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【Alternative World Online】翠の天使、VR世界で徘徊中【ミドリ】  作者: 御神酒
第3章『連合国八鏡』

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#72 裏取りは戦の基本です




「ふふふふっ♪」




[逆立ちエビフライ::興奮します]

[死体蹴りされたい::たすかる]

[あ::病 (や)ミドリ? 闇ドリ?]

[壁::新たな性癖の扉が見えました]



 血。

 辺り一面に広がる血。

 白い軍服にたっぷりと(かぶ)った紅い血。



「もっとです!」



 途中まで馬車で運ばれ、途中から【飛翔】で裏から逃げようとしていた八鏡の仲間を見つけて叩いている。私たちが来た方向と真逆の方角に公国があるので、そちら側を潰しておこうという魂胆だ。




 (たかぶ)っているのはご愛嬌。



「化け物がぁ! 【ダブルスラッシュ】!」


「よっ、そいっ」



 迫る攻撃を【天眼】で読んで回避して、2号で斬る。この場で息をしていた敵はこれで全滅だ。


 その数およそ50人。レベルが上がってウハウハだ。



「ステータスオープン」



 ########


プレイヤーネーム:ミドリ

種族:天使

職業:魔法剣士(火)

レベル:43

状態:破壊衝動

特性:天然・中立

HP:8600

MP:2150


称号:異界人初の天使・運命の掌握者・理外の存在・格上殺し・魅入られし者・喪った者・■■■の親友・敗北を拒む者・元G狂信者・対面者・破壊神の興味



スキル

U:ギャンブル・職業神(?)の寵愛・破壊神の刻印


R:飛翔7・神聖魔術4・縮地4・天運・天眼・天使の追悼・不退転の覚悟・祀りの花弁()


N:体捌き9・走術4



職業スキル:火魔法6・剣術3



 ########



スキル

【火魔法】ランク:ノーマル レベル:6

火を操る魔法。


〖使用可能な魔法〗

・プチファイヤ

・ファイヤ

・ファイヤボール

・ファイヤウェーブ

・プチファイヤボム

・ファイヤランス



魔法

〖ファイヤウェーブ〗

小規模な火の波を放つ。

詠唱:「火よ波打て」

消費MP:15


魔法

〖プチファイヤボム〗

火の玉を打ち出し、命中時に小規模の爆発を起こす。

詠唱:「火よ小さく爆ぜろ」

消費MP:10


魔法

〖ファイヤランス〗

貫通力の高い火の槍を飛ばす。

詠唱:「火の槍よ」

消費MP:15




スキル

【剣術】ランク:ノーマル レベル:3

剣の扱いが上手になる。

アーツ:スラッシュ・パリィ



アーツ

【パリィ】

タイミングよく当てると攻撃を弾ける。力で負けていると失敗する。

CT:120秒


アーツ

【スラスト】

突きを放つ。

CT:120秒




スキル

【破壊神の刻印】ランク:ユニーク

破壊神の興味を引いた者に刻まれる危険な印。

その手を取るべきか、今一度よく考えろ。



 ########




 たぶん今回のとトゥリさんの件も含めての成長だけど、かなりグンと上がっている。ついでに今の私は正気ではないみたいだ。



「まあ、正常な人間なんてそうそういませんしね。誰でもどこかしら狂ってるものです」




[カレン::そうだね]

[燻製肉::急にどした?]

[筋肉::わかる]



 そんな風に言い訳をしていると、河の中から人が這い出てきた。



「こんにちはー」

「さっさと運べじょ! 見つからないうちに、早くするじょ!」



 独特な語尾だ。変な人。



 ん? 見た目はハゲたおじさん。濡れてはいるものの、身なりは整っている……もしかして?



