表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【Alternative World Online】翠の天使、VR世界で徘徊中【ミドリ】  作者: 御神酒
第3章『連合国八鏡』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/369

#73 良いご褒美と嫌なご褒美




「マナさん……」

 〈どらごん……〉



 昨日の大暴れから一日が経過した。その間、マナさんが目覚めることはなかった。

 流石に私も限界で睡眠をとったのだが、寝付きも悪いしあまり眠れないしで休めた気がしない。


 今もこうして、朝イチからどらごんと一緒にマナさんの手を握って目覚めるのを待っている。



「――お」



「っ! マナさん! 大丈夫ですか!?」

 〈どらごんっ!〉



 かれこれ数時間この部屋にいたけど、言葉を漏らしたのは初めてだ。

 身を乗り出して、マナさんの顔をのぞき込む。



「んぅ〜?」


 ゆっくりと、小さな目が開かれる。



 ――ぐうぅぅ〜




 それと同時に元気な腹の音が鳴った。

 ちまちま飲み物を飲ませてたぐらいで、何も食べていないからだろう。かわいい。



「おなかすいた……っす」


「今持ってきます!」



 勢いよく立ち上がる。

 そして、手を放して――


「ミドリさん、こっち……来て欲しいっす」

「え? はい」



 言われるがままマナさんに近づく。

 ベットの隣をポンポンと叩いているので、そこに座ってみる。



「ちょ、マナさん!?」

「じっとしてくださいっす」



 首から服の中に手を入れられる。


 今は軍服じゃなくて、ここで貰ったラフな私服。脱ぎやすい格好ではあるけど、何故こんな行動をしているのか。


 困惑している私とは対称的に、マナさんの表情は真剣だ。



「ナニコレ」

「動かないでくださいっす」


「はい」



 胸元が白く光り輝いている。

 何が起きているんだろう?



