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【Alternative World Online】翠の天使、VR世界で徘徊中【ミドリ】  作者: 御神酒
第3章『連合国八鏡』

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#61 馬車に揺られてパシャパシャします



「貴殿らが帝国の使者、ということでよろしいでしょうか?」


「そうだよ☆ わたしが代表のシフさ☆」

「そうですか……改めまして、私は連合国の八鏡という大役を任されました、トゥリ・イークスと申します」



 そう言って胸に手を当てるのは、鋼色の甲冑に身を包んだ、堅苦しさが溢れ出ている騎士。黒茶色の髪をオールバックにセットしていて、目にかかる二本の触手が揺れている。

 見た目から年齢は想像がつかないが、その立ち振る舞いは老練の騎士と言われても不思議ではない程隙が無い。



「馬車を用意しておりますので、ご案内します」

「任せるよ☆」


 トゥリさんの真面目そうな雰囲気につられて、私たちは無言で二人のやりとりを眺めていた。

 短いやりとりの後、後ろに停めてあった馬車に向かって歩いていく。


「私たちも行きましょうか」


「何か真面目そうな人っすね」

「とっつきにくそうではあるよねー」

「まあ、ずっと彼と行動を共にするわけでも無いだろうから心配は無用じゃないかな」

 〈どらごん〉



 見た目からして騎士っぽいからそんなに関わらないしね。


「あ、あの……」


 皆が馬車に向かう中、クリスさんが一人言いにくそうに手を上げていた。他の皆は気付いていないようので、私が対応する。


「どうかしました?」

「部外者のわ、あたしが本当にご一緒して良いのかな……って」


 至極当然、超正論だ。


「シフさんは何か言ってませんでした?」

「是非一緒に来てくれ、って言ってましたぁ…………」


 うわ、胡散臭すぎる。

 一応代表であるシフさんから頼まれたけど、どう考えても同行するのはおかしいから躊躇(ちゅうちょ)しているってところか。



「あの人がそう言ったなら良いと思いますよ。胡散臭い人ですけど、多分きっとおそらく、根は良い人ですから」

「わ、わかりましたぁ」


 決心した様子で、馬車に向かって歩き出す。


「はぁ……」


 ああは言ったものの、シフさんの考えは全く読めない。何かを企んでるようにも見えるし、ただの愉快犯にも思えるし、全肯定botにも思える。私たちの害になるようなことはしないだろうけどね。メリットが無いし。


「ん?」


 私も皆の元へ行こうとしたが、とある物体を見つけてしまった。ツヤツヤしたそのボディ、見覚えがある。


 スライムだ。


 目がどこにあるかは分からないけど、目がバッチリ合っている気がする。スライムには、最低な死に方をした嫌な思い出があるので頭が痛い。


「お互い今回は無視の方向で」


 その言葉が通じたのか、一度ぷるんと太陽の光を反射させてからどこかへ去った。


 それを見送ってから、待たせているので私も足早に立ち去る。




 ◇ ◇ ◇ ◇



 豪華な馬車に揺らされる。


 馬車は全部で三台。私、マナさん、シフさんの三人と、サイレンさん、パナセアさん、クリスさんの三人で別々に乗っている。先導している馬車にはトゥリさんが。

 おそらく使者の人数が予定より少なかったのだろう。六人は入る馬車で広々と使える。



[セナ::トゥリさんが目に焼きついて離れない]

[天々::トゥ×シフもあり]

[あ::腐女子湧いてて草]

[ゴリッラ::イケメン撲滅委員会はここですか]

[燻製肉::┌(┌^o^)┐]

[らびゅー::クール系騎士は至高]

[六王子::強そう(小並感)]



