212 軍事侵攻
私とセファリス、ミカゲとリカゲの姉妹は、竜体に戻ったキルテナの背に乗って大空を飛んでいた。
キルテナの両サイドには十頭を超える竜達が編隊を保って飛行中。彼らはキルテナ軍団のメンバー達だ。
私達が現在向かっているのはブレンギラ領の町。つまり、軍事侵攻の真っ最中だった。
ちなみに、この作戦にはモアも同行する予定だったんだけど、あの子はトレミナ領の本拠地、ノサコット村に残っている。お母さんやお父さん、村長さんをはじめとした村の皆がずいぶんとモアを気に入っちゃったんだよね。まだ普通の人間だった頃の私を思い出すんだとか。じゃあ、今の私はいったい何だと思っているんだろう……。
「もうキルテナ山脈を越えたわよ」
竜の端から下を覗いていたセファリスが教えてくれていた。相変わらずこの高所を平気な顔で駆け回るお姉ちゃんにはひやひやさせられる。
「おっこちたりしないでね、たぶんキルテナは助けてくれないよ」
「その時は自力で何とかするって」
私達の会話を聞いていたキルテナが、私の精神に語りかけてきた。
(そう、調子に乗りすぎた姉が空にダイブしても私は気にしない。それよりトレミナ、ここからはマチルダが案内してくれると言っているぞ)
キルテナの言葉を受けたように、ピンク色の鱗をした竜が隣に並んでくる。
マチルダさんはブレンギラ配下の二十将、ザンデュガの側近をしていた女性らしい。コルルカ先輩達の襲撃を受けて出奔し、現在はキルテナの側近をやっているみたいだ。
(いやいや、側近にした覚えはないから)
キルテナはこう言ったけど、彼女はこのブレンギラ領に精通しているので頼りになる。
ピンク色の竜に先導される形で、ドラゴン部隊は領内西部の地方都市に到着した。町から少し離れた丘の上に全員で着陸。その場所からは町の全体を一望できた。
キルテナの頭に上ったセファリスがそこで腕組みをしながら。
「町を焼け野原に変えるには絶好のポジションね」
「やらないって、計画については事前に話したでしょ」
段取りは全員が把握していた。キルテナの合図を受けて、今度はマチルダさん一頭だけが地上から離れる。町の上空まで飛んでいくと竜の巨体が不意に消失。人型になって町に入ったのが分かった。
マチルダさんには二人の人物の確保をお願いしてあった。
しばらく待っていると、町の上にピンク色の竜が再び現れる。こちらに戻ってきた彼女は両の前脚に一人ずつ人間を掴んでいた。
竜の爪から解放された二人は気の毒なくらい憔悴しきっている。どちらも年配の男性だけど、一層老けこんで見えた。まあ無理もないよね……。
キルテナの体から下りた私は二人の所へ。
「手荒な真似をしてすみません。私はコーネルキア、トレミナ領の領主、トレミナです。今後、あの町は私の領地に組みこまれることになります」
突然の私の宣言に、男性達はぎょっとした表情になった。
彼らはあの地方都市の代表と言っていい二人だ。一人は議会の議長で、表社会の代表。もう一人は町のやくざ者達を取りしきる、裏社会の代表。どちらもマチルダさんは顔見知りだということで、彼女に連れてきてもらった。
そのマチルダさんは人型になって私の隣に並んできていた。
「こちらのトレミナ様は一見おっとりしたどんぐりのような少女だけど、あまりなめない方がいいわよ。なんせあのコーネルキアで実力者ナンバーズの一角を担い、国家顧問である導師の地位にあり、かつ、あの国でただ一人領地を持つことを許されたお方なんだから! そして、このトレミナ様は私の現在の主のパートナーなのよ!」
……この人、寝返ったばかりなのにすごく私の威を借りてくる。あと、いつものことだけどどんぐりは余計です。
久々の投稿なのにちょっと短めです。すみません。
しかし、ここから少しあります。
というわけで、本日はトレミナに会いたいというゲスト達が来ています。
どうぞ。
トレミナ
「私に会いたい人達って?」
メアリア
「どうも……、レイサリオン王国の陰キャな女王、メアリアです……」
シエナ
「どうも、メアリア様の腐女子同志、シエナです」
トレミナ
「お二人がゲストですか? どうしてまた?」
メアリア
「どうしても今日、お知らせしたいことがありまして……」
シエナ
「その前に、私達の悔しい思いをお知らせしたいと思います」
トレミナ
「……ええー、悔しい思いって何ですか」
メアリア
「私達は、登場する前に商業ジャガイモが終わってしまい、コミックスはおろか書籍にもなれなかった可哀想な魂なのです……。うらめしや……」
トレミナ
「ま、まあ、そうですね。なんかごめんなさい」
シエナ
「本当に悔しかったですね」
メアリア
「そんな私達の怨念が分身体を生み出し、新たな物語を編み上げました……」
トレミナ
「……え?」
シエナ
「こちらがその物語になります。どーん」
『社交界で沼の魔女と呼ばれていた貴族令嬢、魔法留学して実際に沼の魔女になる。~私が帰国しないと王国が滅ぶそうです~』
メアリア
「私達の分身体が紡ぎし物語、書籍化しました……。陰キャ腐女子が織りなす王国再建記です……」
トレミナ
「つまり、ジャガイモに入り損ねたから自力で書籍になったと?」
シエナ
「はい、レーベル上、こういうカバーを被っていますが、中身は実はジャガイモと大差なかったりしますね。ただ、恋愛要素もきちんと入ってます。表紙詐欺ではないです」
メアリア
「ジャガイモ読者の方々なら、違和感なくお読みいただけると思います……」
シエナ
「本日、シーモアから先行配信されますが、まずはなろう版をお読みいただければ幸いです。この下にリンクを設置しました」
メアリア
「なお、著作権上は一切問題ありません……。何しろ、私達は商業ジャガイモに登場すらしていませんし、しかも、あくまでも私達によく似た別のキャラの物語ですから……」
トレミナ
「そ、そうですか、宣伝お疲れさまでした……」
というわけで、下にリンクがございます。
よろしくお願いします。










