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【Alternative World Online】翠の天使、VR世界で徘徊中【ミドリ】  作者: 御神酒
第2章『過去からのバトン』

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#45【AWO】本戦です!【オデッセイ】



 見慣れた天井。

 それはそうだ、自宅の自室なのだから。

 眠い〜。



「ん?」



 今、一瞬足が動いた気がする。

 事故で長年動かなくなった足が。



「よいっ! ふんっ!」



 動かない。やっぱり気のせいだったのかな?

 ま、いっか。少しずつ治ってきてるのだろう。その要因がAWOなのかは分からないけど。



 ◇ ◇ ◇ ◇




 ログイーン。


「んむっ……」


 顔にマナさんが乗っている。軽いのでソッと持ち上げ、お姫様抱っこで1階に下りる。床に転がっていたどらごんもついて来ている。



「おはようございます」

「おはよう」



 食堂で朝食をとっていたのはパナセアさんだけ。

 サイレンさんはいつも早いのに珍しい。……さては二人きりが気まずくて逃げた?



「サイレンさんはまだ起きてないんですか?」

「ん? あー、何か試合前だから体を温めるためにランニングしてくるって出てったのさ」


「ストイックですねー」

「だね」



 本音はどうやら。

 まだ(うな)っているマナさんを椅子に座らせ、私もその横の席に着く。ちゃっかり定位置とばかり、どらごんがマナさんの頭によじ登っている。



「いただきます」

「いふぁふぁふっす〜」


 〈どらごん〉



 パナセアさんが用意してくれた朝食は、オムレツとゆで卵だ。卵しかない。

 美味しいからいいんだけどね。


 黙々と食べる私の横で、どらごんの(つた)による補助で口に入れていくマナさん。

 全自動食事摂取装置の完成だ〜。



「ミドリさ〜ん」

「どうぞ」



 手元の塩をゆで卵にかけてあげる。マナさんはオムレツそのまま、ゆで卵塩派だからね。



「今のは夫婦ポイント高めだなぁ……」


「「?」」



 パナセアさんの唐突な発言に、私たちは卵を咀嚼(そしゃく)しながら首を傾げる。



「要件を言わずにあんな連携は…………いや、何でもない」


「そうですか、ごちそうさまでした」

「ごちそうさまっすー、やっと目が覚めてきたっすよー」



 何となくパナセアさんが言いたいことは分かった。私とマナさんが阿吽(あうん)の呼吸だったから驚いたのだろう。


 ……何故夫婦という単語が出たのかは分からないけど。



「お! おはよー」

「おはようございます」

「おはようっすー」



 サイレンさんがタイミングよく帰ってきた。息切れしてないところから、ランニングは方便だったのが察せた。



「そろそろ行きましょうか」

「そうっすねー」

「あいあーい」

「ふむ、そうだね」



 昨日と同じように会場へ向かう。同時に配信の準備を進める。告知、配信開始っと。

 そして権限をパナセアさんに渡す。



「どうです?」

「OK、コメントが流れ始めたよ」



 コメントも全員に見えるように共有できれば便利なのになー。見えなくても、いつも通りの挨拶は欠かさない。



「おはようございます」

「おはよーっす」

「おはよー」

「朝からこんなに集まるのか……おはよう」



 今頃チャット欄では…………こう考えると、ある意味これはNTR(ネトラレ)なのでは?