「ちょっと痛いかもっす」

「え」


「ふんっ!」


「あたたっあいたぐぬうはぁ!」



『ユニークスキル:【破壊神の刻印】が封印されました』



「??」



 一瞬胸の奥に激痛が走った後、謎のアナウンスが聞こえて更に困惑する。痛みは徐々に引いていっているが、それ以上に――



「何か、楽になった気がします」


「それはよかったっす。お腹すいたからご飯お願いするっす!」



 よく分からないけど、飢え死にされたら困るのでご飯を取りに行こう。


 急いで立ち上がって、部屋を出る。


 後ろでどらごんに話しかけているのが見えた。

 私ほどではないけど、あれも心配してたから慰めてあげてほしい。昨日大暴れしたって聞いたし。


 でもやっぱり、私のことも後でいっぱい慰めて欲しい。


 今日は一日中、マナさんと一緒に居よう。



 ◇ ◇ ◇ ◇



 時刻は夕方。

 昼過ぎまでしっかりこってりがっちり、マナさんとイチャイチャのんびりして過ごした後。


 私とマナさんは、元気に他の皆と合流した。




「お、復活したか」

「心配したよ! 倒れてたって聞いたのに、会わせてくれないから余計に」

 〈どらごん〉


「ご心配おかけしましたっす」

「私たちのラブラブチョメチョメタイムを邪魔するやつはなんびとたりとも原型をとどめること能わず、ですよ」



「えぇ……?」



 場所は議会の一室。

 厳かな雰囲気の部屋とは大きく離れて、ふざけた会話を繰り広げる。





「マナちゃん、何か大人っぽくなった?」

「そ、そんなことはないっすよ?」



 確かに、どこか大人びている気はする。

 垢抜けたというか、無邪気な雰囲気から儚い雰囲気になったというか。


 まぁ、私はどんなマナさんでも受け入れる。

 たとえ成長してナマイキになっても受け入れ……たい。


 真っ直ぐ純粋なまま成長して欲しくはあるけど。



「反対に、ミドっさんもパナセアさんも変わってないねー。昨日のミドっさんは微妙に違和感があったんだけど気のせいみたいだし」


「あ、サイレンさん。居たんですね」


「最初から居たよ!? 何で今気づいたみたいな風に言うかな!」



 マナさんに首ったけだから。申し訳ないが、優先度はしっかりある。



「というか、人魚姫さんは置いてきたんですか?」

「あー、まあ流石に一国のお姫様を連れてくるのもまずいし。何とか断ってきたよ」



「そういう意味ではなく、結婚しなかったんですね、という意味です」

「いやいや、しないよ。まだぼくも冒険したいから」



 そういえば男の子だったっけ。

 理由は分からないでもないけど、相手はそんなので断られたらたまったもんじゃないんだろうなー。



「おー、全員そろってるねー☆」



 この部屋に呼び出した人が、ようやくお出ましだ。マナさんはびっくりしたのか、肩が跳ねていた。かわいい。



「全員ってことは、クリスさんはなしなんですか?」

「そうだよ☆」



 呼び出されたのは、何やら色々ご褒美が貰えるとのこと。今回やり遂げたことを考えると妥当だ。


 急進派の殲滅、八鏡の奇行の制止、タチの悪い八鏡の逃走阻止。連合国をまとめたのは私たちと言っても過言ではない。



「いくつかここの宝物庫から貰っていい物を頂いてきたから、好きなのを一つだけ選ぶといいよ☆ 一人一つね☆」



 どうやってそんなに持ってきたのかと思ったが、シフさんはストレージみたいなスキルを持っていたんだった。


 黒い何かから取り出して、目の前のテーブルに広げていく。




 剣、鎧、液体の入った瓶、絵画、ペンダント……と様々な系統の代物が並べられている。


「これにしま……するっす」



 マナさんが選んだのは、小さな盾のようなデザインのキーホルダー。


 天使の翼と輪っかが盾に描かれていて、その盾に翼が横から生えている。そしてそこに(とげ)のある(つた)が絡みついている。


「呪われてないか、確認しません? パナセアさん、お願いします」


「貸してくれ」

「どうぞっす」



「【アイテム鑑定】……スキルレベルが足りない」



 マナさんの指輪の時もだけど、肝心なところで使えないスキルだ。


「一瞬ストレージに入れてみよう」



 そう言ってパナセアさんが一度収納して、取り出す。謎の行動だ。



「ストレージのアイテム名では、{守護之荊翼アイギス・ネフリティス}と表示されていた」


 〈どらごん!〉



 ストレージの機能もそういう使い方ができるのか。便利だなー。


 名前からは想像がつかないから意味無かったけど。



「ネフリティスってなんでしょうね」

「私も知らないな」


 マナさんが終始目を逸らしているけど、どうかしたのかな?

 追及してみようとしたところを、シフさんに遮られる。



「呪われているような物()持ってきてないから、安心してね☆ ちなみにそれはキーホルダーから盾になる便利な武器だよ☆」


「へー」


 なら安心だ。盾というのもマナさんにピッタリだろう。

 パナセアさんがマナさんにキーホルダーを渡して、再び報酬選びに戻る。



「ぼく、この時計にする」


 サイレンさんはアラーム付きの懐中時計を、


「私はこれだ」


 パナセアさんは速記ができるペンをえらんだ。



 あとは私だけ。

 何か良さげなのが欲しいけど、なかなかピンとこない。



「う〜ん。……ん?」



 順番に良さそうな物を鑑定してもらっていたが、未鑑定の物で埋もれているものが目に入った。


 黒い箱だ。

 見た目からは結婚指輪でも入ってそうな高級感が漂っている。


 箱を開けてみると、中には一枚の小さな紙が入っていた。その紙には文字も書かれている。




「なにこれ、【奈落行キ列車】?」




 ただ書かれている文字を読み上げただけなのに、スキルを使った時の感覚を覚える。



「っ! ミドリさん!」

「え?」


 マナさんが焦った様子で私の方に手を伸ばす。

 しかし、その手は届かない。


 私の体が、何かに引き寄せられたのだ。



「マナさん!」



 私も手を伸ばすが、届かず、強引に吸い込まれてしまった。小さな扉の中へ、謎の力で入らされる。

 ゆっくりと、その扉が閉まった。



「いてて……」


 強引に吸い込まれ、壁に激突して体が痛む。



 いや、そんなことを気にしている状況ではない。もしさっきの紙が原因だとしたら――



 〈切符、回収シマス〉



 頭にその声が響き、手に持っていた紙が消失する。そして、その空間――列車が動き出した。



 外を見ると、マナさんがこちらに駆け寄って来る姿と、シフさんがいつも通り微笑む姿が映った。



 ◇ ◇ ◇ ◇




 手当り次第に攻撃したけど、全く効かなかった。斬撃も、火も。


 諦めて揺られること小一時間。


「ぐへっ!?」


『リスポーン地点が強制更新されました』『特殊エリアに入場しました』『一部機能が制限されます』



 入らされた時のように、外に強引に押し出された。



「ここは……?」



 何も見えない闇が一面に広がっている。

 夜なんか目じゃないほどの漆黒だ。



「火よ、〖ファイヤ〗」



 少し明るくなったが、今度は目の前が肌色だ。

 ……違う、これは風景なんかじゃない。



「巨人?」


 足だ。

 大きな大きな人の足だ。

 周りの闇も相まって、目の前にいる人の顔すら見えない。



「奈落、か……」



 やっと元の平和な日常に戻れると思った矢先、どうやら孤立してしまったようだ。


 しかもアナウンスを聞く限り、そう簡単に帰れそうにない場所だ。




「はぁ……そんなに私とマナさんを離ればなれにしたいんですかね。神様は」


 一度会ったことあるあの女神でも何でもいいが、物申させて頂きたい。




「こんなに試練が多いと、余計に燃えるだけですよ、まったく。……どちらかと言うと萌える方ですけど」






掲示板とキャラ紹介で第3章は終了です。



▼▼補足▼▼

本編で説明が出てくるのか微妙なので珍しく解説しますが、【奈落行キ列車】は{奈落への切符}という遺物のスキルです。昔は死刑より重い罰として使われていました。宝物庫に残っていたからあったという訳です。ちなみに、あれが現存する最後の一つでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