表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ジャガイモ農家の村娘、剣神と謳われるまで。  作者: 有郷 葉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

179/212

179 四身一体

 戦力的にはこちらが圧倒的に不利だ。とにかく皆の安全を最優先に考えなきゃ。


「お姉ちゃんとキルテナ、モア、チェルシャさんはヴィオゼームの方を担当して」


 私の言葉に、四人が揃ってこちらを見た。

 やっぱり真っ先に反論してきたのはセファリスだった。


「つまり、トレミナが一人でシグフィゼと戦うってことでしょ。無謀にも程があるわよ。了解できるわけないわ!」

「ヴィオゼームだって本来なら全員で当たらなきゃいけないくらい危険な相手なのは分かるでしょ? 私は時間稼ぎに徹するから心配しないで」


 何度考えてもこの分担が最善なんだよね。

 しかし、今回ばかりは内側の三人も何か言いたげだ。精神世界でトレミナB、G、熊さんが空を見上げていた。こちらはトレミナ熊さんが口火を切る。


『分かっているのか、トレミナ。あのシグフィゼは本当に最上位の中でも上位の神獣だぞ?』


 分かってます。だけど、誰も死なないためには私が無理をするしかありません。

 それに、向こうも私の首がほしくて仕方ないみたいだし。

 銀の竜が前に一歩踏み出す。私が〈ステップ〉で空中を駆けると、向きを変えて後を追ってきた。


 これでセファリス達とは少し距離を空けることができたね。

 互いの戦闘が交錯せず、聞き耳をたてればあちらの様子も窺える絶妙な距離だ。


 私を見送ったセファリスが鼻息荒く双剣を抜いた。


「もうトレミナったら! 勝手なんだから! こうなったら速攻でヴィオゼームを倒してトレミナの援護に行くわよ!」

「無茶言うな、五竜だぞ……」


 呆れたようにキルテナがそうこぼすと、姉は眉をひそめる。


「五竜が強いのなんて当り前でしょ、五竜なんだから。……あんた、さっきからやけに怖気づいてない?」

「……私はドラグセンにいた時、あいつらの世話になってたんだ。……その化け物じみた強さは身に沁みてる」

「だからそれが何だっての。あんたはもうコーネルキアの守護神獣になったんでしょうが。それがどういうことか、キルテナの方が分かってるんじゃない?」

「…………。……そうだ、私はもうこの国を守護する神獣なんだ。どんな強敵が相手でも……、魂の限り戦わなきゃいけない!」


 ダダッと走り出したキルテナはヴィオゼームの前へ。

 巨竜に人差し指を突きつけ、


「ヴィオゼーム! 私はコーネルキアの守護神獣キルテナだ! 国を侵略するお前は私が倒す!」


 そう高らかに宣言した。

 宣戦布告されたヴィオゼームの方は、……え、笑った?

