149 虎狐神連合軍[シエナ]と同志達の絆(許可制)
最も攻撃力の高い合同魔法、それは私が主体となって放つ火魔法だ。
二十六人中、火属性を扱えるのは私を含めて十二人。各々の火霊を一つにして、相乗効果を生み出す。
さらに今回は火を補助する風の合同魔法も使うことになった。火属性はないけど、風属性を持っている八人が担当するわ。吹き荒れる風で敵の動きも封じることができる。
火も風も使えない残りの六人は、
「「「同志達! 頑張ってください!」」」
応援よ。
まずは風の合同魔法から発動する。
同志達、急いで!
もう私の鳳凰がもちそうにない!
「私、この魔法は名前を叫ぶのがちょっと恥ずかしくて……」
「同感です。同志シエナに名付けてもらったのが間違いでした」
一生懸命考えて最高の名前を贈ったのに!
それより急いでください!
本当にもう……!
虎神の〈水走波〉が直撃し、孤軍奮闘していた鳳凰はついに消滅。
ほ! 鳳凰――――っ!
あなたの頑張り、忘れません!
私の魔法が破られたのを受けて、八人が行動に移る。
「「「風霊よ、清浄なるその力で、戦場を掌握せよ! 〈穢れなき風のシルフィード〉!」」」
すごくいいじゃないですか。大正解ですよ。
進化形十五頭を中心に暴風が駆け巡る。
ビュオオオオオオ――――ッ!
森の木々が引っこ抜けそうなほどの風速。大きな神獣達もさすがに身動きがとれない。
凄まじい威力だわ!
この人数で発動するのは初めてだけど、それにつけても凄まじい!
私達の普段の練習は、精霊を合わせるだけだったりが多い。互いに任務でなかなか時間が作れず、合同魔法もこれまで五人程度でしか実行したことがないのよ。
だけど、手応えはあった。
私達は他の騎士より相乗効果が大きいように思う。当然といえば当然よね。だって私達は志を同じくする同志だもの。
そして今、この〈穢れなき風のシルフィード〉を見て確信したわ。
相乗効果は同志の数が増えれば増えるほど強大になっていく!
この分だと、私達の火の合同魔法も期待できるわね。
早速やっていきましょ。
「火霊よ! 根源たる生命の炎を咲かせ、天翔ける翼となれ! 〈烈花鳳凰〉!」
私の鳳凰は何度でも甦る! (魔法なので。)
またこれを出した理由はちゃんとある。鳳凰に皆が火霊を注ぎこむのが火の合同魔法なの。
さあ同志達! お願いします!
「「「火霊よ、生命の炎に集いて、天翔ける翼に力を!」」」
十一人の魔女が両手を掲げて火霊を送り出す。
よし、最後は私も一緒に声を揃えて。
「「「〈ノヴァ・フェニックス〉!」」」
鳳凰は同志の絆で生まれ変わるのよ!
体長二十メートルだった火の鳥が見る見る大きく。
前に四人で発動した時は体長三十メートルまでいったわ。今日は十二人だし、皆の意気込みも違う。
これは四十メートル、いえ、五十メートルいっちゃうかしら。うふふふふ。
ゴゴゴゴゴゴゴゴォォ…………。
やったわ! 五十メートル突破!
……え。……まだまだ大きく、なっていく……?
ゴゴゴゴゴゴゴゴォォ…………。
六十……、七十……。
ちょ! ちょっと待って! どこまで成長するの!
私達は対象除外してるから大丈夫だけど森が焼ける!
フェニックスもっと上空へ!
ゴゴゴゴォォ……、…………、……ゴゴゴゴゴ、ゴ。
……や、やっと止まった。
私達が見上げる先には、空を覆い尽くさんばかりの巨大な火の鳥が浮かんでいた。
これ、体長百メートルを軽く超えてる……。
翼の端から端まで、いったい何百メートルあるのよ……。
……このフェニックス、どうしましょう?
同志達に視線で問いかけるも、答は返って来ず。全員が困惑していた。
「敵に撃ってしまえば、よろしいのでは……?」
振り返ると、そこには同志メアリアが。
「……ですが、森の大部分が焼失しますよ?」
「構いません……、どうせ地図を書き変えることになりそうですから……。レゼイユ団長が来るので……」
「あ、そうでしたね……」
上位の騎士になると通り名が付与されていたりする。
私の場合は、燃える赤髪のシエナ。(実は自分で名付けたんだけど。)
ナンバーズはもちろん全員持っていて、ロサルカさんは最近になって死神から魔王に変わったわね。
そして、レゼイユ団長の通り名は、……破壊神。
あの人が山で戦えば山が吹き飛び、湖畔で戦えばなぜか湖が干上がる。きっとこの森も無事では済まないはずだ。
同志メアリアは火の鳥を見上げながら「きひ」と笑った。
「それに、興味ありませんか……? この〈ノヴァ・フェニックス〉が、どれほどの威力なのか……」
二十六人で顔を見合わせた。
……ものすごく、興味がある。
私達とナンバーズとの間にはかなりの実力差がある。
だけどもしかしたら、力を合わせればあの別格達を超えられるのでは……?
風魔法担当の同志達が口を開いた。
「やってください。私達が〈シルフィード〉で可能な限り延焼を抑えますから」
「私達を信じてください」
……同志達。
分かりました。
何だかさっきよりフェニックスが大きくなった気がするけど、思い切って撃ちます。
いきますよ!
てええいっ!
――――。
『合同魔法って威力の変動が激しいんだけど、確実に危険とされているものがいくつかあるんだよ。
そういうのはランク付けしてあって、しっかり管理されてる。
開戦時に本部から注意喚起の紙が回ってきてたような……。
あれ、どこいったかな?
剣神(兼ジャガイモ農家)
トレミナ・トレイミーの回顧録』
『合同魔法ランキング
(コーネルキア騎士団本部調べ)
一位 〈ノヴァ・フェニックス〉
発動者 特務魔女部隊
[シエナ隊長に通達]
二十名以上の発動で、首都コーネフィタルが灰になる規模の威力になります。使用には必ず(必ず!)本部の許可を得てください。――――。』
ノヴァは新星という意味です。
私的には〈ニューフェニックス〉でもよかったのですが。
シエナ
「ありえないですね」
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