210 [リズテレス]気の合う仲間達
私の闇魔法〈黒沼〉はメインである闇属性の他に特殊属性も錬りこんであるわ。つまり、相手のマナを吸収すると同時にその動きを阻害する魔法だということ。完全なる妨害魔法よ。
しかし、相手は五竜のブレンギラであり、やはり動きを完全に封じるとまではいかなかった。
真っ黒な闇にまとわりつかれながらも、巨竜は徐々にその体を動かしはじめる。
そんな敵の様子を眺めつつ、私は頭を横に振った。
「予想はしていたけどやっぱり厳しいわね。皆、攻撃もしてくるから気をつけて」
私の言葉を受けて、親衛隊隊長のメルーダさんがさっと手を挙げた。
「総員、一時退避です!」
指揮官の決断で騎士達は一斉に後方へと下がる。
ただ一人、ふてぶてしい幼女のミユヅキさんだけが残ったわ。
「ほれ見るのじゃ、かっこつけとらんでさっさと手伝ってくださいと言わんか」
まったくもってふてぶてしいけど、なぜか私とは気が合う。普通の人間より数百年生きている化け狐の方が気が合うってどうかとも思うけど……。
ちなみに、彼女以外にも妙に話しやすい人達、いいえ、神達がいるのよね。
その二人が親衛隊と入れ替わりで私達の所にやって来ていた。
「ミユヅキと同意見なのは嫌だけど、皆でさっさと倒しちゃえばいいんじゃない? 別にリズテレスは剣神になりたいとかないんでしょ?」
と邪悪な女神のような装いのアイラ。
「皆でかかるなどもってのほかだ。この禍々しい闇魔法を解除して私単独で戦わせてほしいくらいだぞ」
と武神のような立ち振る舞いのルシェリスさん。
二人はテーブルに並ぶ料理の数々に目を移していた。一応ここは歓迎の宴席が準備されていた場所で、いくらかは吹き飛んじゃったけど、無事な料理もある。
それらを凝視しながらルシェリスさんがぽつりと。
「……食べてもいいだろうか」
「別にいいんじゃない、私も適当につまみながらお酒を飲むわ」
アイラも酒瓶とグラスを手に料理へと向かった。
全く緊張感がないけど、二人はこの戦いの援軍よ。ブレンギラは絶対にこの場で仕留めたいから。
私達のその意思は相手にも伝わったらしい。巨竜はちらりと視線を泳がせた。
……逃げ道を探りはじめたわね。全員で向かってこられたら勝ち目がないことは彼もよく分かっている。逃がすわけにもいかないし、やっぱりここは……。
「わらわは神獣に戻るぞ。よいな?」
確認しつつ早くもミユヅキさんの体は輝き出していた。
さすが、私と気が合うだけあるわ。すぐに今なすべきことを察してくれた。それはブレンギラの拘束を強めること。最も有効なのはミユヅキさんの毒マナだわ。
親衛隊の専属守護神獣にミユヅキさんになってもらったのは、もちろん私との相性を考えてだった。出会ってまだそれほど経っていなかったけど私には確信があった。
だってミユヅキさん、クズなところがナンバー3の彼女とよく似ているんだもの。
そうだわ、あの子からもせっつかれているのよね。早々にドラグセンとの戦争を終わらせて戦力をまとめ上げないと、いよいよ本格的にまずいって。
ブレンギラ領を押さえれば、あとは懐柔策が打てる。だから、この神竜は必ずここで倒さなきゃならない。
考え事をしている間にミユヅキさんは本体である【災禍神狐】に戻っていた。長く伸びた九本の尻尾をなびかせ、即座に毒マナでブレンギラの全身を覆う。
五竜といえども、二重の妨害によってもう身動きはとれないはずよ。
私は高く跳んで大狐の頭に乗った。この方が息を合わせやすい。
これを見ていたアイラとルシェリスさんもジャンプして大狐の背に。ちなみに、手にはお酒や料理を持ったままだわ。
振り返ったミユヅキさんが激しく吠える。トレミナさんじゃないけど、「わらわの背中で飲食するな!」と言っているのは分かった。
お酒を飲みながらアイラがほがらかに笑う。
「けちけちするんじゃないわよ。特等席で見たいの。あ、ごめん、ウイスキーこぼしちゃったわ。ちょっとスモーキーな香りがついただけだし、いいわよね」
一方で、ルシェリスさんも全く悪びれる様子なく、ローストビーフを食べている。
「やっぱりこの竜は私の相手ではないな。性根が腐っている。あ、すまない、ローストビーフのたれをこぼしてしまった。少しテリがよくなっただけだし、構わないな」
戦場と化した協議の場に、九尾の狐の遠吠えが響いた。
『トレミナのお正月』
トレミナ
「新年あけましておめでとうございます。まず、昨年末に『大晦日だよトレえもん』を出せなかったこと、お詫び申し上げます。作者はいっぱいいっぱいでした」
セファリス
「本日はその埋め合わせに『トレミナのお正月』をお送りします。出演者は、トレミナ、私、キルテナ、リズテレス姫、の四名です。会話文形式での進行になりますので、ご了承ください」
キルテナ
「よし、前説は済んだな。しかし、正月と言いつつ、なぜ私達の目の前には巨大なジャガバターが……」
トレミナ
「このキャベツサイズのイモ、絶賛生産中でいっぱいあるんだよ。今年のお正月は皆でこれを食べよう」
リズテレス
「ブレンギラ領の民達はひたすらこの巨大ジャガイモを食べることになるのかしらね……」
キルテナ
「これと同じ風景が領地中に広がるわけか……。商業が終わったからって、トレミナやりたい放題やりすぎだろ」
セファリス
「やりたい放題なのは作者ね。シークレットだったナンバー3にクズな雛鳥をぶちこんできたし」
トレミナ
「楽しみにしてくれている人達もいるからね。登場は物語の終盤になると思うけど。ともかく、色々と解き放たれたジャガ剣をよろしくお願いします」
リズテレス
「トレミナさん、締める前に作者から告知のお願いが来ていたでしょ」
トレミナ
「そうでした。では、告知はモアの方から」
モア
「お、お邪魔します……。『おそらく不死身の令嬢エミリア』、この下にリンクがありますので、よ、よろしくお願いします……!」
トレミナ
「転生した定食屋の娘が、婚約破棄されたショックから前世の記憶を取り戻し、転生特典の時間を巻き戻す力で死線を越えていく話だね。もふもふの兎と契約して、死の間際の体感時間が百倍になったことでほぼ不死身になってしまうという」
モア
「は、はい、もふもふの兎が登場するんです……! 私、今回は【古玖理兎】を代表してここに来ているので、どうかお願いします……! もふもふの兎が活躍する5話までせめてどうか……!」
トレミナ
「はい、告知お疲れ様。では皆さんの一年が幸せなものでありますように祈りを込めて」
トレミナ&セファリス&キルテナ&リズテレス
「「「「本年もよろしくお願いいたします」」」」










