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亡国の姫ルサルカ  作者: 巫 夏希
第二章 殺人鬼"ファントム"編
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第31話 捜査開始(3)

「情報の質に依る? そんなもの、完璧だと言えますよ。私の持っている情報は、純粋な情報でしかありませんから。……ファントム? でしたっけ? さっき宿場に入ろうとした時に怪しい格好をした少年を見かけましたよ。ローブで全身を覆っていたので、もしかしたら少女かもしれませんけれど。これって、情報に成り得ますよね?」

「なる……かもしれないけれど、えっ? それだけ? それだけのために、銀貨四枚も要求したの……」


 マナは茫然自失となりながらも、薬師に問いかける。

 薬師は頷きながら、さらに話を続ける。


「いや、正確に言うともう一つだけ情報はありますよ。私が薬師として商売している間――宿の出入口は開いていましたから、そこから路地裏への道は見えていたのですけれど、そこから誰も出てきていなかったんですよ。……警察官がやって来るまでの間に」

「……何だって?」


 薬師の言っている発言は、すぐに理解することが出来なかった。

 当然と言えば当然だろう。路地に繋がる入り口には、少年か少女が入っていって、それっきり誰も出てきていない――そんなことが理解出来るだろうか。

 しかし、路地ということは何処かに繋がっている可能性すら有り得るが――。


「――有り得るのか、そんなこと? あの路地って、確か突き当たりは工事中で常に作業員が居たはずだよな?」


 そう。路地の向こう側では、水道管の張り替え工事を行っていた。そのため、作業員が道を塞いで作業をしていたし、仮にそこを通ろうとする人間が居ればその作業員が見ているはずだった。

 にもかかわらず、その作業員が口を揃えて、こう言っている。――そんな人間は、見ていない、と。


「……そんなこと、有り得るのか……? 人間が消える、なんて……」

「有り得る、有り得ないの問題じゃないよ、ユウト。……実際に起きているんだ。現実を受け入れよう」


 意外とマナはあっさりと薬師の言葉を受け入れていた。

 薬師の言葉を百パーセント真実であると理解するのは、正直ユウトはなかなか難しいものであると思っていたが、マナはそこまで難しいことは考えていないようだった。


「真実か真実ではないか――それを考えるのは今じゃないからね。証拠さえ集まれば、それを証明することは容易なんだか、今はどんなものであろうとも情報を仕入れておけばそれで良い」

「人間が消えるという話は、耳に入れておくことにするよ。……いずれにせよ、普通の出来事が起きていない、というのは事実だ。もしかしたらトリックがあるかもしれないしね」

「トリック……ねぇ。こればっかりは実際に見てみないと何とも言えないね。流石にもう警察の捜査は終了したかな? 終了しないと一般市民があそこを通る訳にもいかないしな……。まあ、ただの路地だから別段問題ないのだろうけれど」

「少しは役に立ちましたかね?」


 薬師の問いに、マナは頷く。


「少なくとも、方向性は見出せたわ。あなたのお陰よ。……かと言って、追加料金は払おうとは思わないけれど。まぁ、安心して! ここのハンターがあなたを贔屓にするつもりだから」

「聞いていないぞ、そんなの」


 ユウトはマナに耳打ちする。


「それぐらい飲みなさいよ、男の子でしょ」

「ここで男の話を持ってくるのは違うような気がするが……。あぁ、もう、仕方ないな」


 ユウトは諦めモードで姿勢を正すと、頷いて薬師に言う。


「あぁ、タイミングにも依るかもしれないけれど、贔屓にさせてもらうよ。それで良いだろ?」

「いやぁ、そこまでしてもらえるなんて有難いですねぇ。個人でやっている薬師なんて、贔屓のお客さんが一人増えればそれだけで食い扶持が保てますから。有難いことですよ、全く……」


 ユウトは薬師に対して、文句の一つでも言いたいところではあったが、しかしながらこの状況では言えないままであった。

 一先ず、これ以上の収穫は見込まれないだろう――マナとユウトはそう判断し、薬師とは別れるのだった。



  ◇◇◇



「薬師の情報は、割と普通の情報だったわね。銀貨四枚は正直ぼったくりかも」


 集会所を出て少し歩いたマナは、開口一番そう言い放った。


「だったらその場で言えば良かっただろ。その情報は銀貨四枚には相当しないから返金してもらえるか、って」

「情報屋というのは、信頼に基づいて行われる職業なのよね。……つまり、相手と自分の間に信頼性があって情報のやりとりが為される、ということ。だから、こればっかりは別に問題ないと思うよ。情報屋としての、情報の吟味に失敗したってだけの話」


 とは言っておきながらも、マナは未練が未だあるように見えた。自分は別に後悔していない、というスタンスを貫いているように見受けられるが、実際のところはテンションが多少低い。


「……負け惜しみなら、さっさと忘れて欲しいものだけれどね。取り敢えずは、もう一度現場に向かってみることとしよう。……ほら、良く言うじゃないか。犯人は必ず現場に戻ってくる、って」

「それ、もし成立したら一番狙われるのは私達ですよね……?」


 マナの言葉に、ユウトは苦笑いをすることしか出来なかった。



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