「貴方が八鏡の?」


「そうに決まっているじょ! 他のやつらはどこにいるんだじょ? ちゃんと働いてるんだろうなじょ?」



 この人の退路を守るためにさっきまで居た人達がここに立っていたのか。こんなのを守るために。



「荷物は無いんですか?」


「高値で売れるのは既に運ばせたじょ。そんなことより、ボクっちを早く運べじょ!」



 一人称まで痛い人だ。

 話しながら手を差し伸べる。



「その高値の商品って何です?」

「決まってるじょ。奴隷だじょ」



「へぇ、【スラッシュ】」

「ぇ……ぎゃあああ!?」



 私の手を取ろうとしたところで、腰から剣を抜いて腕を斬り落とす。


 腕が斬られるのは痛いだろうけど、八鏡とかいう肩書きの割に痛みに慣れていないようだ。きっと今まではさっきの傭兵たちに守られて生き抜いてきたのだろう。



「残念、私は傭兵ではありません。ちゃんと仲間の顔ぐらい覚えてあげればよかったものを」


「くっ、許さんじょ!」



 倒れながらも、私に左手を向ける。

 いや、指輪を向けている。



「くらえ、じょ!」



 指輪が光り、数多の矢が私目掛けて飛んで来る。あれも魔道具なのだろうか?



「【吸魔】」



 興味が沸きながらも、余裕で全て吸収して防ぐ。更に、後ろ足に力を込め――


「【縮地】」



 距離を縮めて相手の左腕を斬る。



「がぁあ゛あぁ!?」


「貴方も先程の傭兵さん達と同じ、どうしようもない悪人で良かったです。善人を(むご)()っちゃうと映像として残っちゃいますからね」



「ひぃっ、ま、待ってくれじょ! かか、かっこいい奴隷をいくらでもくれてやるから! 好きなようにしていいから、命だけは……っ!」



 私の今の心理状態がそう見せているのか、誰でもかは分からないが、醜く命乞いをする豚にしか見えない。


 目の前の豚は、奴隷という形で多くの人々に裏で恐怖を、制限を強いたのだろう。そしてその苦しい生活の上に寝転がって良いワインでも飲んでいたのだろう。


 ――コワセ。



「まだ殺したりしませんよ」

「そ、そうか……何がいい? 獣人でもいいし、人間でもいい。他にも色んな種族を――」



「楽しみは、ゆっくりしましょう。まずは足の指からです」

「え?」



 生憎(あいにく)、私には他者を対象とする性欲が無い。いや、正確にはそういうことを考える前に現実に引き止められるのだ。


 枯れてるわけでも恋がしたくないわけでもない。一人で妄想だってするし、一人でそういうことも。でも、他者が介入すると一瞬で現実に引き戻される。夢を見させてはくれない。



 それは自由なこの世界でも同じ。もうそういう癖が染み付いているのだろう。



「残念ながら私に色仕掛けは通じませんよ。思春期のパーリーピーポーだったらナイトフィーバーでハッスルしていたかもしれませんが、私は現実主義なのでそういうのはちょっと……」


「な、なら金銀財宝でもいいじょ! 何だって持ってるじょ!」



「いや、殺してから奪えば済む話じゃないですか。貴方を生かすメリットはありませんよね?」


「い、いや、ボクっちなら欲しい物を何だって――」



 この人は――こいつは、無価値だ。



「マナさんの安全、それを保証出来る世界、優しくて誰も裏切らない平和な世界、そしてずっと皆と一緒にいられる場所」

「は?」


「私が欲しいものです。無理でしょう? だって貴方には、何も無いんですから」

「そんなことは――」



「貴方が私に提供できるのは、一時(いっとき)の安寧、快楽です」

「ひぃ、や、やめ」



 恐怖に染まった顔を踏みながら、剣を下に向ける。宣言通りだとつまんないから、最初は太ももの筋肉から切っていこうかな。



「貴方は幸せ者ですよ。だって――」

「やめぇっ……!」



「――天使に看取られるんですから」



 翼と光輪を出し、おもむろに剣で斬りつけた。





 ◇ ◇ ◇ ◇




「もうお昼ですか、今朝と比べたらさっきのあれで大分マシになりました」





[天麩羅::gkbr]

[蜂蜜過激派切り込み隊長::お、おう]

[ベルルル::サイコみがすごひ]

[コラコーラ::さっきのアレ(地獄絵図)]

[あ::グロフィルター入れたら一面キラキラになったw]

[恐怖(概念)::ファンになりました]



 残党が潜んでいないかの最終確認を一人行っている。殲滅するなら、最後までしっかりね。



「おっきい橋ですねー」



 何があったのか分からないが、半壊していて隠れそうな場所が相当ある。転落しても飛べばいいしちゃんと隅々まで潰していこう。



 瓦礫(がれき)をどかしたり、橋の裏を飛んで見に行ったりしていると、橋の下から話し声が聞こえてきた。

 翼を出して、寄ってみる。



「――から!」

「またまた〜、そんなこと言って。照れないでいいんですわよ?」



 そこには競泳水着を着たサイレンさんと、金髪の女性が居た。女性の透明なティアラが日光を反射している。


 パナセアさんよりもフワフワした髪型。彼女が連れ去ったお姫様なんだろうか?