 配信していたのを思い出してコメントを見てみると、変なことになっていた。面白いし放置しておこう。



「おー! 凄い綺麗っすよ!」


 マナさんが小窓を覗き込んではしゃいでいる。私も反対側の小窓を覗いていみる。



「ぉぉ……」



 あまりの幻想的な街並みに、思わず(うな)ってしまった。


 道路脇の小さな川、どういう仕組みか空に張り巡らされた水の道。まるで水中に閉じ込められたような――いや、ここの人達は言葉通り水の中で、水と共に生きているのだろう。


 これぞ、ファンタジー世界。



「少し大事な話をしてもいいかな☆」

「……何ですか」


 もう少しこの幻想的な空気を味わっていたかったのに水を差されたので、ぶっきらぼうに返答してしまった。


「そんなに怖い顔しないでよ☆ ちょっとした情報の共有をしようとしただけさ☆」

「はあ、どうぞ」



 椅子に深く腰を掛け、対面のシフさんと目を合わせる。私の隣のマナさんも空気を察したのか同じようにシフさんの方を無言で見ている。三者面談かな?



「まずは――ここが一般的に“連合国”と呼ばれる由縁(ゆえん)から話そうか☆」


 黙って続きを促す。

 肩越しに伝わる眠気を感じ取りながら、長話になりそうで私も欠伸(あくび)を噛み締める。



「ほんの10数年前までは、八カ国の小国が隣接している奮戦地域だったんだ☆ だけど、ある日二人の少女達が革命まがいのことをやってのけ、“連合国議会”を設立したんだよ☆ 王国、帝国、旧聖王国への侵攻を掲げてね☆ それから色々あった後、今のような形になって――――」


 肩に寄りかかるマナさんの頭を私の膝に移動させ、底がすり減ってきている靴を脱がせて楽な姿勢で寝させる。


「ミドリしゃあん……」


 はい、ミドリしゃんです。

 心の中で返事をしながら、スクショ祭り。


 うおおおおぉ! 連写だあああ!


「――という感じで連合国議会はここら辺一帯の国々のまとめ役兼、他国との外交の顔になったというわけさ☆ 基本的に連合国という区分で呼ばれるのが多く……聞いてる?」


「お構いなく」


 国の成り立ちなんて過ぎ去ったこと。今はこの芸術を私の網膜と脳とアルバムに永久保存しなければいけない。何度も観察し直してバックアップも忘れずに。



 そんな儀式と言っても過言ではない神聖な撮影会(スクショfes)をしていると、次第に馬車の速度が緩まっていくのが分かる。直に目的地に到着するのだろう。



「何にせよ、協力的に接してね☆」

「了解です」



 切り替えて真面目風に返答する。シフさんや視聴者さんたちには私が何をしていたかは分からないだろうから、話を聞いてたように毅然(きぜん)とね。


 しばらくの静寂の後、馬車が完全に止まった。


「大変お待たせいたしました。どうぞ」


 扉が開き、トゥリさんと一緒に乗っていた騎士のような人がマナさんを抱っこした私に手を差し伸べてくる。

 お迎えはトゥリさん一人だと無礼だからかな。その割には挨拶してないけど。


「結構です」


 その手は私の手をとる意味ではない。というのも、寝てるマナさんをお姫様抱っこして無理なのはすぐ分かるはずだから。


 つまり、マナさんを抱っこするということなんだろう。それだけは許すまじ。処すぞ。



「お、マナちゃん寝ちゃったんだ」

「格好も相まって随分と様になってるね」

「か、かわいぃ……」



 後ろから来ていた三人と合流。クリスさんはなかなか良い人だ。コンマ一秒くらいならマナさんへのお触りを許してあげなくもない。



「議長の元へご案内いたします」


 トゥリさんが一言声を掛けて大きな建物へ向かっていく。私たちもその(たくま)しい背中を追う。


 噴水にレンガ造りの大きな建物。何と言うかモダンチックで趣がある。このレンガの大きな建物が連合国議会の総本山なのかな?


 社会見学みたいな気持ちでキョロキョロしながら中に入っていく。


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