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148 虎狐神連合軍[シエナ]と同志達の戦い

 これは、どういうことなの……。

 暴れ回るトレモアちゃんを避けるように、ボス達の隊がこちらに向かってくる。

 人型になっている虎神と狐神の上位種。と、その側近が十五頭、なんだけど……。

 どうして側近全部、進化形なの?

 つまり、【大】【魔】【角】【甲】【毒】の付く【慧虎】と【霊狐】が十五頭だ。体長はいずれも十メートル近くある。(【大】の二頭は十五メートル級。)

 私達二十六人でこれを倒すのは……。


「さすがに無理ね。敵も考えたものだわ」


 同志アデルネの視線に、同志メアリアが頷く。


「私達も、手伝うしかない……」

「もちろん俺もやる。皆で当たろう」


 オージェスさんもスーッと剣を抜いた。


 そうするしか、ないわよね。

 明らかに私達の手には余るもの。

 でも、本当にいいのかしら?

 臆病なトレモアちゃんがあんなに頑張っているのに。私達はこの国の力になるため、援軍としてやって来たのに。

 振り返ると、同志達も同じ気持ちだと分かった。

 ここでやらなきゃ、私達は特務部隊なんて名乗れない気がする。

 互いの眼差しで意思を確認し合った。


「待ってください、進化形は私達に任せてもらえませんか?」


 同志メアリアとは目を合わせなくても分かる。彼女は今、シールド(前髪)の向こうで心配そうな顔になっていると。


「危険を感じたらすぐに助けを求めます。私の判断を信じてください」

「…………。信じます……。よろしくお願いします、同志達……」


 女王様からの信任を得ると、皆で向かい合って拳を胸に。


「行きますよ! 同志達!」


 揃って各種ゲインと〈トレミナゲイン〉を発動。

 感知で、ボス達から離れた十五頭が、速度を上げて進軍してくるのに気付いた。


 まず十六人の同志が武器を持って駆け出す。

 彼女達は接近戦を得意とする前衛だ。

 少し遅れて、私と残りの九人が後を追った。

 私達は前衛を援護する後衛になる。

 事前にフォーメーションはいくつか考えてあって、中でもこれは強敵と対峙した時用。安全第一の誰も死なせない仕様よ。


 前を走る十六人が二人ずつペアになった。

 八組に別れたところで、連合軍と激突。

 一組で一頭担当し、私達後衛は他の七頭を遠距離技能で足止めする。可能なら近接組の援護も、といきたいんだけど、やっぱり十人じゃ進化形七頭は足止めが精一杯か……。

 あっちも離れた場所から遠距離の神技で応戦してくるし、想像以上に手強い……。

 ……ちょっと待って。

 敵も前衛と後衛に別れてない?

 狐神には〈狐■〉があるし、虎神も〈■走波〉という高威力の遠距離技を持っている。

 後方で七頭が一列に並んじゃって、まるで砲台だわ!

 虎神は、というより神獣はこんな戦略的な戦い方はしてこないはずなのに。

 狐神の入れ知恵……?


 考えてる場合じゃない!

 火力で押し負けてる!

 このままじゃ前衛の同志達が危険だわ!

 ここはもう……、私の最大魔法を出すしかない!


「火霊よ! 根源たる生命の炎を咲かせ、天翔ける翼となれ! 〈烈花鳳凰〉!」


 私の頭上で巨大な炎が渦巻く。

 つぼみが開花するようにパァッと広がると、優美で優雅な鳥の姿になった。


「これは! 同志シエナが発動エフェクトをこだわりすぎた最大魔法!」

「見た目を重視しすぎた最大魔法ですね」


 よ、余計なお世話です、同志達。

 威力(戦闘力)も抜群ですよ!

 てえいっ!


 ヒュゴオォォ――――――――ッ!


 舞い上がった火の鳥は前線へ。

 体長二十メートルはあるこの魔法獣で神獣に……、

 体当たりっ!


 ボボウ!


 体当たりっ!


 ボボワッ!


 体当たりーっ!


 ボボワ――ッ!


 体当たり――っ!


「今です同志達! 一度退いてください!」


 前衛の十六人が戻ってきて、作戦の練り直しとなった。


「私の鳳凰が持ち堪えられるのは一、二分です! さあどうしましょう!」


 稀少肉の燻製を齧りながら意見を求める私。(マナを補充しないと一分もたないわ。)

 意識は操作する鳳凰の方に向けたままだ。


「どうするも何も、私達だけでは厳しいですよ」

「同志メアリア達に頼みましょう」

「それがいいですね」

「決断してください、同志シエナ」


 どうやら意見はまとまったようね。


「そうですね。もうアレを使うしかありません!」


 あれ、違いましたか?

 全員が私に呆れたような視線を。


「この人、完全に意識が鳥へ行ってますね」

「アレというと、合同魔法ですか? ですが、まだ一度も実戦で使ったことがありませんよ」


 合同魔法は複数人で行使する魔法よ。

 トレミナちゃんが編み出した〈合〉や〈皆〉が元になってるわ。

 あれらはとても難しい技術。マナを合わせて相乗効果を得るというのは本当に難易度が高くて、トレミナちゃんとセファリスみたいに、お互いに一定時間纏わせ続けるなんて信じられないことなの。双子のセルーザさんとメルーダさんが試して、全くできなかったくらいだからね。

 それより比較的難易度が下がるのが、一つの技能の間だけマナを合わせる方法。戦技よりタイミングを合わせやすい魔法の方に皆取り組んでいるわ。

 そう、どの部隊も現在、必殺技となる合同魔法を鋭意開発中なのよ。私達同志も日々練習を重ねている。

 私も他の子達も、魔窟の住人って無性に必殺技なるものに引かれるのよね。なぜかしら?

 ともかく、そんな事情で私達はいくつか合同魔法を作ったわ。


 今回は中でも一番強力なやつを発動する!

Q 無性に必殺技なるものに引かれるのよね。なぜかしら?

A 厨二病だからです。特にあなたは。


評価、ブックマーク、いいね、感想、誤字報告、本当に有難うございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] シエナは厨二病だったのか…(笑)
[一言] 早くどんぐりを見たいです٩(ˊᗜˋ*)و
[一言] 発動エフェクトを作れるなら拘りに拘って凝った代物にしたくなるのは仕方がないこと
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