 そんなくだらない事を考えていると、目の前に円形闘技場があった。



「頑張ってっす!」

「二人とも全力を出し切って来るといい」

 〈どらごん〉


「ありがとうございます。頑張ります」

「ぼくも負けないからね」



 激励を浴び、地下の控え室へ。

 冷たい足音だけが響いている。上からは何の意味も持たない騒ぎ声が聞こえる。



「当たるのかも分かりませんが、お互い健闘しましょう」

「もちろん。当たっても容赦しないから」


「こちらのセリフですよ」

「じゃーねー」


「ええ、また」



 控え室に入る。

 今回は個室で一人一部屋のようだ。


 部屋には椅子が一つ、出番になったらそこに立つように書かれている昇降機のようなものがある。

 特に指示はされていないが、座って待つ。



 こんなに手持ち無沙汰になるとは思っていなかった。何か暇つぶしできるものを持ってこればよかったなー。


 足を揺らしたり、ポケットから御守りを出して振り回したり、何も考えずに過ごす。

 そして、どれくらい経ったのか分からないが、アナウンスが響いた。



 〈レディース&ジェントルメン☆ 今日も実況をやらせていただきます、この国の宰相だよ☆〉


 〈解説の皇帝じゃ〉



 自己紹介が雑になってる。

 名乗りすらしなくなっちゃったよ。




 〈見事予選を勝ち抜いた猛者達の四人、優勝の栄光と賞金を手にするのは誰か☆ 気になる対戦カードは…………〉


 〈準決勝第1試合、マツVSケオルビじゃ!〉



 噂のマツさんか。

 当たるなら決勝だ。



「ふぅぅ〜」



 第1試合がその組み合わせなら、私とサイレンさんがどしょっぱなから戦うことになる。

 緊張してきた……。



「……負けない!」


 声を出すことで己を奮い立たせる。

 次の試合だから、ゆっくり作戦や対策を考えよう。当たらなかったら無駄だからと昨日考えなかったのが仇にならなくてよかった。




 〈二人は準備をして昇降機に乗っておくれ☆〉


 〈その間にルール説明じゃ。試合の勝敗は降参か、気絶などの戦闘続行不可な状態になったら決まる。予選のような場外負けなどは無いから注意じゃ〉


 〈そして、予選と同じように武器や小道具はあらかじめ見えるように出しておくこと☆〉


 〈うむ〉



 丁寧にルール説明をしてくれているのを聞き流しながら、サイレンさんの戦い方を振り返る。



 〈というわけで、まずは選手の紹介をしていこうかな☆ マツ選手は謎に包まれた今大会最速予選突破者だね☆ はっきり言ってその実力はずば抜けているね☆〉


 〈対するケオルビじゃが、まあ、今大会に限らず色んな武道大会で好成績を残しおる猛者じゃな。予選も難なく勝ち抜いて安定感のあるやつじゃ〉




 何やら選手紹介が始まったみたいだけど、まずは目先の一戦が大事。



 サイレンさんの武器は槍と魔術だ。歌で手を止めるという芸当も出来るかもしれないが、そうなったら槍の攻撃しかしてこない。


 槍では細かい傷ならともかく、気絶やそれに準ずるところまではいかないはず。殺しが無しの場だから。


 つまり、サイレンさん側としては仕留める時に必ず魔術を直撃させたいだろう。



 〈――さあ、両者揃った☆ 準決勝第1試合、はじめ☆〉



 始まったみたい。

 思考のペースを上げないと。



 とりあえず私ができるのは魔術を避けて、大剣でぶん殴るだけだ。危なくなったら空中に離脱。傷が増えたら回復。うん、勝てる。


 …………あれ?

 このルールだと、私ってかなり有利なのでは?




 〈決まった〜☆ まさに瞬殺☆ 準決勝第1試合の勝者は…………マツ選手だ☆〉


 〈うむ〉




「うそぉ……」


 思考の渦に割って入ってきたアナウンスを聞き、驚愕する。まだ始まって1分も経っていない。



「まずはサイレンさんに勝ってから気にしよう」



 今危惧しても意味は無い。

 結論を出さねば。


「ガンガン攻めて、タイミングよく退く。よし」



 作戦と言うにはお粗末にも程がある気もするが、私に出来ることはそれぐらいしかないからね。

 上から歓声が響いてくるのを耳で受けながら、深呼吸をする。



 〈さて、戻ったし、次の組み合わせいこうか☆〉

 〈じゃな〉



 ストレージから大剣を取り出し、部屋の端に設置されている昇降機に乗る。現実の荷物用のや、階段昇降機とは違って人が安全に乗れるような設計だ。


 予選の時より登場の仕方がオシャレになるのかな。


 緊張を誤魔化すために余所事を考えるも、少しずつ外の声が明瞭になり――――




「よしっ!」



 緊張がふと消え失せ、ワクワクの胸の高鳴りに突き動かされ、大剣を掲げて登場した。






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― 新着の感想 ―
[一言] 〈決まった〜☆ まさに瞬殺☆ 準決勝第1試合の勝者は…………マツ選手だ☆〉 メアとか、シロの仲間だろで、シロはメアの下についてるっぽくても相当に化け物な気がするし、マツは立場上はメアとかと…
[一言] 今頃チャット欄では…………こう考えると、ある意味これはNTRネトラレなのでは?  そんなくだらない事を考えていると、目の前に円形闘技場があった。 主人公のがパナセアにとかでのがな気が…
[一言] 何となくパナセアさんが言いたいことは分かった。私とマナさんが阿吽あうんの呼吸だったから驚いたのだろう。  ……何故夫婦という単語が出たのかは分からないけど。 夫婦の如きラブラブと…
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