14 セファリス 開花
確かにエレオラさんのガラの悪さはかなりのものだし、遠くから見れば私が絡まれているように見えたかもしれない。
でも、いきなり殴っちゃダメだよ、セファリス。
エレオラさんは脇腹を押さえてうずくまっている。
すぐに反撃がこないのを確認し、セファリスは振り返った。
「お姉ちゃんがバカだった。トレミナがどんなに強くなっても、大切な妹であることに変わりはないのに。そして、私がやることにも変わりはないわ。お姉ちゃんは大切な妹を守る!」
正直あまり期待していなかったけど、お姉ちゃん、……本当に成長した。
「このガキ! 急に何しやがる!」
立ち上がったエレオラさん。拳を振り上げて向かってきた。
セファリスは腕でガードする。少し後ろに飛ばされるも、タンッと地面を蹴って前へ。回し蹴りをエレオラさんの脇腹に叩きこんだ。
チンピラ女子、再度膝をつく。
一撃目と同じ箇所だ。セファリス、倒しにかかってる。
「なめないで! 私は二年のトーナメントで準優勝したのよ!」
……お姉ちゃん、その人は三年のトーナメントで優勝してるんだよ。
止めなくていいんですか、ジル先生。
「ちょっと見ましょう。興味深いです。――エレオラさん、もしその子に負けるようなことがあれば、あなたの優勝は剥奪ですよ」
「そ! そんなっ!」
……なんか、彼女が可哀想になってきた。
二人の体格差は大きい。身長百七十を超えるエレオラさんに対し、セファリスは約百五十二センチ。けど、姉はものともしないだろう。入学してからずっと自分より大きい相手と戦ってきたんだから。
エレオラさんがファイティングポーズをとり、試合再開だ。
先手を取ってセファリスが踏みこむ。一気に距離を詰めた。
連続ジャブで怒涛の攻め。
「調子に乗るなよ! 二年が! 三年の実力を見せてやる! 雷霊よ、アタシの拳に……ひ!」
たぶん戦技を使おうとしたのかな、エレオラさん。
その瞬間、ジル先生の目が光った。威圧のマナを彼女に発射。
「同じ条件でやりなさい。プライドないのですか? 剥奪しますよ?」
「ごめんなさい……」
先生、上級生には厳しいな……。
同じ条件ということは、戦技や魔法はなし。
錬気法も〈集〉なんかは使用禁止になるよ。それでもエレオラさんの方が一年長く修行してるわけだし、断然有利なはず。
と思ったんだけど、意外や意外、セファリスが善戦していた。
それどころか、もう押し始めてる。
そう、姉を見た時から気付いてはいたんだ。
マナがすごく力強くなっているって。
「先生、どうなっているんですか?」
「人間的に成長したことでマナの質が高まったようですね。さらに、あの子はおそらくあなたのために戦う時、大幅に力を増します。ふむ、ブーストも使えるかもしれません」
「何ですか、ブーストって」
「トレミナさん、ちょっと彼女を応援してみてください」
「え……、はい。お姉ちゃん、頑張って」
すると、途端にセファリスのマナが一層の輝きを。
打ちこんだ右ストレートは、ガードごとエレオラさんを弾き飛ばした。
「うん! お姉ちゃん頑張るから! ……マナが漲ってくる!」
とジル先生が「ふふ」と笑った。
「元々才能のある子でしたが、ここまで化けるとは。これは思いがけない拾い物ですね。セファリスさんはトレミナさんとセットだと大いに力を発揮するようです。戦いはマナの量だけで決まるわけではありません。あなたもうかうかしていると追い抜かれますよ」
はい、追い抜いてもらって全然構いません。
それはいいんだけど、本当にこの姉……、何なの?
「マナが! 漲ってくる!」
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