13 学年末トーナメント 再開幕
学年末トーナメント(四年生の部)、当日。
私は演習場のエントランスでジル先生を待っていた。
色々と確認したいこと、伝えたいことがあるらしい。
周囲には当然ながら今日の出場者、四年生の姿が多い。来月から騎士になるとあって、誰も彼も大人と変わらない外見だ。
それにしても、私、すごく見られてる。
どうして? 見学に来てる下級生とか、私以外にも子供はいるのに。
あ、ちょうどジル先生が。聞いてみよう。
「あなた、噂になっているのですよ。二年生でありながら、特例で参加が認められたと。注目されるに決まっているでしょう」
「……私からお願いして出るみたいな言い方、やめてください」
「どのみち試合が始まれば同じことです。気にしないことですよ。言われなくても、あなたは全く気にしないでしょうが。さ、まずは健康確認からです。……ふむ、マナに異常はありませんね。体調も問題なしですか?」
「はい、いつも通りです」
「よろしい。では、……何の用です? エレオラさん」
私達を睨みつけるように茶髪の女性が立っていた。
身長は百七十センチほど。ややつり目で、髪はポニーテイルに。裏路地にいるガラの悪い女、的な空気を漂わせている。
どうしてこんな所にチンピラが?
とそんなわけないよね。この人、結構な使い手だ。
「ジル先生、誰ですか?」
「昨日行われた三年生の部の優勝者、エレオラさんです」
彼女は圧迫するように、さらに一歩前へ。
「先生! アタシは納得いかないんですよ! どうしてこんな子供が上のトーナメントに出るんです! おかしいでしょ!」
「おかしくありません。彼女、トレミナさんにはその力があります」
「こんな子供がまさか! 納得できません!」
「はぁ……、あなたも面倒ですね。まったく」
も、と言いましたね、先生。
分かりますよ、一番面倒なのはうちの姉ですよね。
ジル先生はしばらく考えたのち、私とエレオラさんを交互に見た。
「ではこうしましょう。あなた達二人、今ここで戦いなさい。勝った方がトーナメントの出場者です」
「無理ですよ! こんな小さな子を相手に!」
エレオラさん、見た目に反して良識がある。
でも、じゃああなたはどうしたいの?
「彼女は二年生の部の優勝者です。心配ありませんよ。さあ、トレミナさん、あなたも準備を。〈闘〉を使いなさい」
「……〈闘〉、ですか?」
「〈闘〉、です。エレオラさんならそれで通じます」
なるほど、普通はそうですよね。
それでは。
――――〈闘〉。
エントランス全体が静まり返った。
その後、堰を切ったように騒然と。
皆、噂で聞いていたはずなのに、この反応。
肝心のエレオラさんはといえば、口を開けたまま固まっている。
お待たせしました。じゃ、戦いましょうか。
「や! いいっ! やめとく! ……トレミナ、だっけ。試合、頑張れよ」
チンピラは物分かりがよくて助かる。
というより、これが正常な反応だよ。
本当にセファリスは……、
うん? 何か聞こえる……?
「こぉのチンピラがぁぁ――! 妹から離れろ――っ!」
ドムゥッ!
全速力で駆けてきたセファリスは、その勢いのまま、エレオラさんの脇腹を殴りつけた。
「このチンピラはお姉ちゃんに任せて! トレミナはこれから試合なんだから!」
お姉ちゃん、元気になったんだね。よかった。
けど、何してくれてるの?
次話、避けて通れた戦いをセファリスが全力で戦います。
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