口と脳の連結は特急列車。
「おはようございます。今日は良い天気になりましたね。昨日の予報では雨なんて聞いていたんですが、当たらないものですね〜 こないだの全校集会は、どうでしたっけ。あー確か、雨が降っていましたね〜 難しい天気は、妻の機嫌と瓜二つ。はっはっはっ。」
動き出したロケットを途中で止める技術は、まだないように思える。同様に、動き出した校長の口を止めるすべもないのである。
「皆さん。三連休はいかがでしたか。楽しかった人、楽しくなかった人、家にこもっていた人、外へ出かけた人、家族といた人、友達と遊んだ人、部活の人、学校に来た人、旅行に行った人、お祭りに行った人、楽しかった人、日記を書いた人、電車に乗った人、お買い物をした人、遊園地に行った人、デパートに行った人、楽しかった人。あれ、これは言いましたかな。はっはっはっ」
右や左、左から右に重心の預ける脚を変える生徒達。膝を半分ほど曲げ、揺れるように聞く生徒も多い。中でも予海苔 雨絵は落ち着きなく揺れ動いていた。同級生にとっては当たり障りもないことだが、彼女を知らない人にとってすれば、奇妙な動作にも見える。彼女は貧血なのである。一年の頃に、数度にわたって倒れてきた彼女は、現在も三回に一回は途中で抜け出し、保健室に寄る。揺れるような動きは、筋肉を弛緩させ血流を良くする、彼女なりの知恵なのである。
「やっぱり耐えられなかったね」
「うーん。長いから疲れる……」
予海苔 雨絵。保健委員の公家 桃乃に連れられ、本日も体育館を退場。
〜もしもヤンキーの高校だったら〜
Take2
校長「私はね。妻と娘と、海外に行きましたよ。いやーいいですねー 海外は。日本じゃないんですから」
ガヤガヤ。
ガヤガヤガヤガヤ。
生徒A「おめぇ肩ぶつかっただろ?」
生徒B「ぶつかってねぇよ」
生徒A「ここガンなったんだよ」
生徒B「整列してる状態で、どうぶつかるってんだよ」
生徒A「だから、肩ガンなった、つってんだろ。どうせあれだろ、おめぇの肩が伸びたんだろ?」
生徒B「伸びるわけねぇだろうが。食べてねぇんだよ。ゴム人間じゃねぇんだよ。こちとら、18年間、人間やってんだよ」
校長「いやぁ。皆さん。変わらず元気で安心しました。やはり若さには元気ですよね。はっはっはっ」
桃乃「いつまで喋ってんだよ、なげー」
雨絵「その残り少ない毛根も死滅させんぞ!」
校長「やめて! それだけはやめていただきたい!」
雨絵「だったら、すぐに降りんかい!」
女子A「ちょっと」
雨絵「なんだよ」
女子A「最近、威勢がいいじゃない? 調子にでも乗ってんのかしら」
女子達「そうなのよー」
雨絵「あぁ? こっちは原付にしか乗ってねーわ」
桃乃「ノーヘルだぜ」
女子A「どうせ、二人乗りで楽しんで、馬鹿じゃないかしら」
雨絵「なんだとぉ」
女子A「私たちは四人乗りよ」
女子達「そうなのよー」
雨絵「そんなに乗ったら、あぶねーぞ。このやろー」
桃乃「このやろー」
委員長「てめぇらも威勢だけか!? うるせんだよぉぉ!」
全員「ごっ……ごめんなさい」
校舎裏
景元「金はある、逃がしてくれ」
◯「おーい。げっ……またカツアゲかよ」
景元「殴らない主義なんだ。だから助けてくれないか」
◯「この人数に、勝てる気がしないけど……」