#36 遺跡調査します
「もう居ない?」
「居ませんよ」
「大丈夫っす」
毛虫を取り除いて落ち着いた様子のサイレンさんは、もう疲れてしまったようだ。まったく、最近の若者は〜。
「上から見たら遺跡らしき場所見つけれたんだけど、もうすぐ着きそうだった」
「方向はどっちですか?」
「あっち」
三人で指差す方向を見る。
少し遊び心を出そっかな。
「ここから競争しましょう。早く着いた方が勝ちで、妨害無し、景品は無いですけどプライドの戦いということで」
「面白そうっす!」
「唐突だなぁ」
[階段::急に何か始まったな]
[枝豆::どういう思考回路……?]
[紅の園::急だね]
[らびゅー::追及されないように話題逸らした?]
「よーい、ドン!」
合図で同時に駆け出す。
草をかき分け、木々を避けて競争が始まる。
私がトップ、続いてサイレンさん、最後尾にマナさんだ。マナさんは盾を背負っているので、遅いのかもしれない。先に受け取って仕舞っておけば良かった。
まあ、もう始まっちゃったから仕方ないかな。
「はぁ……へぇ……ぜぇ…………」
私も体力はあまり無い方だけど、それ以上に後ろのサイレンさんの方が無いようだ。ここまで息切れの音が聞こえる。
ここでより突き放して、独走する。
遺跡らしき建設物が見えてきた。
このままいけば、私が1着だ。2位はサイレンさんが失速してれば変わってくるけど、どうだろうか。
「なあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「へ?」
すっ飛んできたマナさんが、私を抜かして遺跡の壁にぶつかって止まった。すっ飛んできたというのは、文字通り走るのではなく弾丸のように飛んできたのだ。
「いっちばーんっす!」
「どうやって……?」
「ん? 盾のアーツで大きい木でノックバックして飛んで来たっすよー」
「そんなことも出来るんですか……」
幼い時の方が自由な発想が出てくるとはよく言うが、こういうことなのか。私も固定観念に囚われずに生きたいものだ。
「ぜえ゛ぇ…………」
後方からやっとサイレンさんが到着した。
息も絶え絶えで、顔色まで悪い。少し無理をさせすぎたかもしれない。優しくしてあげようかな。
「少し休んでから遺跡に入りましょうか」
「そうっすねー」
「……ハァ……ドモ゛」
「念の為周囲の探索をしてきます」
「よろしくっす〜」
二人を休ませ、遺跡近辺を歩いてみる。
風が木の葉を揺らす音しか聞こえない。静かで落ち着ける。ん?
「他に何も聞こえない……?」
おかしい。あまりにも不自然だ。
普通、こんな良い天気の昼前なら、鳥の鳴き声が聞こえるのでは?
都会とかならともかく、森の近くで巣も沢山あるだろうし。
[病み病み病み病み::?]
[壁::どした?]
[味噌煮込みうどん::確かに聞こえんね]
[カレン::????]
視聴者の方は気づいていない様子だ。
まあ、画面越しだと勝手が違うから仕方ないかもだけど。
「嫌な予感がするので戻ります」
それだけ言って遺跡へ走る。
それほど離れていなかったからすぐに着いた。
「あ、おかえりっす〜」
「おかえり、もう息も整ったし行く?」
「ホッ……」
二人に何も無くて安堵の息が溢れる。
「?」
「どうかした?」
「いえ、何でもありません。行きましょう私、サイレンさん、マナさんの順で行きましょう。私はスキルである程度索敵ができますから、マナさんは後ろの警戒をお願いします」
「了解っす!」
「あいよー」
私を先頭に、サイレンさん、マナさんと続く。
通路は狭くて暗い。攻撃は【天眼】で避けることが出来るから、あまり心配はしていないけど、注意深く慎重に進む。
調査は戦闘が含まれず、一番上の階のマッピングをするだけだ。ちなみに真ん中のサイレンさんがマッピングしてくれている。頼りになる。
「止まってください」
赤い線が少し前の通路を横に塞いでいる。罠かな。近くの小さな石を拾って投げてみる。
銃声が鳴り響く。
「な!?」
「うわぁ……」
「かっこいいっす!」
石がそこを通った瞬間、弾幕が石を襲って蜂の巣になってしまった。
「銃なんてあるんですね……」
「世界観が本当に分からんね……」
「あれ欲しいっす!」
「危ないかもですし、触っちゃダメですよ?」
「! わ、分かってるっすよ」
興奮して触ろうとするマナさんを止め、諌める。赤い線はもう消えているが、何があるか分からないので下手に触らずにマッピングだけ済ませたい。
「進みますよ」
一声かけて再び足を進める。
緊張感が出てきたのか、黙りこくって硬質な足音だけが通路に響き渡る。
しばらくすると、何か広場のような場所が見えた。何も置いてない円形の部屋だ。
「どうします?」
「う〜ん…………」
「お宝あるかもっすよ!」
確かにありそうではあるけど、その分危険もあるかもしれない。どうしたものか……。
「ん?」
黄色の線が、中へ導いている。
「行きましょう」
「行くっす!」
「二人が行くならぼくもついて行くよ」
警戒しつつ、入る。
