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121/212

121 キルテナ 対 サイゾウ

 私は大空の彼方に目をやった。

 キルテナが戻ってこない。

 ダメージは大きかっただろうけど、死ぬほどじゃなかったはず。どうしたのかな。もしかしたら、骨折とかして動けないのかも。

 迎えにいこう。


 走り出すとルシェリスさんが追ってきた。


『一緒に行くぞ。私も気になるからね。背中に乗るといい』


 はい、喜んで。

 もふもふの毛に体をうずめると、兎神は大地を蹴った。


 ドッ! ギュ――――ン!


 あっという間に渓谷が遥か下に。

 これ、何百メートル跳んでるんだろう。さすが(たぶん)武の境地に達した兎の神様。ジャンプ力も半端ない。


 ギュンギューンと何度か跳ね、キルテナの落下地点を発見した。

 巨竜がぶつかってできたであろうクレーターの真ん中に、見慣れた金髪の少女が寝転んでいる。

 人型になってるということは、やっぱり竜体の方は結構ダメージがあったんだ。


「キルテナ、大丈夫?」


 私が駆け寄ると、彼女はごろんとあっちを向く。

 あ、泣いてた。


「来るなトレミナ! 私は弱い! こんなに弱い私は守護神獣になる資格なんてない!」

「そんなことない。試合はキルテナの勝ちだよ」

「どうしてそうなるんだよ!」

「それはね……」


 ルシェリスさんの自分ルールのことを話したら、キルテナは一層意固地に。


「納得できるか! 進化したのにあれだけ一方的にやられたんだぞ!」


 困ったドラゴンだよ。

 すると、見兼ねたルシェリスさんが。


『やれやれ……、この子は決して弱くないのだがね。だったら、もう一試合してみるかい?』


 というわけで、キルテナはサイゾウさんと戦うことになった。

 二人でルシェリスさんに乗って渓谷へと戻り、第二回戦。の前に、キルテナ竜体の治療だ。


 【煌帝滅竜】になると彼女は天に轟くほどの叫び声を上げた。


「可哀想にのう。すぐ治してやるのじゃ」


 ソユネイヤさんの治療が済むと、今度は黄金竜と角兎が向かい合った。

 キルテナからは今一つやる気が感じられないけど、サイゾウさんは戦う気満々。自慢の角をブンブン振り回している。


『強敵ではござるが、良き機会! 殿! 拙者の角さばき、しかとご覧くだされ!』

『うーむ……。まあ、無理はいかんぞ』


 姉やん、うかない表情だね。

 気持ちは分かるけど。この二頭、どちらも上級種に進化したばかりとはいえ……。

 ……私がしっかり審判をすれば心配ないか。


 再び中間地点で〈ステップ〉の足場に立った。

 手を振り下ろすと、二頭同時に突進を開始。

 サイゾウさんの角が熔けた鉄のように赤く輝く。

 それをキルテナは両前脚でがっちりと掴んだ。

 直後に角から発火。炎は巨竜の前脚を伝って全身へ。


『あちちちちちちちちっ!』

『ふはははは! よく止めたものでござる! が! 拙者の〈火の角〉はここからが本番! 丸焼きの串刺しにしてやるでござるよー!』


 いや、殺しちゃダメです。

 ちなみに、二頭は互いに心を許していないから精神通話はできないよ。


 角の神獣は攻撃特化型。

 神技全般の威力が上がるし、彼らしか使えない〈角〉技はとりわけ高威力だ。


『あっちーっ! この野郎!』


 キルテナは尻尾でサイゾウさんの腹部を強打。

 ダムッ! と鈍い音が響いた。


『ぐ……、は……、で、ござる……』


 あ、サイゾウさん、意識が飛んだ。

 試合を止めなきゃ。


「勝負あり。そこま」

『うあっち――――――――っ!』


 ブオ――――ンッ!


 制止するより先に、キルテナが力任せにサイゾウさんを放り投げた。

 角兎の姿は大空の遥か彼方に。


 ルシェリスさんがゆっくりと歩いてくる。


『トレミナ、キルテナに私に心を開くよう言ってくれ』


 中継して二頭の精神がつながると、私は少し後ろに下がった。

 ここはルシェリスさんに任せた方がいいみたい。


『あれでもサイゾウは上位種としてなかなかだ。ここ数年ではあるが、私が稽古をつけているからね。キルテナ、お前は弱くなんかない。上位種たる充分な力を備えている』

『ほ、本当か……?』

『ああ、守護神獣としても強い部類に入るだろう。世界を旅してきた私が保証する。お前ほどのドラゴンなら小国だろうが大国だろうが欲しがるさ。たとえウザゴンでもね』

『そ! そうか! ……何だよ、ウザゴンって』

『だから、お前は胸を張って堂々と守護神獣になれ!』

『堂々と、守護神獣に……!』


 よかった、自信をつけたようだね、キルテナ。

 ……元はといえば、ルシェリスさんが自信を失わせるほど強かったせいなんだけど。


 ここで、ソユネイヤさんが遠慮がちに。


『すまんのじゃがルシェリスさん。儂の家臣を迎えに、もう一跳びお願いできんかのう……』

『そ、そうだな。【戦狼】に齧られても困るし』

神獣達の力関係も明らかになったところで、そろそろ人間サイドに戻ります。

次話、トレミナが久々に料理の腕を振るいます。


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― 新着の感想 ―
[一言] ま、仕方無いね。ウザゴンだから。(笑)
[一言] きっとヤムチャポーズになってたはず…
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