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204 [コルルカ]部隊の切り札

 ニルレイアが他の者より飛び抜けているのは、何と言ってもその集中力の高さだ。錬気法で述べるなら〈集〉のレベルが突出している。一点に込められるマナの量、質の高まりが凄まじい。

 魔導銃という武器を得て、彼女の才能は日の目を見ることになった。

 ニルレイアの放つ魔導弾がコルルカ部隊最大の攻撃だ。


 先ほどの一撃で、ザンデュガもそれが分かったらしい。体の前面にマナを集めて防御の姿勢をとっている。

 やはり防御特化の神獣だけに、あまり動き回らずに耐えて反撃するという戦闘スタイルのようだな。また、私達を相手に考えた場合、常に防御し続けるその選択が正解だろう。


 クランツとエレオラが再び連射戦技を放ち、ミラーテさんが派手な火技能を撃つ。

 その合間を縫ってニルレイアが次の魔導弾を発射した。

 今度は風属性の銃弾に自分の火霊を上乗せする組み合わせ。着弾と同時に風と炎が激しく舞う。


 しかし、ザンデュガは今回は倒れることなく踏み留まった。

 いつ重い一撃が来てもいいように備えていたからだ。む、しかも即座に報復する余裕まであるか。

 大きく開かれた口から発射されたのは、初撃同様〈雷の息〉だった。

 私の防壁が前回よりも軽度の損傷で食い止める。


 ……それでも修復するのにかなりのマナを持っていかれるな。

 予想していた通り、やはりこの戦いは削り合いの我慢くらべになる。となると鍵になるのは……。

 干し稀少肉をがしがしと齧っているニルレイアに視線をやった。


「同じ威力であと何発撃てる?」

「これ食べてもたぶん五発だね」

「稀少肉は、体の傷は早く癒してくれるけど、マナの回復はそれほど急速じゃないからね」


 クランツが親切にも解説してくれていた。彼は一つため息をついてから。


「でもこの状況でよく食べられるよ……」

「貧乏育ちゆえにお肉はどんな時でも食べる。稀少肉ならなおさら」

「その干し肉だけでたぶん数百万はするからね……。……それでコルルカ、どうする? これはまずいだろ」


 ……非常に、まずい。

 この向かい合った状態では、あと五発であの神を倒すのは不可能に近い。我慢くらべだと私達が負ける……。

 手がないわけではないが……。


 悩む私達を見かねたように、メイティラ様が前に進み出た。


「いいわよコルルカ、やってあげるわ」

「だが……、かなり危険が伴うぞ?」

「このままじゃどのみちやられるし、仕方ないでしょ」


 それから彼女はニルレイアの方に振り向く。


「あんたはどうなのよ。私に命を預けられるの?」

「私は元より、コルルカ先輩がこの無茶な作戦を言い出した時から命はないものと思っているよ」


 そうか、それほどの覚悟で……。

 ……むむ? 二十将討伐はそんなに無茶だったか?

 私が目をやると、クランツとミラーテさんが揃って頷いた。


「「思いついても普通は絶対やらない」」


 そ、そうか……、今の状況はなるべくしてなっているわけだな……。リズテレス姫も色々と支援してくれるはずだ……。

 私が行いを反省している間に、ニルレイアは言葉を続けていた。


「それにメイティラ様を信じないはずがない。あなたはコーネルキアの守護神獣で、私達の専属神獣なんだから」

「この、私が……? …………」


 メイティラ様は少し考えこむようにうつむく。

 ニルレイアは当たり前のことしか言ってないと思うが、どうしたのだろう?

 しかし、やはり二人(頭)だけで行動するのは危険が過ぎる。


「ここはやはり全員で一緒に行った方がいいのでは?」


 私が提案すると、すぐにメイティラ様は顔を上げた。


「それだときっと勝てない。たぶんチャンスは一度きりよ。コルルカ、あんたの奥の手が鍵になると思うわ」


 私の奥の手といえばあれしかないが。うーむ、どうすれば?

 すると、ニルレイアが一発の銃弾を見せてきた。


「最後はこの魔導弾を使うよ。それまで私のもう一つの属性は隠す」

「……なるほど。分かった、しっかりタイミングを合わせる!」


 ニルレイアが銃弾に付与できる自身の専攻属性は二種類ある。

 一つは先ほどから使っている火属性だ。(一撃目は、火の魔導弾に火霊を、その次は、風の魔導弾に火霊を付与していた)

 彼女のもう一つの属性と見せられた銃弾で、私は自分のやるべきことを理解した。


 エレオラが気合を入れるように掌を拳で打ちつける。


「じゃあアタシらもここからは出し惜しみなしだ! 全力で援護しようクランツ先輩!」

「ああ、マナを使い果たしてでも二人(頭)は守らないと」

「私もいるわよ! 私の技は結構目くらましになるんだから!」


 ふむ、ミラーテさんもしっかり自分の役割が分かっているらしい。

 私達が団結している間に、メイティラ様は再び神獣の姿に戻っていた。その背にライフルを持ったニルレイアが飛び乗ると、すぐに〈認識擬装〉を発動。

 と同時に、ザンデュガが訝しむ表情になったのが伝わってきた。

 警戒していたニルレイア含め、二つの気配が突然消えたのだから当然だろう。


 メイティラ様があの神クラスの鎧竜を欺けるのはほんのわずかな一時だけ。

 だが、その短い時間で充分なんだ。


 ようやく事態に気付いたザンデュガが途端に慌て始める。

 もう遅い、すでにお前の背後だ。


 ドド――――――――ン!


 ザンデュガの背中で不意に大きな爆発が起こった。

 備えていたのとは反対方向からの攻撃に、巨竜は再び大地に倒れこむ。


 岩山のようなこの竜のせいで見えないが、マナで感知はできている。

 気配を絶ったままあちらに回りこんだメイティラ様の背から、ニルレイアが魔導銃を放ったんだ。

 これが私達の切り札となる戦術。

 ステルス機動狙撃だ。

 すでに戦いに入っているし遠くから狙撃したわけでもないからそれほど卑怯ではない! と思う!

今回で決着まで行けるかと思ったら無理でした。

無謀な戦いだけに時間が掛かります。

次話、決着。そして、コルルカ編終結。

まで行ける。と思います。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] メイティラがもし団長の専属守護神獣だったら破壊神の一撃がステルスの一撃になるのかな?
[一言] ティア○ン思い出した!これは効果抜群でよく効くはずですね 戦いは欺ければ勝ちなのだからヨシ!
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