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亡国の姫ルサルカ  作者: 巫 夏希
第二章 殺人鬼"ファントム"編
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第53話 バー・ユリイカ(3)

「そんな少女を見て、マスター、アンタはどう思ったんだ?」

「どう、って?」


 バーテンダーは微笑んで、さらに話を続けた。


「そこで無残に警察に突き出せるぐらい、私は残忍な性格だと思っていたのかしら? だとしたら、残念ね。そんなこと、ある訳がないじゃない。少しぐらい、こちらのことを考えて欲しいものね。……まあ、今ここに居る人間でそれが出来るのはどれぐらい居るのかと言われると、また話は別だけれど」

「……マスターはいつもそうだったよな。それぐらい分かるよ。分かっているとも。けれども……、その少女はどうなったのかは気になるもんだな。まさか見捨てた訳でもあるまい?」

「見捨てる訳にはいかないけれど、だったらここで雇ってやろうかとか考えたこともあったけれど、残念ながらそこまでは行かなかったわね。でも、今でもたまにはやって来るわよ」

「やって来る、とは?」


 トントン、とドアをノックする音が聞こえて、バーテンダーはウインクする。


「ほうら、ちょうどそろそろやって来ると思っていたのよね」


 バーテンダーは棚を開ける。棚と言っても、それは上に氷を入れておくことによって、食べ物を保存することが出来る冷蔵庫のようなものだ。冷蔵庫という仕組みそのものは存在しているが、一般市民が電気を自由気ままに使えることは少ない。

 しかし、食べ物の衛生状況を考えると、生ものを冷やしておかないのは問題がある。食中毒が発生してしまえばその店のイメージはがた落ちではすまない。あっという間に潰れてしまうだろう。


「……それは?」

「余り物よ。これしかあげられないのも、ちょっと申し訳ないのだけれどね。これ以上やることも出来ないのも、現実ではあるのだけれど」

「余り物でも十分だと思うぜ。普通は、自分の食べるものだけでも精一杯だと思う人が沢山居る訳だ。俺だってそう思っている訳だし……」

「そりゃあ、私だって多少は考えているつもりよ。何も考えずにそのまま食材を与え続けることも……はっきり言って不可能ね。私、そこまでお金持ちじゃないもの」


 バーテンダーは裏口の扉を開けて、そこにお皿を何枚か置いた。


「お金持ちじゃないなら、どうして食材を与え続けるんだ? 何かメリットでもあるのなら、未だ分からなくもないが……」

「メリットがあることしかやらないのかい? そうじゃないだろう、人生ってもんは」

「そういうもんかね。……まあ、割り切ってやるのもどうかと思うし、それについては少しばかりは了承するところもあるかもしれないが。いずれにせよ、デメリットしかないのなら、良く続けられるもんだな?」


 ハンスは酒を呷ると、漸く扉が半開きになっていることに気づいた。


「……うん? そこの扉、さっきは開いていたか? 閉めていたような気がするが……」

「ああ、多分もう来てくれたんだよ。来てくれた、って言う程でもないのだけれどね」


 バーテンダーが扉を開けると、そこには空っぽになったお皿が置かれていた。


「ね?」

「ね? とは言うが……。大丈夫なのか? その少女とやらは」

「何が? それとも、警察的にはそういう存在は見て見ぬふりをするのが当然という考え? だとしたら、失望するしかないのだけれどね」

「……そこまでは言っていないだろう。相変わらずマスターは手厳しいことを言う。少しは、こちらに歩調を合わせてくれやしないかね」

「警察ってのはお高くとまっているのが当然だからね。ハンス、アンタは違うことぐらい分かっているけれど……。でも、アンタも同類だよ、結局のところは」

「厳しいね、全く……。酔いも覚めちまうよ」

「悪いことしたね。けれど、それぐらいアンタだって分かっていた話なんじゃないかい? 警察官というのは、今も昔も忌み嫌われている生き物さね。それがこのような世界であるならば猶更」

「言いたいことは分かるがね……。警察官に文句を言うのも辞めて欲しいものだがね。こちらも、一応給料を貰って仕事をしているんだ。まあ、警察官に対するイメージがクソ悪いのは否定しないがね」

「ちょっとはそのイメージを改善しようと思ったことはないのかい?」

「俺がそんなこと考えていると思ったのか? マスター、追加でもう一杯くれ」

「飲み過ぎだよ、相変わらず……。あ、そこのアンタ達は何か飲むかい? 食べ物でも構わないよ、どうせ料金はハンスに付けておくからね」


 いきなり話題を振られたユウトは、どうすれば良いのか分からずに店内をキョロキョロと見渡し始めた。大方、メニューを探し出していたのかもしれない。

 


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