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If Take2  作者: つくあ きぬを
プロローグ
1/13

プロローグ(1)

人生は、困った事に一度も止まらず、ずっと続く。寝ている間も、もしかしたら死んでしまっても、続いているのかもしれない。

人の数が増えればその分増え、減ることはない。私はその中で一つを選んでみたの。

2ヶ月前の案内状にはどっちに丸を付けようか、正直迷った。うーんと考えた結果、頭の中がごちゃごちゃするのが嫌で、ずいぶん先延ばしにしていた。それを見つけたのは、締切日の4日前。散乱した机の上。水道管工事の張り紙と近所に出来たピザ屋の宣伝チラシに挟まっていた。見つけたら見つけたで、もう一度迷ってしまったけれど、結局は筆圧が強い丸を出席につけた。

街を離れ、仕事を始めてから、ずいぶん歳をとった気がする。実際には10年。区切りはいいけれど、実感が湧かない。砂漠で蜃気楼を見つけたような曖昧さが記憶にあった。いつまでも遠く、一定の距離を置いて保ち続けていたから、触れてこなかったのも事実かもしれない。どうしてだろう。その理由もまた、遠くの蜃気楼においてしまったようだった。

駅前は観光客やビジネスマンで賑わっているが、車で少し外れてしまえば、すぐに田園や山々が顔を出す。昔から、発展途上国のような、両極端と呼べる街だった。私が街を離れていた間に、大型のショッピングモールが駅前に建設され、商店街の危機が危ぶまれていたらしいが、街の人たちは「付き合いと人情」を大切にし、今までと変わりなく過ごしているとお婆ちゃんから聞いた。そして、小さな抵抗として、商店フェスというものを始めたらしい。去年はスタンプラリーで、一昨年は芸人さんを呼んだとのこと。今年はどんなことをするのか、少し気になる。

私は実家から、当時の登下校の道を通り、会場へと向かっていた。極端から極端へ向かっているとも言える。水田と水田の間を汚れないように抜け、田んぼを右に左手に山を見ながら進む。泥に気をつけなければいけない神経のすり減らしが、車の免許を取っておけばよかったと後悔させた。

鳥居の前、道の真ん中で丸く横になっている真っ白い猫がいた。日向を浴びて気持ち良さそう。なんだか羨ましい。

「危ないよ。軽トラが通るんだから」

「にゃぁー」と呑気そうに欠伸をしている。

そんなことお前よりも詳しいよと言いたげな感じだった。

「あっ、そうだ。スルメあるの。食べる?」

「にゃあぁ……」と退屈そうに欠伸をしている。そんなもの食べないよ。いいもの食べてきてるんだからと言いたげな感じだった。猫から目を離すと、鳥居の先の神社が見えた。不思議な気持ちになるのは、神秘的な力のものだろうか。みんなに会う前に、お参りでもして行こうと思った。鳥居をくぐったとき、真っ白い猫が、また鳴いた。

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