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【Alternative World Online】翠の天使、VR世界で徘徊中【ミドリ】  作者: 御神酒
第3章『連合国八鏡』

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#シフ・トリック#


 全員が寝静まった頃、高台で見張りをしながらシフは今日の出来事を思い返していた。



 ◆◆◆◆


 それはミドリ達が雷の災獣を見に行っていた時。

 シフは登山中のクリスと会っていた時間だ。


「ご一緒に、どうだい☆」

「え、いや、でも……」



「安心しておくれ☆ わたしは君たちの邪魔をするつもりは無いからね☆」

「っ!?」


 全てお見通しといった風に、笑みを浮かべて優しくキャンプ地へ案内していく。


 ◆◆◆◆



「はあ……あまり博打は好きではないのだがね☆ 下手したら――いや、これ以上考えるのは良くないか☆」


 シフにしては珍しく、真剣な表情で眉間に皺を寄せてそう(つぶや)く。空を仰いでいるが、その瞳が何を見ているかは、仮面で隠されている。


「それにしても、恵まれているね……☆ 良い保護者もいるみたいだし☆」



 ため息混じりに、マナとクリスが眠るテントに顔を向ける。


 シフが思い浮かべるのは、先程のパナセアとの密談。



 ◆◆◆◆


 他の人達が呑気に銭湯に入ってる時、シフはパナセアと情報戦紛いのことをしていた。


「君は何者なんだ?」

「藪から棒に、何かな☆」


 真剣なパナセアに、茶化して応じるシフ。



「……いや、種族はおおかた予想はつくからいい。何を企んでいる?」

「企んでるなんて、人聞きの悪い☆ わたしは今を精一杯生きてるだけだよ☆」


「そうは見えないな。何か、私達を手のひらで転がそうとしているように見える。会ったことは無いから分からないが、そちらの皇帝の差し金かな?」

「企んでないけど、もし企んでいたら彼女は無関係さ☆ あの子はそういう頭脳戦は苦手だからね☆ 正面からぶつかる子だよ☆」



 シフは、優しい声色で食い気味に否定する。その様は父親のそれに近い。



「質問を変えよう。あの眼帯の少女は何者なのか、知っているのだろう?」

「そうだね、知っているよ☆ ただの――」


「……」


 次の言葉を睨みつけながら待つパナセア。


「見放された悲しい騎士さ☆」



 告げられたのが予想外の内容だったのか、パナセアは目を見張る。


「…………何とも要領を得ない回答だ。やはり君は信用に値しないな。あの子たちが君に気を許しても、彼女たちを害するのであれば――――」

「?」


 腰から銃を引き抜いた。



「私が君を殺す」


「おー、怖い怖い☆」


 肩をすくめるシフを警戒しながら、睨むこと数秒、大気を熱するような雷の音を聞き、銃を仕舞う。


「はあ……今度は何なんだ」

「これはわたしも知らないよ☆」


 呆れるパナセアに、楽しそうに笑うシフ。一見似た者同士だが、その思考回路には大きな違いがあるのが窺える。


 ◆◆◆◆


 仲間思いな大人のことを愉快そうに思い浮かべながら、シフは目を瞑った。


 深い深い闇の中、別の何かを動かす。果たしてどちらが本来のシフかはハッキリとしないが、闇の中のそれはどこか退屈そうに何かを待ちわびている。












「あ、シフさん。瞑想ですか? 眠るならテントに行ってはどうです?」

「ん、ああ、もう朝かい☆ わたしは眠る必要はないから心配は無用だよ☆」



 朝日が昇ってすぐ、ミドリが高台でシフと遭遇した。


「随分と早いね☆」

「そうですねー、珍しく目が覚めちゃいまして」


 伸びをしながら応えるミドリに笑いかけながら、提案をする。



「暇ならあの鶏の雷を避ける練習をしておくといいよ☆ 寝てても出ているから練習し放題だし☆」


「そんなサンドバッグみたいな……。まぁ確かにその通りでしょうし、いってきまーす」

「うんうん☆ 気をつけてねー☆」


 背を向けたミドリを見て、ハッと何かを思い出したように語りかける。


「言い忘れてた☆」

「はい?」



 シフの朗らかな表情は、いつにも増して真剣で必死なものになっている。そして言い聞かせるようにゆっくりと告げる。


「まず、あの強力なスキルは無闇に使わない方が良い。確か不退転の覚悟、だったか。あれはデメリットもあるし、使い所を間違えると大変なことになる」


「デメリット……?」


 自分の口調が乱れていることに気付いたシフは、いつも通りを装って続ける。



「そのあの大会で見ただけでも、負けた時にレベルが下がっていたよ☆ あんな戦いを繰り広げたのに大して上がっていなかったよね☆」

「……確かにマツさんは圧倒的に強かったから、もう少し上がっていてもおかしくはないですけど」


「そう☆ あと、渡したメモ用紙だよ☆ ()()になったら、絶対取り出してね☆ それだけ☆」

「はい?」



「ほらほら、行った行った☆ これ以上は何も言わないよー☆」



 ミドリはそのふざけた調子のシフを見て、諦めて雷の災獣の寝床へ向かっていく。シフはその様子を薄っぺらい笑顔で見届ける。







「君に全てがかかっているよ☆ 翡翠の天使の、後継者さん☆」


 その(つぶや)きは、朝の寒い空気に溶けて消えていく――


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