#警笛萌芽#
ミドリとマナが訓練しているのを横目に、サイレンはごついおじさんと相対している。そう、この屋敷の主のリヴェレルである。
「ぜぇ……おぇ…………」
サイレンは肩で息をして、横たわっている。
傍らには木製の槍が。
「うむ。やはり素質はある」
「はぁぁ……何、ですか?」
「儂のスキルを伝授しようと思う」
「はぁ、はぁ、おぇ……ス、キル?」
リヴェレルは、ポケットから可愛らしいステッキを取り出す。
「【愛の戦士化】」
「!?」
フリフリでピンクメインの衣装。
ただし、着ているのは筋肉ムキムキのおじさんだ。
「これを教えようと思う」
「え?」
絶句。
あまりにも酷い絵面で、言葉失っている。
「どうだ?」
「うーん…………」
サイレンは頭をこねくり回す。
今のままでは、直接的な戦闘能力に欠けている。
援護がメインでも十分だが、それではいつかお荷物になってしまう。
だが、見た目が嫌だ。
言いたいことを全て飲み込んで、蚊の鳴くような声で答える。
「…………お願い、します」
「そうか。では手を出してくれ」
「はい」
差し出した手に、手が重なる。
「ッ!?」
サイレンの手から、ゆっくりと白い小さな光が心臓に向かって動く。
到達すると、心臓がドクンドクンと通常時より激しく跳ねる。
「愛の芽?」
「その芽を大切に育み、自分なりの花を咲かせるんだ」
「なるほど? 今の段階では何も効果無さそうですね」
「励め」
かくして、職業:《アイドル》のサイレンは、新たに【愛の芽】というスキルを手に入れた。
まだ何も役に立たないスキルのようだが、いつかその芽が開く時が来るのか。
「よし。次は槍の訓練だ。まずは基本の突きのフォームから」
「お願いします!」
運動会系のノリで、槍の基本から教えてもらうサイレン。
強くなるための努力は惜しまない。どんな癖の強い戦い方も厭わない。
たとえ、おとこの娘と言われても、アイドルになっても、愛の何かになるとしても。
彼は、男の子なのだから。




