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【Alternative World Online】翠の天使、VR世界で徘徊中【ミドリ】  作者: 御神酒
第1章『王国内乱』

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#24 二つのミサンガ

 


 歩く。



 少し前までは賑やかだった、市場の通りを。





 歩く。



 無音の空間、私だけが世界に取り残されたように感じる。






 歩く。



 町の中心は爆心地なのか、地面の下から球状に吹き飛んでいて、跡形もない。





 歩く。



 あの宿屋に辿り着く。ここは爆心地ではなかったのか、木材の残骸が残っている。






「ミャンさん…………どこですか」



 笑顔で朝食を準備してくれた記憶が蘇る。




「ミュンちゃん、隠れてるのでしょう?」




 元気で、私のことを憧れていたらしいし、こんなところで死ぬなんてありえない。




「どこですか。無事なら……間抜けにも急いでここまで来た馬鹿な私を、殴ってくださいよ……」





 崩壊した宿の瓦礫をかき分ける。

 きっと隠れているだけだ。



 あんな善良で、いたいけな子たちが死ぬなんて、絶対ない。あってはならない。




「早く! 出てきてくださいよ!」




 疲労困憊(こんぱい)で、今にも倒れそうな体を総動員させ、瓦礫をどかしていく。




「こんな場所で隠れてたら、危ないんです……」




 だから、どうか――――





 生きて。










  「ぁ」











 瓦礫の隙間から腕が出ている。





 その手首には、私のとお揃いなミサンガが巻きついている。





「よかった! 今助けます。堪えてください」



 上の瓦礫をどかして、腕を引き抜く――――








「え」








 持ち上げることができたのは、その腕だけだった。




「大丈夫。近くに本体があるはず。腕ぐらいなら私が治します。待っていてください。すぐに見つけますから」





 思考がまとまらない。






 彼女の右手を、私の右手で握ったまま、片手で近くの瓦礫を投げ飛ばす。



 その手を離さないように、しっかりと握る。

 血が(したた)り落ちるのが何かのカウントダウンのように感じて、焦ってしまう。





 大丈夫。




 生きてる。






 ――無事なわけがない。目を逸らしてはいけない。






「大丈夫。私は、天使ですから」






 頭が回らない。

 自分が何を考えているのかさえ、理解できない。





 夜になった。

 視界は悪いが、気にしていられない。





 あと少し。

 あと少しで瓦礫の除去が完璧に終わる。










 ――――グチャリ



「!?」






 瓦礫を掴んだと思ったら、何か柔らかい物を掴んだ。



「そんな…………」




 暗くて見えなければ、ずっとよかった。

 ここでずっと活動したせいで、見えたくないものすら見えてしまう。




 肉塊。




 誰かの、肉塊だ。





 近くにそこそこ大きな何かがある。



 二人分の死体だ。

 積み重なっている。




 ――分かってしまった。




「ウソ」




 分からなければ、夢があったのに。

 希望が残っていたのに。




「嫌だ」




 顔が判別できてしまった。




「なんで」




 ミャンさんが、妹を守るように抱きしめている。



 だが、無情に、二人とも死んでいる。





「イヤ」




 上のミャンさんは、右半身が吹き飛んだのか、無い。

 下のミュンちゃんは、欠損は無い。ただ、熱で焼かれたのが分かる。




「女神ヘカテーよ、我が嘆願の声に応じ、愚かな者を癒したまえ、〖セイクリッドリカバリー〗、女神ヘカテーよ、我が嘆願の声に応じ、愚かな者を癒したまえ〖セイクリッドリカバリー〗――――」





 微塵(みじん)も治らない。

 既に者ではなく物だと告げられているように感じる。





 ――もう、手遅れだったのだ。






「いやあ゛あ゛あ゛あ゛あああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ!!?!!?!」





 …………が50%になりました』






 崩れ落ちる。

 泣き叫ぶ。

 頭を掻きむしる。

 それでも、右手は離さない。



 アナウンスが聞こえた気がするが、どうでもいい。




 色んな感情が湧き上がりながらも、頭だけは妙に冴えてくる。





 どこから間違えた? どうすれば助かった?


 直接的な原因はあのドゥーロとフーだろう。



 ミャンさんたちを連れ出していれば、助かった? ……そんなことはできないか。理由が無い。


 なら、フーが私を王都に仕向けた時にもっと疑えばよかった。あの時残っていれば!



 爆心地はおそらく地下水路だろう。

 調査班とかはギルドマスターの権限でどうにでもなる。なら私が直接そちらの警戒をすべきだった。




「どうすれば、よかったんだろう?」



 夜空を仰ぎながら、問いかける。

 私は天使だ。

 それなら、神が教えてくれてもいいじゃないか。


 夜空は、応えない。ただ、世界に蓋をしているだけだ。



 考えていないと、思い出してしまう。





 《ミドリさん!》


 《えへへ、呼んでみただけです》







 《ミドリさんっ!!》


 《もう! 挨拶ぐらいして行ってくださいよ。他のお客さんに聞いて慌てて来たんですよ!》



 《これ、持ってってください!》



 《ほら、お揃いですよ!》




 《やった〜! 大事にしてくださいね》








 《 絶対また来てくださいね!》






「来ましたよ」



 遅かったけれど。

 生きて、再会したかった。





 彼女の右手から、ミサンガを取り外す。腕が途中でちぎれていて、簡単に取れてしまった。



 私の右手に通す。

 狭くて入れにくいが、無理矢理つける。




 これで、私の右手には二つのミサンガがある状態になった。


 それにどんな意味があるのか、ただの意思表明か、それを決めるのは今後の私次第だろう。




「いつまでも、うじうじしててもいけませんし」




 《ミドリさんもお元気で〜!!》



 そう言っていたのだ。

 ならば、元気に生きなければ。

 心配して泣きながら平謝りされてしまう。





 息の絶えた死体二つを上から抱きしめ、翼で覆う。




「おやすみなさい」




 神聖な光が、私たちを包み込む。


 きっと、安心して逝けただろう。






 その姿勢のまま、ログアウトする。




「……ッ」



 親に心配されないように、静かに涙を流す。

 あそこではもしかしたらあの世から見ているかもしれないから、できるだけ安心させたかった。



 でも、私は普通の子供だ。





「…………ミサンガ、作ろ」






 涙を拭いながら、ミサンガの作り方を調べる。




 画面が見にくい。

 涙を流すのなんて、いつぶりだろうか?





 せき止められていたものがはち切れたように、止まらない。




 きっと、これからも、今溢れている涙も、感情も忘れて生きていくんだろう。





 でも、天に誓って、彼女たちのことだけは絶対に忘れない。






実はミュンちゃんもミサンガを持っていましたが、そちらは焼かれて残っていないようです。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] ゲームとしては、映像表現方法が高校生がやるとしては流石にアウトな気がする。
[一言] ・・・何も言うまい。
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