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175 トレミナ一家の危機

 我が家で迎えるいつも通りの朝。私はいつも通り家族の朝ご飯を作っている。

 今日は東方風にしてみたよ。

 炊きたての白米。だし巻きたまごに、焼き魚。ジャガイモと根野菜のお味噌汁。緑色がないからほうれん草をおひたしにでもしようかな。

 あとは……、そうそう、肉がないと文句を言う人達がいるから、ソーセージを二キロほど茹でておこう。

 よし、これで家族五人分の朝ご飯、完成だね。


 リビングに目をやると、もうセファリス、キルテナ、ルシェリスさんがテーブルに着いていた。

 残りの一人は起こしにいってあげた方がいいかも。

 と思っていると、パタパタと廊下を走る音が。


「ね! 寝坊しました……! ごめんなさい……!」


 パジャマ姿のモアが慌てた様子で部屋に入ってきた。

 私は寝ぐせのついたその頭を直してあげながら。


「昨日は大変だったんだから仕方ないよ。顔を洗っておいで。皆で朝ご飯にしよう」

「は、はい、トレミナ様」

「モア、もうトレミナ様じゃないでしょ?」

「あ……、……お、お姉ちゃん」


 少し顔を赤らめたモアは、三人がいるテーブルの前で立ち止まる。深々とお辞儀をした。


「……お、おはよう、ございます。師匠、セファリスお姉ちゃん、キルテナさん」


 それから、またパタパタと洗面所へ走っていった。

 配膳を手伝ってくれていたセファリスが「ふふふ」と笑う。


「末の妹はおどおどのお寝坊さんね」

「気弱なのか図太いのか分からないな……」


 キルテナがそう言うと、ルシェリスさんは困ったように腕組み。


「モアは昔から矛盾する二面性を持った子だ。……トレミナ、今回は世話をかけたね。おかげであの子も少しは本能と向き合えるようになったみたいだよ。アイラは最初からそれを狙ってモアを連れていった気もするが」


 私とモアは昨日の夕方、ジル先生の飛行魔法で一緒にコーネガルデに帰ってきた。

 アイラさんとシエナさん、魔女の皆さんはしばらくレイサリオンの王宮に滞在するとのこと。あそこにはメアリア女王が作った魅惑の書庫があるとかで、まあつまりは、今回頑張ったので休暇がもらえたってことだ。

 私もモアに何かご褒美になるようなことをしてあげたいと思い、一緒に住もうと提案してみた。

 彼女は意識が飛んでいくくらい喜んでくれたからよかったよ。


 そして、師匠として弟子を監督すると言って、ルシェリスさんも引っ越してくることに。

 ルシェリスさんはフライドポテトをごちそうして以来、毎食我が家に食べにくるようになっていたので、別に驚きはなかった。

 こうして家族が五人に増えた。


 皆で揃って囲む最初の朝ご飯。食卓は前より一層賑やかに。

 大皿に一個残ったソーセージを取ろうとしたキルテナが、そのフォークを止める。


「最後の一本だ。師匠、食べてくれ」

「そうか、すまないな」


 キルテナが食べ物を譲るなんて。本当にルシェリスさんのことを尊敬してるんだね。ソーセージ、あと二キロは必要だった。


「やっぱりトレミナの味噌汁は美味しいわね。お姉ちゃん、イモが入っていても大好きよ」


 言いつつ上から粉チーズをドバドバかけるセファリス。……いいけどね。

 モアはといえば、一つ一つ噛みしめるように食事を進めている。


「……お姉ちゃんの料理、どれも美味しいです。特にこの、だし巻きたまご……、ふわふわでたまりません……」


 なるほど、モアはふわふわが好みか。今度、オムライスでも作ってあげようかな。

 家族の食を預かる者として、皆の好みを把握することは大切だ。


 ……こうやっていると、とても穏やかな時間が過ぎていく。

 もうすぐ戦争が起こるなんて、とても信じられないくらいに。

 もしかしたら、もうドラグセンも攻めてこないんじゃないだろうか。春のノサコット村襲撃以来、目立った動きも見せてないし。

 それならそれで……、ルシェリスさん?

 彼女は突然席から立ち上がっていた。その視線は何かを探るように虚空を見つめている。手だけを動かし、ポケットから小さな箱を取り出した。

 まさかあれを? ……大変だ。


 ルシェリスさんには独自の感知術がある。

 大気中のマナからわずかな兆しを読むというものだ。長く弟子をしているノルエリッドさんによれば、その感知範囲は半径百キロメートルを超えるとか。距離にして、最上位神獣の十倍以上になる。

 そんなルシェリスさんに託されたのが、あの小箱。破壊することでコーネガルデ中に危機を知らせることができる魔法具だ。

 それを握る彼女の口元に笑みが浮かんだ。


「……来るぞ、最上位中の最上位が。おそらく、五竜クラスだよ」


 ……それはきっと、ほぼ間違いなく五竜ですよ。

 どうしよう、スタートしたばかりなのに一家最大の危機、いや、国家最大の危機だよ……。

今回は書籍発売のお知らせです。

『ジャガイモ農家の村娘、剣神と謳われるまで。1巻』

が、来週4月14日発売となります。

一二三書房 サーガフォレストから出ます。

カバーイラスト、キャラデザインは黒兎ゆう先生です。

この下(広告の下)に貼ってあるので、ぜひご覧ください。


書籍版の特典といたしましては、

『追章 コーネガルデのどんぐり』

『追章 ジャガイモの剣』

が新たに追加されております。

また特典SSは、

『トレミナとわたあめ神獣』

です。

それ以外にも所々書き足していますので、

楽しんでいただければ嬉しいです。


そして、コミックの方なのですが、

明日、情報解禁だそうです。

こちらのトレミナも楽しみにしていただければと思います。

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書籍化しました。なろう版へはこちらから。
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以下、ジャガ剣関連の小説です。

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婚約破棄された没落貴族の私が、元婚約者にざまぁみろと言って、王国滅亡の危機を逃れ、ごくありふれた幸せを手に入れるまで。



― 新着の感想 ―
[一言] …まさかじゃがいも畑な降り立つんじゃ無いだろーな? その時点で詰むぞ?(笑)
[良い点] 家族が増えて特典も増えて良いこと尽くめで何より何より [気になる点] あの小箱はスマホ?とは違う通信網が構築されてるのかな… [一言] ジル先生の遊覧飛行からの一家団欒からの来襲とは忙しな…
[一言] 守護神獣2、その秘蔵っ子1、ナンバーズ2の団らんを邪魔する方とされる方、どっちがよりピンチやら そしてなるほどドングリだ 同時にそれを食べるリスっぽくもある 発売が楽しみ
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