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【Alternative World Online】翠の天使、VR世界で徘徊中【ミドリ】  作者: 御神酒
第3章『連合国八鏡』

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#70 コワスモノ



 白い白い、何も無い空間。


 何もできずに、漂うだけの場所。


 少しずつ微かに残った自我すら消えそうになっている。




「どうでもいい……」



 私にはもう、何も無い。


 ――マナさんはどうする?



 諦める。私にできることなんて無かったんだ。この世界では力ある者が全て。そもそも勝てる相手じゃなかった。



 ――本当に?



 何に対してか分からない。全部全部本当のことだよ。



 ――勝てない?



 勝てない。()()私では絶対に。……お前は誰?



 ――私は貴方。そんなことより、分かっているじゃない。ならやることは一つでしょう?



 気味が悪い。私は私で、貴方も私。別の私のはずなのに、同じ私だと思える。白が上書きされていく。



 ――私は常に別の私に成り得る。さあ、口にしなさい。そうすればきっと、私にはならなくて済む。



 悲しい。憎い。全てがどうでもいい。

 そんな感情が溢れてくる。大切な人が腕の中で眠る、知らない記憶が映る。



 ――早く!



「【不退転の覚悟】」




 ――それでいい。あとは、()()()()()






『「可能性」をステータスに反映します』『「コワスモノ」の可能性の反映に成功しました』




 ◆ ◆ ◆ ◆




 見知らぬ力が私を守っている。それを少し広げると、私を覆っていた白い虹と光(ゴミ)を壊してくれた。




「な!? それは一体……?」


「ステータスオープン」



 (わめ)く敵を無視して確認する。



 ########



プレイヤーネーム:ミドリ

種族:大天使(仮)

レベル:???

状態:破壊衝動

特性:世界的善

HP:?????

MP:?????


称号:異界人初の天使・運命の掌握者・理外の存在・格上殺し・魅入られし者・喪った者・■■■の親友・敗北を拒む者・元G狂信者・離反者・破壊神の使徒・壊す者



スキル

U:ギャンブル・破壊力・破滅世界


R:飛翔10・縮地10・思考超加速10・不退転の覚悟(使用不可)


N:体捌き10・走術10



########


スキル

破壊力はかいりき】ランク:ユニーク

常時発動。万物を破壊する特殊な力を操る。




スキル

【破滅世界】ランク:ユニーク

見境なく全てを壊す世界を創り出す。



スキル

【思考超加速】ランク:レア レベル:10

尋常ではない速度で思考することができる。脳の負荷には心配ご無用です。



 ########



 何だか懐かしい気持ちがあるのを不思議に思いながら、床に転がっている私の剣を拾う。



「不気味な力でも、漂白できないものは無い。はあっ!」


「……」




 白い大きな玉が繰り出されるが、その玉は手の表面にある【破壊力】によって破壊される。

 手をかざすだけで破壊できるみたいだ。




「馬鹿な!?」

「【縮地】」



 驚愕しているのをよそに、今までより遥かに速い速度で距離を詰め、【破壊力】を纏わせた2号を振るう。


 黒に近い紫のエフェクトを撒き散らしながら、首に迫る。



「【ファストガード】!」



 すんでのところで盾で防がれる。

 が、


「なにッ!? クッ……!」



 盾ごと斬り裂く。

 少し減速したのもあって躱されてしまった。


 回転の勢いのまま、左足の回し蹴りで追撃を仕掛ける。



「グァハッ……」



 鎧を壊して脇腹を(えぐ)る。かなりの威力で、紙のように飛んでいく。


 何だか拍子抜けだ。数分前まではあんなに実力差があったというのに、今では負けるビジョンが思い浮かばない。



「トドメ」



【破壊力】を敵の真似をして大きな球を作って放つ。相当大きくなってしまったけど、とりあえず放った。

 天井が少しずつ消し飛んでいき、瓦礫が降ってくる。



「【白虹(はっこう)】!」



 先程のスキルをぶつけて相殺する算段か。全く問題は無い。


 軽く跳躍し、壁を蹴って跳び、側面から叩きに行く。更に纏わす【破壊力】を増やし、大剣のリーチで斬る。



「【慈愛の雪崩(なだれ)】!」



 光の奔流(ほんりゅう)が私を押し流そうとする。


 まあ【破壊力】でガン無視するけど。



「もらった」



 今度こそ捉え――



「【大噴射ー】!」


「チッ」



 攻撃を中断し、真下から伸びる触手から壁を走り、跳び回って回避し続ける。


 声は例の双子が合わさったようなものだが、見た目は巨大かスライムだ。液状の物、しかもあれ程のサイズとなると私でも(いささ)か分が悪い。


【破壊力】で削ってもキリがないから。かといって【破滅世界】を使ったら他の人達も巻き込みかねない。

 すっかり忘れていたが、上の階にいる彼女は無事だろうか? まあいいか。



 マナさんが心配だから早く倒してしまいたいが、あの触手が邪魔だ。触れてでも突破するべきだろうか? 


