203 [コルルカ]防御特化の人 対 防御特化の神
側近達が飛び去った空を見つめていたザンデュガは、一息吐いてから視線を私達に戻した。
焦りは全く感じられないな。
最初から配下達はあてにしていないということか。実際に、あの二頭とザンデュガの間には大きな力の差がある。単独で戦況を変えうるのが二十将だ。来るっ!
巨竜が尻尾を振ると周囲に水が舞い、すぐに大波となってこちらに押し寄せてきた。〈水の尻尾〉だ。
この攻撃に対して、私は先ほど同様に二つの魔法からなる炎の壁を作り上げる。
ザンデュガの口元に笑みが浮かんだ気がした。
……やはり、奴の技を止められるのはこの防壁しかないと読まれているらしい。だから火に相性のいい水の神技を出してきた。
だが、そう来るのはこちらも読んでいる!
私は背負っていたメイスを取ると、天に向けて掲げた。
この武器には、以前は地属性の魔法が入っていた。(ノサコット村のイモ畑を耕したあのメイスだ)しかし、現在は別の属性が付与されている。
突き出したメイスの先端から、前方の〈フレイムウォール〉へ雷が放たれた。
電流は炎の壁の表面を広く覆っていく。
見るがいい、これが私の全力防壁。
風霊強化〈フレイムウォール〉、の雷霊コーティングだ! この防御魔法に弱点はない!
私が胸を張っている間に、防壁は大波をはねのけていた。
「あんたもなかなか大したもんじゃない。だてに部隊長やってないわね」
再び人型になったメイティラ様が、ミラーテさんと共に戻ってきていた。彼女はそびえる炎の壁を眺めながら言葉を続ける。
「さっきの一列並びで配下の神獣達を退かせた作戦も、この魔法も、よく考えられている。本当に大したもんだわ」
「まあ全部、リズテレス姫の入れ知恵だけどね」
クランツが苦笑いでネタばらしをしていた。
そう、あの作戦も、メイスの魔法を入れ替えたのも、リズテレス姫の助言によるものだ。
自慢じゃないが私は頭脳的な戦い方が苦手だし、この部隊でそれができるのはせいぜいクランツくらいだろう。
我が隊唯一の頭脳とも言える彼は、まだ私に何か物申したそうだった。
「クランツ、何だ?」
「マナは大丈夫か、コルルカ。これだけ同時に維持するのは相当きついだろ?」
「……全然、余裕だ」
私は現在、ゲイン三種に〈トレミナゲイン〉、防壁用の属性魔法を三つ同時に発動している。
正直なところ、ものすごくきつい。
底上げして量が増えたはずのマナがぐんぐん持っていかれる……! だがリーダーとして弱音など吐けん!
「……いやいや、そこはちゃんと言ってくれないと。全員の命に係わることだから……。皆、コルルカはあまりもちそうにないから、急いで攻撃に移ろう」
クランツが槍を構え、そこに風霊を宿らせる。
連続で槍を突くと、ザンデュガに向かって無数の風の弾丸が飛んでいった。
あれはクランツが得意とする戦技、〈風刃乱舞〉だ。(ちなみに、私の防壁は味方の攻撃は通す設定にしてある)
確かトレミナも学年末トーナメントでめった打ちにされていたな。あの頃より威力は格段に上がっている、はずなのだが……。
ザンデュガは全く防御の姿勢を見せなかった。鋼のようなその鱗が風霊弾をことごとく跳ね返す。
これを見ていたエレオラが拳に雷霊を纏わせた。
「なんて硬さだ! だったらアタシの技を受けてみな! 〈爆裂雷撃連射パンチ〉!」
あれはエレオラが得意とする戦技、……技名は自分で叫んでいたな。
連続で放たれた雷の弾丸も、やはりザンデュガはものともしない。
むぅ……、ノーダメージというわけでもないのだろうが、この程度は避けるまでもないと言わんばかりだ。さすが防御特化の神……。
しかし、こちらの攻撃もこんなものではない。
私が視線を送ると、彼女は力強い頷きを返してきた。
「いつでもいけるわ! 食らいなさい! 私の最大技よ!」
ミラーテさんが、一つの火霊戦技と二つの火霊魔法を込めた矢を放った。
「〈スーパーメテオアロー〉!」
矢は巨大な炎の塊と化し、空から降る隕石のようにザンデュガに衝突。直後に火炎が広がって大きな紅蓮の花を咲かせた。
うむ、まるで花火みたいだ。
ザンデュガは見た目と威力がそぐわないこの攻撃に首を傾げる。
当然だ、あれは派手なだけの陽動だからな。そして今のは予行演習、本番はここからだぞ。
ミラーテさんがもう一度〈スーパーメテオアロー〉を発射した。
再び大輪の花が開いたその時。
ズドンッ!
火炎の中を突っ切った一発の銃弾が巨竜に命中する。
ドッゴ――――――――ン!
大きな爆発が起こり、天を突くほどの火柱が上がった。
どうだ、これはしっかり見た目と威力が一致しているだろ? と尋ねるまでもないな。
あの岩山のようなザンデュガが大地に倒れこんでいる。
「やはりだ。お前なら神をも撃ち抜けるぞ」
私の視線の先では、大型のライフル銃を構えてニルレイアが立っていた。
「岩山のようにでかいから、すごく当てやすい」
小説とコミックの、トレミナのキャラクターの違いについて活動報告にまとめてみました。
何だかモヤモヤしている方はご覧ください。
10/18付けのやつです。
おっとり天然なところ(要=かなめです)は共通なんですけど、コミックは異なる点も結構あります。
漫画というコンテンツを考えてああなっています。
トレミナはなかなか面倒なキャラクターをしていますから。
トレミナ
「生み出したのはあなたですけどね」
ですね。
評価、ブックマーク、いいね、感想、誤字報告、本当に有難うございます。