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150 虎狐神連合軍[シエナ]と同志達が苦手なタイプ

 目の前には直径二百メートルほどの巨大火柱が立っている。

 高さは……、よく分からないな。雲を突き抜けてるくらいだから、ものすごく高い。

 でも、なぜこうなったのかは何となく分かる。

 〈ノヴァ・フェニックス〉をぶつけてから、私達火霊の十二人はできるだけ攻撃範囲を絞りこもうと思った。風霊の八人も同様で、外から内に向かって風を操作。

 結果、この炎の巨塔が完成したわ……。

 見上げながら同志メアリアが。


「素晴らしい……! 同志達、これはおそらく世界最強の魔法ですよ……!」

「そうね、神クラスの神獣でもこの魔法に耐えられるのはなかなかいないわ」


 同志アデルネの言葉で、私達は改めて火柱を見る。

 まるで溶鉱炉のような色。中はいったい何千度あるんだろう。

 マナ感知で進化形十五頭がすでに息絶えているのは確認済み。正確に言うなら、全く何も感知できない。

 どうなっているのかしら。お肉、食べられる状態じゃないのは確かよね。これだけの稀少肉を失ってしまうなんて、リズテレス姫に顔向けできないわ……。

 だけど、もしかしたらちょっとくらいお肉が残っているかも。いい感じに焼けていたりして。

 わずかな期待を込めて、皆と一緒に炎が収束するのを待った。


 複数の意思が混ざった合同魔法だけに、私の思い一つでは消せないのよ。(まったく、恐ろしい魔法だわ)たぶん全員で息を合わせればできると思うんだけど。

 と思っている間に火柱は徐々に細くなり、やがて消滅した。

 そして、そこに現れたのは……。


 ……何も、ない。

 お肉どころか、地面すら、本当に何もない。

 大地に巨大な穴が空いていた。

 恐る恐る近付いて上から覗きこんでみる。

 ……ふ、深い。表面が溶けちゃってるし、まるで火山の火口だわ。

 これじゃ神獣は骨も残ってないわね。

 虎神、狐神、稀少肉を食べてあげられなくてごめんね。

 二十六人で焼失(消失)した大地の前に並び、皆で両手を合わせた。


 この世界では、魂は循環すると言われている。肉体を離れた魂達は、分裂したり結びついたりして、いずれ新たな生を得るらしい。

 騎士団で慣例になっているこの手を合わせる仕草は、命への感謝を捧げるものだけど、次なる生が幸せなものであるようにという祈りみたいにも思える。不思議なことにこう感じるのは私だけじゃなく、他にも結構いるのよ。

 だから今は、融合できなかった神獣達の魂が、無事来世に辿り着けるよう祈らざるをえない。


 さて、ずいぶん威力過多ではあったものの、私達がやるべきことは何とかできたわ。

 残すは……、ちょうどこっちに来るわね。

 人型になっているボス二人の接近を感知した。

 神獣に戻らない……? お喋りがしたいのかしら?

 私達は直径約二百メートルの大穴から少し離れた場所に移動。

 森の中で、敵が姿を現すのを待った。


 程なく遠目に男性と女性の二人組を確認する。

 男性の方は、身長が百九十センチはある体格のいい青年だ。彼が虎神のボス、【穿槍暁虎】ね。いかにも、俺様がボスだ、って雰囲気。……ワイルドでちょっとかっこいいわね。

 対して女性の方は、身長が百六十センチ台の前半で、気の強そうなタイプ。狐神のボス、【鎧鱗剛狐】なんだろうけど、ぐいぐい来そうな感じの子ね。私達(魔窟の魔女)とは相入れないわ。

 ところが、彼女は私と同志達を気にする素振り。


「あんた達! も、もうさっきのドでかい鳥は出せないわよね!」


 なるほどね、〈ノヴァ・フェニックス〉を警戒してるわけか。確かにあれを食らったら、この上位種達でもひとたまりもない。

 マナ感知で分かると思うけど。とりあえず、ハッタリでもかましておこう。


「あと一発、撃てますよ。ふふふふふ」


 あ、同志達が呆れたような眼差しで私を。最近それ多くないですか?

 そう、意気込みが大きかった分、あの二つの合同魔法に携わった二十人はかなりマナを消費している。〈ノヴァ・フェニックス〉は明日まで撃てないし、今まともに戦えるのは応援に回ってた六人だけよ。


「嘘つきなさいよ! 感知で分かってるんだから! あんた達の中でまともに戦えるのは六人くらいでしょ! 認めなさいよ!」


 分かっているのにわざわざ認めさせようとするなんて。やっぱりこの狐神、無理だわ。

 ほら、同志達も引き気味じゃない。


「私、あの子苦手です」

「同じく。服も何だか派手、というか破廉恥ですし」

「破廉恥ですね。おへそは隠すべきかと」

「おへそを出している人とは相入れません」


 ですよね、私がリーダーとしてちゃんと言います。


「狐神さん、おへそを出すのは破廉恥ですよ。それから私達に話しかけるのはご遠慮ください」

「この程度で破廉恥ってどういうこと! 大体あんた達が地味すぎ、ひぃ!」


 がなりたてていた狐神は途端に固まる。

 同志アデルネが彼女に威圧のマナを放っていた。


「私の同志達を侮辱することは許さないわ。ちょっと黙りなさい。……まあ、今から永遠に喋れなくしてあげるけど」


 ……怖い。同志アデルネは完全に臨戦態勢だわ。

 上位進化していないのに敵の二人よりマナが多いし、本当に不思議な神獣。これからその真の実力が見られるのかしら。


「お待ちを……。どうやら、私が先のようです……」


 同志メアリアが進み出ると、あちらからは待っていたように虎神のボスが。

 私達が話している間も、彼はずっと同志メアリアだけを見つめ、敵意を送り続けていた。

 そうか、いよいよなのね。

 二年前の因縁が決着する。

「ジャガイモ」のキャラは概ね露出少なめで実戦的な格好。

おへそを出すのは結構大変なことです。


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― 新着の感想 ―
[一言] この炎の巨塔も許可が必要な気がします!
[一言] ジャガイモのへそ……?(混乱
[一言] この作品の公式略称『ジャガイモ』だったのか
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