 ……この【破壊力】が有限だった場合、詰みかねないから微妙だ。


 だとしたらやることは一つ。



「【飛翔】」



 急いで強い方から処理して、マナさんを回収してから相性の悪い方から逃げればいい。


 元の私だったら不可能だった、針の糸を通すような精密飛行で攻撃の隙間を掻い潜っていく。


 大天使同士、剣を構えて全力で斬りにいく。



 背後から触手が迫るのが視界の端に映るが、甘んじて受けよう。



「【凍結の魔眼】!」



 ……予想外の乱入者に助けられた。私に迫っていた触手は凍りつき、ボロボロと崩れる。



「はあ゛あああぁ!」


「死――」



 お互いの剣が体に触れる瞬間、迷いが生じる。



 本当に殺していいのか。何のためにここに来たのか。今援護した人物を生かした理由は何だったのか。


 思い返し、頭を働かせる。


 圧倒的な破壊の力によって放棄していた思考が戻ってくる。破壊衝動からコントローラーを奪い返す。



 長い(なが)い一瞬が終わり、結論を行動で示す。



「クッ……」

「……」




 敵――いや、トゥリさんが(うめ)き声をこぼして地面に墜落していく。



 そして私も。



【破壊力】無しでの攻撃に切り替えたので、深い傷にまでは至っていないだろう。私もトゥリさんの剣を壊して防いだはずだったんだけど……何故か痛い。




 違う。これは外傷じゃない。内側から壊れるような痛みだ。


 地面に衝突しても、その痛みは止むことはない。必死に()って階段へ向かう。


 ――パキッと右足が壊れた。



「っあ゛ぁぁ!!!」



 事故の時よりずっと痛い。痛いなんてレベルじゃない。



「はぁはぁ、【スラ――」

「待ってぇえぇ!」



 私にとどめを刺そうとしたトゥリさんを、クリスさんが間に入って止める。



「……どいてくれ、もう後戻りはできないんだ」

「そんな事ない! 迷惑はいっぱいかけたけど、まだ引き返せるよぉ!」



 ――左手が壊れた。


「うぁっだぃ……!」



「もう、遅いんだ。白の魔力は心臓の横に定着している。直に私も侵食されて死ぬ。だからその前に平和な世界を――」

「バカァァ!」



 乾いた音が聞こえた。頬でも張ったのだろう。



「平和な世界にお父さんが居ないなら意味無いじゃないぃ! 私は、平和な世界なんていらない。家族で笑い合えるのなら、どんな怖い世界でも乗り越えれるからぁ! だから……居なくならないでよぉ…………」

「親、居なくなるの? やだー!」


「それは……」



 ――左足が壊れた。

「たぁぬぃぎゅっ……」



 間に合わない。このペースだと階段に着くことすらできずに死ぬ。



「トゥリさん……こっち向いてください」


「はい? ……は?」



 最後に小さな破壊の力でトゥリさんの胸を貫いて、異常な痛みを伴って、壊れて――死んだ。



◇ ◇ ◇ ◇



 議会の近くにリスポーン。死ねばリセットっていうのはプレイヤーだからこそできる特権だ。ありがたい……っ!?


「カハッ……」



 少し麻痺してきて気付くのが遅れた。まだ変わらず痛みもあり、体の中からゆっくり壊れていっている。



 流石に往来で血反吐を撒き散らす訳にもいかないので、壁に寄りかかりながら、口を押さえて路地裏へ入る。



「っあ゛あぁあ!」



 ()けるような痛みが不定期的に襲いかかってくる。口から……いや、毛穴やら耳やら色んな場所から血がこぼれる。


 全身がだるくなってきた。



「お疲れ☆」



 憎たらしい声が聞こえた。



「ぐっ……マナ、さんが…………」


「彼女は大丈夫☆ 回収しておくから安心して眠るといいよ☆」



 シフさんが言ってるのはログアウトのことだろう。抜け殻になった体をこの人に任せちゃいけない気もするけど、贅沢は言っていられない。



「最後に……いつから、気付いてた……んですか」



 ログアウトボタンに、震える手を伸ばす。



「さぁて、なんのことだかね〜☆」



「はぁ……」



 私が死ぬタイミングに合わせてここに居て、知っているかのように話している時点でとぼけても無駄なのに。


 追及する余裕はなく、(にら)みながらログアウトする。




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