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If Take2  作者: つくあ きぬを
始まり
5/13

登下校がなんだかんだで、一番幸せを感じる時間かも知れない。

明日よりも今日。今日よりも昨日。楽なのはいつも前の日だった。日に日に大きくなる彼の姿が正直疎ましくて、こんなに苦しいのなら次の日なんて来て欲しくない、そう思う夜が多かったから。

「今日っていつも通りだっけ?」

「ううん、違う。全校集会とかあるだけだよ」

「よかった。勉強なくて」

「いつもしてない」

でも、こうやって一緒にいる時は、そんなこと、全く考えつかない。代わりに、目の下にクマがあるけど大丈夫とか、昨日大きなコオロギを見つけたとか、お料理ひとつ覚えたよとか、話したいことと聞きたいことが、沢山溢れてきて、私の頭の中をいっぱいにする。

「ちょっとはしてるんだなぁ、これが」

「嘘つき。いつも寝てるの見えてる」

「いつも見られてるのか」

「斜め前だから、見えちゃう。仕方ないよ」

「ちゃんと黒板見なくちゃ」

「○には言われたくない」

家に帰ったら、ぽっかり穴が空いたような寂しさと、胸をロープで縛りつけた苦しさが来る。ギュッと硬くほどけないロープは、いっそ告白してしまった方が、緩くなるのかもしれない。でもそんなに簡単じゃない。他の子たちはみんな、こんな気持ちに耐えられる強い人達なんだ。すごいなぁ。○も私のことを好きだったら、同じ気持ちになってくれるのかな。わがままな期待だけど、そうだったなら、ちょっとだけ幸せ。


〜もしもすぐに告白したら〜

Take2

「ちょっとはしてるんだなぁ、これが」

「嘘つき。いつも寝てるの見えてる」

「いつも見られてるのか」

「見たいわけじゃないもん。斜め前にいるから見えちゃうの」

「じゃあこう、左目にセロハンテープでも貼ってさ。視界を塞ごう」

「そしたら見えない!」

「大丈夫だよ。片方だけでも意外と見えるもんだ」

「視力悪いんだよ、私」

「いっそのこと、両目にセロハンテープを」

「すごく変だよ」

「先生なら飴ちゃんくれるよ、きっと」

「仮装じゃないの!」

「トリックオアトリート」

「ハロウィンじゃない」

「18番、顔面セロハンテープ」

「それは欽ちゃんの」

「よくわかったね、すごいや」

「こないだ一緒に見た」

「そうだった。見た見た。夕食もいただいたんだ。ご馳走さまでした。」

「お粗末さまでした」

「あの桃乃が作った"きんぴらごぼう"美味しかったなぁ」

「ほんと?」

「うん。栄さんに負けないくらいだった」

「嬉しい。ありがとう」

「毎日食べたいくらい」

「……毎日?」

「身体作るのは、飯からだ! がははは」

「……」

「爺ちゃんの真似……なんだけど……」

「……いいよ。毎日作るよ」

「え、なに」

「作る。ご飯」

「おお、それは嬉しい」

「朝も昼も、夜も。それに土曜日も日曜日も毎日」

「それじゃあ、毎日、食べに行くよ」

「そうじゃない。もう違う!」

「なんだよ、急に不機嫌になるなよ、怖いぞ」

「怖くないもん。鈍感バカちゃん」

「なんだよ、鈍感って、まるで俺のこと好きみたいなーー」

「好きだもん」

「言い方を、へ?」

「どうせ気づいてなかったんでしょ……好き。恥ずかしいけど、ずっと好き」

「照れる」

「それだから……もう先行く!」

「いやいや、待って。俺にも言わせてよ」


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