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亡国の姫ルサルカ  作者: 巫 夏希
第一章 ルサルカ邂逅編
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第11話 シスター・ジュディ(2)

「マツダイラ都市群?」

「……知らないなんてことはないよな。この第七シェルターから一番近くにある遺跡だ。そして、第七シェルターに住むハンターが最初に挑むとされる『腕試し』……」

「はぁ。まさか未だあそこに行っていたんですか? ほかのハンターはとっくにトクガワ城塞やオダ市場跡に向かっているのでは?」

「そりゃあ、マツダイラ都市群よりはそっちに行った方が儲かる可能性は高いからな……。それについては否定しねえよ。けれど、こうも考えられるだろう? もし俺がそこに居なかったら、その子は五体満足で居られるかは分からない。さっき言った通り、実験台にされるのがオチだ。だから……」

「だから自分のやった行動は素晴らしい、とでも? 正当化するのは悪くないですけれど、それを正当化されるのはどうかと。普通に考えたら、やっぱり利益のために行動していくもんなんじゃないんですか? ウチにもそういうハンターは沢山やって来ますよ。その日暮らしで生計を立てているハンターの多いこと多いこと、もしそれで収穫がなければウチの配給を頼れば良いとすら思っているハンターも居るぐらいですから。……ウチはあくまでも困窮しているけれど何も打つ手がない人への救済でやっているのに、これじゃあ意味がありません」


 ある意味、シスターにとっても致命的だと言えるだろう――ターゲットを狙い撃ちに出来ないやり方は、はっきり言って好ましくない。もともと百人のために考えて実行されたものが、百二十人集まってしまったら二十人分が足りなくなってしまうからだ。そして、その二十人がほんとうに食べ物を必要としている人であったとしたならば――。


「……宗教というのは、寄付で成り立っています。寄付というのは、いつなくなってもおかしくないものであり、いつ増えてもおかしくないものでもあります。よって、どのぐらいの収入があるかどうかを見極めることが出来ません。まあ、言ってしまえばほかに収入があるからこそやっていられることでもあるのですが。資産の再分配――我々がやっているのはそういうことですからね」

「簡単に言うが、そんなこと出来ているのか?」


 ジュディは頷いて、


「出来ているからこそ、我々はやっていけているのですよ。……これがもし赤字の上で成り立っていたら、続けることが出来ないでしょう。人々に食事を与える以前に、我々が飢え死んでしまいますからね。そしてそれは……、ずっと続けられることではないということを、私達は確信しているのですが」

「じゃあ、既に対策を?」

「出来ていたら苦労はしませんよ。……あくまでも、出来たら良いね、ってだけのことですから。ただ、そうしなければならないのは事実でしょうね。いずれにせよ、いつまで続くかは分からない状況ではありますから」

「……話を戻しても良いか? マツダイラ都市群については、全く知り得ていないってことなのか?」

「私自身は外に出ることは少ないので、口伝でしか知らないんですよ。ただ、マツダイラ都市群はかつて存在していた王国の跡地があるようで。……もしかしたら、そこと何か関係があるのではないでしょうか?」

「王国の跡地……か。行ってみる価値はありそうだ。マツダイラ都市群のどの辺りにありそう、というのは?」

「……それは分かりませんね。何度も言いますが、私はただのシスターですから。シスターはハンターにはなりません。それぐらいはあなただって充分分かっていることでしょう?」


 ジュディはそう言うと、手に持っていた分厚い本を開いた。

 それを見たユウトはばつの悪そうな表情を浮かべ、


「おいおい、辞めてくれよ。まさか俺に未だ宗教について説く気なのか? 前にも言ったけれど、俺は神様なんて信じていないし、今後も信じる気はないぞ。……そもそも、神様なんてものが実在するんなら、もっと住みやすい世界に作り替えて欲しいものだけれどね」

「それは人間のエゴというものですよ。義務を果たさないで、権利だけ主張する――別に悪いことであるとは言いません。生き方そのものを強要するつもりはありませんから。しかしながら、そう考えた方が、少しは物事を良く考えられるのではありませんか? ということを言っているだけです」

「……あーはいはい、予定説、だろ。全ての事象はこの世に生を受けた時から全て定まっていた、っていう考えの。言いたいことは分からなくもないが、それが正しいとは言い切れないね。だって、ほんとうにそうであるかなんて判別するのは出来ない訳だし」

「予定説って、簡単に言えば簡単なことではあるけれど、それをざっくりと言ってしまえば自分の人生を他人に決められているっていうのが、人によってはどうなのかな――と思ったりする訳なのですよね。神のことを常々言っているシスターがそんなことを言って良いのかってことになってしまうのですけれど」

「そりゃそうだよ、普通そんなこと言われたってはいそうですか、と言える訳じゃないんだから。……でも、信じる人は信じるんだろうな。どんな人生であろうとも、それは誰かが予め定めた物なんだーって言えば……、言い方は悪いけれど、それに押し付けられるというかさ、そんな感じなんじゃないかなと思ったりするんだよね。人間って、意外とエゴイズムの塊だからね」

「意外と……というのは案外間違いだと思いますけれどね。人間というのは、醜いものですよ。ところで、マツダイラ都市群の話に戻りますけれど」


 本筋から外れまくった挙句、無理矢理に本筋に戻ってきたのを見て、思わずユウトは二度見してしまった。

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