 何とも嬉しそうに微笑んだように私には見えた。


 キルテナの全身が光に包まれる。徐々に巨大化していき、やがて体長七十メートルの黄金竜の姿に戻った。

 【煌帝滅竜】のキルテナは、一回り大きな【煌帝神竜】のヴィオゼームと向かい合う。


 彼女が竜化するのを待っていたように、まずセファリスが、続いてモアとチェルシャさんがその頭に乗った。ここでモアから精神通話が。


『お姉ちゃん、私とウザゴンの心をつなげてくれ。その方が、向こうに察知されることなく、迅速に指示を出せる』


 確かに彼女の言う通りだね。本能型のモアは勝つことに集中してるから、そのための方法もよく思いつくのかも。

 ちなみに、私と皆のこの距離は精神をつなげられるギリギリのラインでもある。

 そして私もいいことを思いついたよ。


『皆、お互いに心を開いて』


 四人に呼びかけ、全員がこれに応じて心を開放してくれたのを確認。

 私はそれぞれの精神を全方向に接続した。


『何これ! 皆の考えてることが分かる!』

『こんなことできるなんて、トレミナもう絶対人間じゃない』


 お姉ちゃん、落ち着いて。チェルシャさん、私にも聞こえてるんですから少しは口を慎んで。


『あの竜は絶対に殺殺殺殺殺殺殺殺』

『トレモアの精神怖すぎだろ!』


 キルテナ、モアとの接続を切らないでね。

 こちらの準備が整ったちょうどその時、ヴィオゼームがやや体を沈ませて身構えた。


『右、たぶん〈爪〉だ』


 まずモアが警告を発する。

 これに反応してセファリスが双剣の刃を重ねた。


『最初に私が威力を削ぐわ!』

『だったら私は光で補強。キルテナも〈爪〉で迎え撃て』


 チェルシャさんの指示にキルテナは『分かった!』と答えた。

 一連のやり取りはほぼ同時に、一瞬で完了していた。


 その後、モアが予測した通り、右側から凄まじい速さでヴィオゼームの〈火の爪〉が迫る。


「秘技! 〈オーラスラッシュ・クロス〉!」


 セファリスが十字型にマナの波動を放った。きっちりヴィオゼームの爪に当たり、威力と速度を奪う。

 この時、すでにチェルシャさんの光霊が、〈火の爪〉を発動させたキルテナの右前脚に集まっていた。

 〈火の爪〉同士がぶつかり合う。


 ドバ――――――――ン!


 衝突の瞬間、巻き起こる激しい爆発。

 炎が収まるより先に、キルテナの嬉しそうな心の声が飛びこんできた。


『や、やったぞ! ……私が、ヴィオゼームの技を受け止めた!』


 言葉通り彼女は五竜が繰り出した爪をがっちり掴んでいた。

 ヴィオゼームは驚きの眼差しで、一回り小さな竜とその頭部に乗った者達を見つめる。


 驚くのも仕方ないと思う。まるで全員が攻撃を読んでいたみたいに連携して動いたんだから。


 モアはやっぱりルシェリスさん同様に、マナから攻撃の兆しを察知できるようだね。

 セファリスはきっと直感的に自分のやるべきことを導き出し、臨機応変にサポートしてくれる。

 チェルシャさんは光霊を必要な箇所に無駄なく割振れ、その力を存分に発揮できる。

 キルテナはあらゆる面でまだまだヴィオゼームには及ばないけど、ドラグセンにいた頃より格段に強くなった。

 この四人(頭)が一つになれば、五竜とだって互角に渡り合えるはずだ。

トレミナがいれば、コーネルキアの戦力は合体可能です。

なお、キルテナの技と属性の組み合わせはヴィオゼームと全く一緒です。この二人(頭)の関係について、前から少し匂わせてます。


評価、ブックマーク、いいね、感想、誤字報告、本当に有難うございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。





書籍化しました。なろう版へはこちらから。
↓をクリックで入れます。




陰キャ令嬢が沼の魔女に。

社交界で沼の魔女と呼ばれていた貴族令嬢、魔法留学して実際に沼の魔女になる。~私が帰国しないと王国が滅ぶそうです~








強化人間になってしまった聖女のお話です。
↓をクリックで入れます。




腕力で世界を救います。

強化聖女~あの聖女の魔力には武神が宿っている~








こちらも連載中の小説です。書籍化します。
↓をクリックで入れます。




事故で戦場に転送されたメイドが終末戦争に臨みます。

MAIDes/メイデス ~メイド、地獄の戦場に転送される。固有のゴミ収集魔法で最弱クラスのまま人類最強に。~




書籍 コミック


3hbl4jtqk1radwerd2o1iv1930e9_1c49_dw_kf_cj5r.jpg

hdn2dc7agmoaltl6jtxqjvgo5bba_f_dw_kf_blov.jpg

1x9l7pylfp8abnr676xnsfwlsw0_4y2_dw_kf_a08x.jpg

9gvqm8mmf2o1a9jkfvge621c81ug_26y_dw_jr_aen2.jpg

m7nn92h5f8ebi052oe6mh034sb_yvi_dw_jr_8o7n.jpg


↓をクリックでコミック試し読みページへ。


go8xdshiij1ma0s9l67s9qfxdyan_e5q_dw_dw_8i5g.jpg



以下、ジャガ剣関連の小説です。

コルルカが主人公です。
↓をクリックで入れます。




コルルカの奮闘を描いた物語。

身長141センチで成長が止まった私、騎士として生きるために防御特化型になってみた。




トレミナのお母さんが主人公です。
↓をクリックで入れます。




トレミナのルーツを描いた物語。

婚約破棄された没落貴族の私が、元婚約者にざまぁみろと言って、王国滅亡の危機を逃れ、ごくありふれた幸せを手に入れるまで。



― 新着の感想 ―
[一言] 戦闘を遅延させる目的ならば一瞬の思考会議が可能な この状態が現時点で最適って感じですねー 不適格要素がどのくらい向こうに二の足を踏ませれるか
[一言] >トレミナもう絶対人間じゃない 人間の上位種、団栗に進化済みなのがバレたか
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