「こんにちはー」



 濡れないように大きな瓦礫に腰を掛けながら話しかける。

 二人は空から現れたのに驚いたのか、言い合いを止めてこちらを凝視する。



「ミドリと申します。サイレンさん、その方はもしかして?」


「え、あ、うん。人魚姫のムーカさん」


「ごきけんよう。ムーカですわ。サイレン様のお仲間さんかしら?」


「そうです」



 本物のお嬢様言葉だ。見た目がそれっぽいからちゃんとお上品。



「言いにくいのですが――」

「はい、何ですか?」

「ちょい待ち。何言うつもりで――」



「――私達、結婚しますの! サイレン様は渡しませんわよ!」


「おめでとうございます。謹んで差し上げますよ」



「しないから! それにミドっさんは即答やめい!」



 おめでたいから祝っただけなのに。それにしても声の張り方というか、荒らげ方が似ている。結構この二人はお似合いだと思うんだけどねー。


 ――コワセ。


「あら、残念ですわ」とか「ややこしくしないで!」とかしている微笑ましいやりとりに、少し率直な疑問を投げてみる。



「実際のところ、サイレンさんはどうします? こちらも色々終わりましたし、そろそろ移動かなとは思いますけど」


「え? もちろんついてくけど……」

「そんな!? 離れ離れは嫌ですわ!」




 また言い合いに発展しそうなので、先に戻ろうかな。足元に気を付けて立ち上がる。



「では、お先に失礼します。私たちと一緒に来るのなら泳いであちらの兵士さん達の所まで行ってくださいね。話は通しておきますので」


「え、ここからあそこまでまた泳ぐん? もうヘトヘトなんだけど……」




「視聴者さん達からのヘイトを和らげるためですよ。もうプンプンですよー」


「え゛」




 会話しながらマナさんの心配もしていたから適当に理由をこじつける。


 ――シアワセナンテ、コワシテシマエ。


「では。【飛翔】」

「連れて――」



 何か文句を垂れているのを無視して飛び去る。

 何とかいつも通りを装ったつもりだけど、あまり隠せた自信は無い。



 瞬間、あの二人がボロボロの姿で伏せている様子が映る。あのお姫様が息絶えて、サイレンさんがこちらを睨んでいる。手に持っている三叉槍(トライデント)が蒼く輝いている。



「うっ……」



 見知らぬ光景から、吐き気で現実に引き戻される。流石にここで吐くのは嫌だかもう少し我慢。


 先程見たような蒼が、眼下に広がっていた。




「サイレンさん、金髪が好きなんですかねー」



[芋けんぴ::大丈夫?]

[カレン::具合悪いなら休んでね]

[風船パル〜ん::人魚好きの可能性も]

[カリカリカリー::金髪好きならパナさんにいくのでは?]

[階段::ラメみたいなキラキラしてたもんね]

[紅の園::金髪もいいよね〜]




 心配の声をかき消すために、匂わせ発言で誤魔化す。別にパナセアさんのことなんて一言も言ってないしセーフだろう。


 というか、今もパナセアさんのことを好きなんだろうか? あの人魚さんに行ってる可能性もありそうだ。


 女心は秋の空って言うし。




「……サイレンさんはおとこの()でしたっけ?」





[キオユッチ::どっちの意味や……?]

[蜂蜜穏健派下っ端::男の娘って言った?]

[セナ::急にどうしたの?]

[枝豆::そうだっけ?]




 みんな疑問形で、みんな首を傾げている。

 そんな平和な空中散歩の中、私は一人、明らかに異常な黒い感情をひた隠していた。




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