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足さざるべきか1

その日はそれで解放されたので、グレースは心底ほっとした。

自分の容姿がどう見えているのか。

自分がかつてそうで、失って、自ら否定した、猫耳ツインテール眼鏡リボンが、バートの好みだったら。

しばらく前から頭のなかに、いつもそんなことがある。

ようやく王子パニック(王子来訪以来の一連の忙しさを、彼らはそう呼んでいる)が収まりつつあるという今、忙殺されていたときには棚上げしていられたその問題が、グレースの中でどんどん重みを増している。

噂を耳にしたのは、そんなときだった。


「町でね、大きなケモ耳が流行っているんですって。グレースにあやかって、『幸福の獣耳』って言って」

「ぶっ……!?」

「やあだ、汚ない」

「ご、ごめんなさい。でも、それ、何なの?」


ジェシーはにこにこと笑いながら、指差した。


「ほら、グレースの耳って、鍛えているから大抵の人のケモ耳よりずっと大きいじゃない?それで、『王子が気にかけたのは、大きな猫耳の娘だ』って話が広まって、『大きな獣耳には魅力がある』ってなったのよ。だから、貴族には耳を鍛える美容が流行ってるし、庶民で元々ケモ耳のない子は、大きなつけ耳をアクセサリーにしているんだって。うちの内職の参考にと思って、買ってきちゃった」


そういうと鞄から、二つの三角形が縫い付けられたリボンのようなものを取り出した。三角の部分は毛皮で出来ており、猫耳を模しているらしい。


「こうやって巻いてた。どう?」

「かわいい。でも、見慣れないからかな、私は個人的に、ジェシーのきれいな髪や羽根が隠れない方が好き」


髪の生え際から少し上にリボンを巻いて、猫耳つきのカチューシャにしたジェシーは、確かにかわいい。それでも、見事な羽根をもつ彼女がそれをすると、天使がコスプレをしているところを目撃してしまったような落ち着かない気分になる。おまけにそれが自分の耳と同じ色なものだから、余計だ。

ジェシーはくすぐったそうに笑う。


「ふふ。ありがとう。じゃあこれは、バートにあげて」

「バートに?」

「そう。流行りがこの耳をメインにしたおしゃれになってきたから、細工物にも変化が出るかも知れないって、教えておいた方がいいでしょ?」

「……そう、だけど」

「やだ、私もう行かなきゃ!」


グレースがまごついているうちに、ジェシーは次の目的地に飛んでいってしまった。

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