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亡国の姫ルサルカ  作者: 巫 夏希
第二章 殺人鬼"ファントム"編
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第49話 新たな殺人(3)

 殺人現場は凄惨そのものだった。顔こそは綺麗なものだったとはいえ、壁にはべっとりと赤い血が塗りたくられている。最初からその壁が赤かったのではないか、そう推察出来てしまうぐらいだった。遺体の女性の顔は、少しだけ安らかに眠っているように見えたが、多少それが救いのようにも感じられた。


「……しかし、酷いものだな。これで何人目だったか?」

「十人は優に超えているかと。……それにしても、酷い惨状ですね。どうすればこのような殺人を犯せるんでしょうね」


 既に現場検証に入っていた警察官がぽつりと呟いた。


「さぁね、それは俺にも分からんよ。……実際、それが分かるのは、犯人だけだろうしな」


 ハンスは呟きながらも、事件現場を調べ始める。

 とはいえ、既に調べ終えているのが大半であり――ハンスが見ているのは、それの確認に過ぎない。そして、その確認もあくまで確認に過ぎず、大抵は既に調べ終えている結果を待つばかりに過ぎないのだが――。


「……まぁ、相変わらず、だな。ファントムは何一つ証拠を残しちゃいない。まさに幻影の名前に相応しい殺人犯だ。しかし、ハンターはこれを知っているんだよな?」

「どうだろうねぇ……、ここにさっきまでファントムのことを知らなかったハンターだって居たし、まだまだ知名度は低いのかもしれませんよ?」

「それって俺のことか……」


 マナの告げ口に溜息を吐くユウト。


「あなた以外誰が居るのよ。……それに、あまり知識をつけないのもどうかと思うけれどね。幾ら何でもハンターだけじゃ暮らしていけないし、シェルターの中でどうやって暮らしていくつもり? まさか永遠にあの『アネモネ』から独立しない、なんてことでもないでしょうに」

「脱出出来るかどうかも危ういよな……。もしかしたらマスターは独立を促そうと思っているのかもしれないけれど、そうも行かないだろ? やっぱり稼いでおかないといけないし、いつまで稼げるかも分からないけれど、貯蓄出来るぐらい余裕のある生活をするためには、それなりにリスクを伴う訳だし」

「言い得て妙だな。否定するつもりもないし、肯定するつもりもない。我々警察官だって、日々リスクと隣り合わせであるのであって……、だから高給取りと言われても仕方ない一面はある。実際、我々にも批判は来ているからな。暇つぶししているなら警察官を辞めちまえ、と」

「……警察官って、有事の際に活躍するんじゃないんですか?」


 ユウトの問いに、ハンスは頷く。


「そう思ってくれている市民が居るなら良いんだけれどよ、全員が全員そういう観点で物事を考えている訳でもねーしな。警察官はそういう人たちへのガス抜きも必要って訳よ。仕事というかどうかは疑問ではあるが、これをしなければ仕事に支障が出るのも事実だ。だから、遣らざるを得ないというか――」

「――でも、楽しそうですよね、ハンスさんは。……ほら、ユウト達もさっき見たでしょう? 市場の人たちとの談笑を」


 ユウトは頷く。先程市場で出会った人は、ハンスのことを警察官だと認識して、それでいて色々と物をあげようとしていた。もし警察官を憎んでいる人ならばそんなこと出来る訳もなく、寧ろ逆に被害を受けそうだったからだ。

 しかしハンスはそれを悪びれる様子もなく――どちらかといえばいつものことだ、という感じに留めていて――苦笑する。


「あんまり見られたくもないんだがな。ほら、陰の努力というのは気づかれたくないものだろう?」

「そういうものかな……。まぁ、警察官は批判も多いし、それぐらいはちゃんと頑張らないといけないのかな。面倒臭いものだな、何というか」


 ユウトの言葉に、ハンスは頷く。


「分かってもらえて何よりだね。やはり、そうやって理解してもらえないと、大変なものだ」

「……警部、一先ずこれから調査に行こうと思います。警部も調査を?」

「あぁ、まぁ、そうだな……。取り敢えず市場の人間に当たってみることとするよ。こっちには人手があるからな」


 そう言ってユウト達を一瞥するハンス。警察官はそれを見て合わせてユウト達を眺めているが、特に違和感を抱くこともなく、敬礼をして何処かへ消えていった。


「……さて、我々だがどうするかね?」

「えっ? ハンスさんがああ言うから、てっきり何か案でもあるのかと思っていましたけれど」


 ハンスがいきなりそう言うので、マナは耳を疑いながら聞き返した。

 ハンスは溜息を吐いた後、語り始める。


「そうは言うけれどよ、ファントムの手がかりなんてどう掴めば良い? 手がかりなんて雲を掴むような話だ。だったら、人々に不安を与えないようにしていけば良いとは思わねーか? ……まぁ、そんな発言は、はっきり言って警察失格だけれどよ」

「警察失格かどうかは別として……、少なくともハンスさんは警察官としてちゃんと仕事をしているんじゃない? 人を上手く使うのも上司の仕事だし」

「そうかぁ?」


 ハンスは何処か照れくさそうな表情を浮かべて、声を張り上げる。


「よしっ、そうと決まれば先ずは聞き込みと洒落込もうとするか。……来るか、お前達も?」

「何のために呼んだの?」


 マナの言葉にハンスは答えることもなく、そのままストリートを歩いて行くのだった。



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