター、……じゃ通じないか。人形のようなものなんだ。僕の魂だけ入れて動かしているんだよ。力は元の半分くらいになっちゃうんだけどね」
「よくできた人形ですね。人間にしか見えません」
「はは、古くから神獣に伝わる術で作ってあるから。食事もできるよ」
ユウタロウさん、柔らかい雰囲気の人、いや、神獣だ。
こんなお兄ちゃんがいたらいいだろうな。
私には振り切れた感じのお姉ちゃんしかいない。
「ほんとのユウタロウはもっふもふのドでかいリスよ」
そう話しながら歩くユラーナ姫。私の肩にポンと手を置いた。
「トレミナさん、大変な奴に目をつけられたわね。頑張るのよ!」
「……はい、どうも」
年下の子と喋ってる感じがしない。やっぱりこの人も転生者なんだ。
それで彼女の言う「大変な奴」って……。
リズテレス姫は微笑みと共に、私と二人のやり取りを眺めていた。
そうだ、どうしても確認しておかなきゃならないことがあった。
「姫様、世界大戦なんて、本当に起こるんですか?」
彼女はすぐには答えず、去り際に振り返った。
「それはあなた自身の目と耳で確かめて。騎士トレミナさん」
ユラーナが王妃に様を付けたのは彼女が養子だからです。
コーネルキア内の孤児院にいたところを、
リズテレスに回収されました。
現国王は享護の息子(養子)でリズテレスの実父。
引退した享護も生きていますが、今は国内にはいません。
国力増強はリズテレスに任せ、
彼は彼で世界を奔走しています。
という設定ですが、
本編での説明は少し後になるので、まずここで。
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