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###3 スーパー飛び級試験

 


「なん、ですと……?」

「なん、だと……?」

「なん、やって……?」



「……これ俺もノッた方がいいか?」

「……この人たちの悪ふざけは発作みたいなものだからノらなくていいと思うよ。というか不公平さんは冒険者登録してないでしょ」

「ヤキサバうまうまなのだぞ」


 昼下がり、孤児院でぐうたらしてから町で散策して、道中冒険者ギルドがあったのでたまにはと寄ってみたらこうなった。

 私とパナセアさんとコガネさんの悪ふざけも今回は許してほしい。割と本気で驚いているのだ。

 だって――


「ですから、皆さんのランクをSにさせて頂きたいと――」


 そう、まさかまさかの飛び級のランクアップを持ちかけられたのだ。しかも1番上のSランク。

 驚くのも無理はない、というかついさっきまで「馬肉ウマウマうまだけに」とかアホなこと話していた私たちからしてはまだ真面目スイッチが入っていないから、驚くのが当然である。



「SってサディスティックのSですかね……?」

「おそらくシミがとれない服のSだろう」

「いやいやセッ――」


「はいスリーアウトチェンジ!! いっぺん黙ろうか! コンプラ的に!」

「はんなりしてる割にコガネの嬢ちゃんも意外とぶっこむのな」


「せっ、って何を言おうとしたのだ?」


 エスカレートした私たちを取り締まるサイレンさんに、純粋という名の試練が降りかかっていた。

 ウイスタリアさん、言ってはあれだけどこの中で一番ずば抜けて歳上のはずなんだけどなぁ。

 さて、サイレンさんはどう誤魔化すのか。見ものだ。フォローせずに眺め――見守っておこう。

 そう思ったのは私だけではないようで、全員の目線が彼に集まる。



「せっ……席巻だよ! 世情を巻き込んで進出してるからって意味だと思う!」


「せっけん? せじょー? よく分かんないけど我らにピッタリなのだな!」



 すごい。

 普通に感心するくらいには上手い誤魔化しだった。特に説明の中にウイスタリアさんが分からなさそうな単語を入れることで理解するのを諦めさせる戦法、策士め。



「コホンッ! 話を進めてもよろしいでしょうか?」


「あ、お願いします」



 黙っていた私たちをよそに、受付の人は昇級に関する説明を続けた。

 ときどきふざける私たちを睨んだりで長くなったので簡単にまとめると――


 ・色んな国のやんごとなき人や住民の皆さんから私たちの活躍っぷりの噂が流れる。

 ・ジェニーさんが何を思ったのか私たちの強さをアピールしに帝国の冒険者ギルドに乗り込む。

 ・こいつら強いのではとギルドのお偉いさんで話し合う。

 ・ジェニーさんがまだ実力相応のランクにしないのかと圧をかける。

 ・なんか色々あった(要約:面倒だから上げさせようぜ的な流れに)

 ・あんまり依頼受けてないし、昇級試験として依頼出すか(本来は大量の依頼達成実績も昇級では必要になるらしいが1回でいいや)




「「「「……」」」」

「……それでええんか冒険者ギルドはん」



 私たちが飲み込んだ言葉をコガネさんがまとめて吐き出した。もはや適当すぎる処置に呆れしか出てこない。権力……というよりジェニーさんがめんどくさい人なのが理由だから、私も同じ立場ならそうするだろうけどさ。



「Zzz……」




 ウイスタリアさん、立ちながら寝ている。かわいい。私はおねむな彼女を後ろから支えながら受付嬢の話を聞く。



「ん゛ん! 依頼はこちらです。森の魔女からの依頼で、最近噂になっている邪神教を協力して調査、討伐しようといったものでございます」




 ん?

 んん?

 んんん?

 森の魔女ってリンさんのことだよね?

 これってマッチポンプなのだろうか。おそらくリンさんは私たちとは別に協力者を募った。そしてそれとは別口で知り合いである私たちも戦力に数えている。


 ――一石二鳥にも思えるが、私たちの負担も増えるから昇級試験としては丁度いい……かな?


 他のみんなも気まずそうな顔をしながら、こちらに丸投げする視線を向けてきた。



「ちなみに依頼が完了したらリ……森の魔女さんからその旨を伝えてくれるっていう流れでいいんですよね?」


「はい。いつも通りそのような流れになっております。昇級試験も兼ねているとはいえ依頼者側からしたら普通の依頼と変わりありませんので」


「ですよね、了解です」



 その制度、今更だけど色々と穴がありそうだ。まあ、依頼主の素性は調べるだろうから露骨な繋がりは無理だし繰り返したらバレるだろうけどね。

 1回きりなら偶然だし、こっちが選んだわけでもないからセーフ。セーフと言ったらセーフ!



「では、さくっとSランクになってやりましょうか!」

「不正はなかった、間違いない」

「アウフってとこやな」

「まあ、うん」

「Zzz……」

「ほんと賑やかなメンツだな」



 あれ、意外と乗り気ではないみたい。というか不公平さんに関しては冒険者登録もしないみたいだし、クランにも入らないみたいだならタダ働きじゃん。カワイソ(他人事)。


 さ、冒険者の視線を集めまくってるしそろそろ退散!




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