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亡国の姫ルサルカ  作者: 巫 夏希
第一章 ルサルカ邂逅編
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第20話 見習いハンター(2)

 ユウトとルサルカが向かったのは、メインストリートから外れた一角だった。カン、カン、と鉄を叩く音が聞こえてくる。しかし、ルサルカにはここがどんな場所であるのかはピンと来なかった。


「……ユウト、ここはいったい何なのですか?」

「幾ら何でも、あの音を聞いてもなお分からないと言い張るなら、流石に常識を疑うぜ……?」

「まーまー、そんなこと言わないでおきなよ。ルカちゃんだって、その辺りは分からないことだってあるでしょうし。ユーくんの知っている世界が全てじゃないし、ルカちゃんの知っている世界が全てじゃない。……当然、アタシの知っている世界も全てじゃないのよ。それぐらいは分かるかな?」


 何故マリーも一緒に来ているかというと、先程ハンターライセンスを取得した際にバッタリ会ったからだった。

 二人の間で何か連絡を取り合っていた訳でもないし、お互いにお互いがここに来ることを知らずにいた。だからこそ、マリーがここにやって来ているのも不思議なことではあったのだが――。


「いやぁ、まさかルカちゃんに会えるとはねぇ。……彼女が昨日言っていた、『あの子』なんでしょう?」

「あ、あぁ。そうだ……。マスターが、どうせならルカをハンターに登録させておけば、今後のやり方が上手くなるだろう――って言ってきてさ。それを断れなかったというか、合理的だから致し方ないと思ったというか……」

「ユウト。私はこれでも結構楽しめている方ですよ?」


 ルサルカは何処かワクワクした様子だった。

 今まで、このようにショッピングをした経験がないのだろう。ユウトはそんなことを考えた。


「……ルカは何というか、暢気ではあるよな。いや、それが良いところだったりするのだろうけれど……」

「で、ルカちゃんのハンター装備を整えに来た……って訳ね。金貨二十枚は貰ったのかなー?」

「横でやり取りを見ていたくせに、つまんねー質問するな。金貨二十枚って、ぶっちゃけトントンだと思うけれどな。足りないかもしれないが、それは目を瞑るしかねーよ」

「ん? そう言うってことは、追加の資金でも持って来ているのかにゃ?」


 マリーの言葉に頷くと、ユウトは腰に装着したポーチから麻袋を一つ取り出した。少し揺らすと、金貨と金貨がぶつかってジャラジャラと音を立てた。


「……マスターも張り切っちゃってさ。二日働いた分とお駄賃として、金貨十枚も貰っちゃったよ。二日働いてこれだけ貰えるって、ぶっちゃけめちゃくちゃ破格だよ……」

「……まぁ、潤ったのは事実じゃない? 昨日噂で聞いたもん、『アネモネ』に可愛いメイドが居るって……。ったく、どいつもこいつも女には目がないんだよなぁ。でも、目の前にこんなに可愛い美少女が居るのに、あいつら何処に目を付けているんだか」

「お前のこと、女だと見ていないんじゃな……嘘です、だからそのナイフを首に突き立てようとするのをやめろ! な、やめよう、な! 俺が、俺が悪かったから! もう絶対に言わないから!」


 ユウトの必死な謝罪によって、マリーはナイフを首筋から離して仕舞う。仕舞うのを確認してから、ユウトは安堵したように深々と溜息を吐いた。


「……ふぅ。何というか、冗談が通用しないよな……。いや、今のは軽口を叩いた俺のミスだけれどさ」

「ミスをミスだと理解しているなら、未だ良いよ。……酷い人間は、自分がヤバイ言動をしたと理解していなかったりするからにゃー、困ったもんだよ。いったい何処でどういう暮らしをしていりゃ、そんな風になるんだろうね?」

「俺に言われても困る。……で、どうしてマリーはルカの装備選びを手伝ってくれることになったんだ?」

「まさか、ユーくん、女の子の装備選びを男の子が出来ると思っていたのかにゃー? だとしたら、そいつは大きな間違いだにゃー。きっと防具屋に行ったところで変態扱いされて、その店を出禁になるだろうね」

「……で、出禁だって……。それだけは勘弁願いたい!」


 何故ユウトがそこまで怖がっているのか――それはシェルターの構造に起因する。

 シェルターには幾つかのカテゴリに分けられて設計されており、商業区に当たるエリアには、それぞれお店の数が限られて配置されている。たとえそこが廃業したとしても、次に入るのは店舗数の割合に応じた業種に限られる。つまり、武器屋だろうが防具屋だろうが、そのうち一店舗でも出禁になってしまえば、購入出来る物の広がりが狭まってしまう。ユウト含め、ハンターはそれを恐れていた。


「……ユーくんもやっと気付いたかい。つまり、女の子の装備を揃えるなら同じ女の子とペアになった方がやりやすい、って訳。色々調べるのも楽だしね。……理解したかな、ユーくん?」

「はい……、十二分に理解しました……」

「それは結構。……さてと、先ずは防具を揃えようかねぇ。アタシがお気に入りの防具屋があるんだ。女性しか入ることが出来ないし、店主もちょっと変わっているけれど、見る目だけはあるからね。アタシが信頼している防具屋だし、秘密は絶対に漏らさない。……どうだい、ちょっとそこに行ってみないか?」

「女性専用……ってのが引っかかるが、マーちゃんが良いと言うなら、悪くないところなんだろうな。でも秘密を漏らさないというのは?」


 ユウトの問いに、マリーは唇に人差し指を当てて、


「……平たく言えば、闇市みたいなもんかにゃー。ハンターが遺跡で落としたり死んでしまって持ち物としては宙に浮いてしまった物を取り揃えているお店があるんだよ。まっ、そこならきっと欲しい物が手に入るよ、ちょっと値は張るけれどねぇ」


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