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亡国の姫ルサルカ  作者: 巫 夏希
第一章 ルサルカ邂逅編
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第5話 マスター(2)

「と、言われて来てみたものの……」


 扉を開けた先に広がっていたのは、物置だった。

 正確に言えば、箱が乱雑に置かれていた空間だった。物置というよりかは、ゴミ捨て場に近い。


「だから、物はきちんと整理した方が良いって言っていたのになあ……。普通、下宿人の俺達が言われる立場だろうよ……」

「あの……、何だかすいません。私のために、部屋の片付けを手伝ってくださって」

「うん? まあ、良いんだよ、別に。後でユウトに請求しとくから」

「仲は……良いんですね」

「良いのかねえ。そればっかりは分からないよ。……ただまあ、そうならざるを得なかった、と言えば良いかな。普通に考えれば簡単に想像は出来ることだけれどね。……シェルターで暮らす人間というのはね、その生活水準が緩やかに下がっていくものなんだよ。そうして生まれたのが……、ハンター制度という物なんだよな」


 そう言って、ケンスケはルサルカにハンター制度について話し始めた。

 ハンター制度が生まれたのは、このシェルターが出来上がってしばらくしてのことだった。元々、このシェルターから少し離れた位置には遺跡群が存在している。その遺跡群には、常日頃から調査と遺物を収集する人間が出てくるようになった。

 彼らはやがて自らをハンターと呼ぶようになり、最初は遺物を、後のことを考えることなく手に入れられる物は手に入れられるだけ収集していった。それにより、衝突や死亡が相次いだ。

 それを平定したのが、ハンター連盟だ。ハンター連盟はハンターの働き方そのものを変更し、一度に収集する遺物の数量を定めた。遺物の収集は依頼方式に変貌し、遺物収集以外の依頼もハンター連盟経由で依頼されるようになった。

 それにより、ハンターの仕事の安定化を図り、結果としてそれは成功した。

 ハンターになりたいと思った人間は、ハンター連盟からハンターライセンスを認定してもらい、そうでなければ外へ出ることを許されない。そもそも、有毒ガスが充満している世界である以上、普通の人間が外に出るには様々な申請をしなければならないのだ。


「……でも、私はここに入ることが出来ましたよ。それが成り立つなら、私が入る時に厳しく審査されるのではないのですか?」


 ルサルカの疑問も尤もだ。実際、ユウトとペアになって第七シェルターに入ってきた時に、細かい検査は受けなかった。それどころか、外気で汚染された服を脱いだ後はそのまま中に入ることを許されたくらいだった。


「あー……それは多分ユウトが上手く誤魔化したんだと思う。一応、ハンターは他のシェルター間との重要人物の護衛を担うこともある。シルバーランクじゃあんまりそういう任務もないんだけれど、多分それを上手く利用したんだろうな。実際、護衛を頼もうったって、ランクの低いハンターに依頼する人間なんてそう居ないだろうし」

「……シェルターに入るのは、なかなか難しいんですね」

「知的生命体が人間だけ、なら良かったんだけれどね」


 ケンスケは箱から何か機械を取り出して、ずっと弄くっている。

 片付けをしているのかしていないのか良く分からなかったが、取り敢えず今はケンスケの話している内容に耳を傾けるほかなかった。


「……人間以外に生命体が居る、ということですか?」

「それを知らない、ってことは相当世間知らずなのか、それとも今まで外界の情報を遮断していたか……。それはいつ明かされるか分からないけれど、俺達みたいな普通の人間とは違った生き方を歩んでいたんだろうねえ」


 機械を弄り倒して、それを箱に乱暴に詰め込んだ。そして箱を床から持ち上げると、そのまま箱の上に積み上げた。


「ミュータント、という存在が居る。……人間とは全く違った存在だよ。外観は人間そのものであることは間違いないけれどね。腕が二つあって、足も二つある。ただそれだけ……、ただし、緑色の皮膚に覆われていて、目や口は見当たらない。進んでいるんだか遅れているんだか分からない生き物、それがミュータントだ」

「口が見当たらないのならば……、彼らとのコミュニケーションは?」

「愚問だね、それをしようと試みた学者は多数居たけれど、どれも不発に終わっている。それどころか、食い殺された事例だってあるぐらいだ。……それでもミュータントとの共存共栄を望んでいる人間が居るんだから、人間って何処までも平和主義者が居るものなんだな、と思い知らされるよ。まあ、現実逃避の一環なのかもしれないけれどね」

「ミュータントは、遺跡に住んでいるのですか?」

「見かけることは多いらしいね。しかしながら、必ずそこに住んでいるって訳でもないらしい。……そればっかりは、運任せなところはあるね。ミュータントは未だ解明されていないところが多い。だから、科学者が必死になってミュータントを生きたまま捕獲しようとしているぐらいだ。中でも、ミュータントの捕獲に大量のお金をつぎ込む科学者も居るらしい。……そりゃあ、ミュータントの中身が分かれば世界的大発見だし、後の歴史でも必ず名前が残ることになるんだろうけれど、そこまでお金をつぎ込むことか……と言われるとまた話は違ってくる」

「……結構現実主義者(リアリスト)なんですね、ケンスケさんって」

「さんは付けなくて良いよ、別に。年齢も近いんだろうし。……まあ、それは仕方ないと思うよ。何せここは孤児院みたいな場所だからな」

「孤児院? ということは、皆さん身寄りがないんですか」

「そうだよ。ユウトだってミュータントを研究する科学者に裏切られて両親が殺されている。だから、あいつはミュータントを恨んでいるんだ。いつか根絶やしにしてやりたい……とまでは行かないと思うけれど、きっと憎んでいる感情は持っているはずだ」

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