『侵入者確認、攻撃態勢に入ります。損耗率計算……F35を出動します』
無機質な機械音声が、部屋のどこかから出る。それと同時に床がせり上がり、岩の塊が現れた。
「ゴーレム、ですね」
「かっこいいっす!!」
「戦う?」
大きさはそこまで巨大ではないので、倒せそうではある。
「まあ、私たちが強くなったお披露目にピッタリじゃないですかね」
「そうっすね」
「それでも危なくなったら逃げよう」
「了解です」
「はーいっすー」
各々武器を取り出して構える。
「クラン〘オデッセイ〙、出撃です!」
「え?」
「……そういうの普通先に打ち合わせしない?」
[階段::草]
[セナ::カッコつかないね……]
[あ::草]
[天変地異::草]
[ヲタクの友::もはや揃わないのが様式美]
私は悪くないと思う。二人にアドリブ力が無いからいけない。出だしからグダグダしていると、ゴーレムに動きが。
「マナさん!」
ゴーレムの腕が上から襲いかかってくる。
「分かってるっすよ〜、【パリィ】っす!」
マナさんが正面から攻撃を弾く。
その隙に乗じて、私とサイレンさんでゴーレムに向かって駆け出す。
「はぁぁぁ!!!!」
私が先行してゴーレムの足を斬りつける。
斬撃としてではなかったが、その衝撃で体勢を崩す。
「【スラスト】」
左腕が打ち上がり、右足を地面につかせたゴーレムの顔面に、サイレンさんの槍が突き出される。
が、
「かった……」
表面であっさりと弾かれてしまった。
そして、ゴーレムの口が開く。
赤い線を伴って。
「サイレンさん!」
「?」
サイレンさんは空中で身動きが取れない上に、気付いていない様子だ。マナさんはここから少し距離があるから、援護には回れない。私しかできなさそうだ。
「【飛翔】、【パワースラッシュ】!」
高速でゴーレムの顔の横まで行き、アーツを使って薙ぎ払う。
ゴーレム自体に大した傷は与えられなかったが、私の攻撃の直後、口からレーザーが発射される。
「あっぶな……」
「一旦マナさんと合流して魔法でお願いします!」
「ぼくのは魔術だけど、了解」
マナさんのすぐ横をレーザーが通り過ぎていった。冷や汗がすごいであろうサイレンさんに切り替えの指示を出して、ゴーレムの正面に行き、自身で囮になる。物理攻撃があまり効いていないから、魔法改め、魔術で仕留める魂胆だ。
小さな虫を潰すように何度も私を叩こうと、大きな手が迫るがスルスルと回避。
ゴーレムの周りをチョロチョロ飛び回り、ゴーレム定番の核を探す。
「あれですかね」
背中の左の肩甲骨辺りに何か赤い石が付いている。何とかあれに攻撃を当てたいが、なかなか隙が無い。
弱点を狙って作戦を練っていると、ゴーレムがコマのように回転し始めた。小さな銃弾も撒き散らしながら。
「それはズルいでしょうに」
弱点を目視することもままならなくなった。
当てる云々のレベルではない。
どうしたものかと回転しながら振り回す腕を避けていると、マナさんの声が響く。
「準備いいみたいっすよ!」
準備が整ったようだ。一旦出来ることと相手の弱点を考えよう。
まずはサイレンさんの魔術は衝撃波による攻撃、マナさんは基本弾くのが得意。核は背中にあり、回転している。私は飛んだり大剣による攻撃がある。
「…………閃きました。マナさん! サイレンさん!」
「なんすか〜?」
「……」
ゴーレムを引きつけながら、最低限やってもらうことを伝える。
「そちらに連れていきますので、魔術と弾くやつで天井にまで吹き飛ばしてください!」
「分かったっす!」
「……」
サイレンさんの返事は無いが、詠唱し終わって溜めている状態で声は出せないのだろう。
「行きますよ!」
ゴーレムを連れて二人に近づける。
完全に接敵したところ、マナさんがゴーレムの銃の雨を防ぎつつ、弾く。
「【スーパーノックバック】っす!」
打ち出されたゴーレムは、回転しつつ宙を舞う。
そして――
「〖サウンドノック〗!」
追い打ちとばかりに、強力な衝撃波がゴーレムを更に吹き飛ばし、高い天井に激突させる。
――――ドンッ
天井にヒビが入る。
そして、ゴーレムが落下してくる。
天井に激突したおかげで、回転は止まっていて、背中が下になって無防備だ。
急いで落下地点に向かい地面に降り、狙いを定めて再び飛ぶ。大剣を前に突き出して。
「せやっ!」
大剣の先が核と思しき石を砕いたのを確認し、押し潰されないように背中から離脱。
ものすごい音を立てて落下したゴーレムは、バラバラになって動かなくなった。
「勝てたようですね」
「面倒な相手だったなー」
「マナもあのゴーレム欲しいっす」
[テキーラうまうま::ナイス!]
[カレン::つおい!]
[芋けんぴ::gg]
[紅の園::かっこよかった!]
[唐揚げ::つよつよやな]
[お神::転載!]
相変わらずこのお神さんは誤変換してるなぁと思いながら、皆と合流して一息つく。
突然、乾いた拍手の音が鼓膜を揺らす。
「いやいやー、素晴らしい連携を見せてもらったよ」
白衣を着た女性が、私たちの前に姿を現した。




