面白いくらい面白くない。
人が作り出したもの。そんなものなんてなんの意味もないなんて思っていたのだけれど最近、とても意味のあるものなんじゃないかって思うようになった。今までの歴史のなかで出来上がってきたいいところも悪いところも受け入れるべき、いや、受け入れなければならないのではないか。なんて思う。今の世界。今の世界はどこも一緒で変わりのないつまらない世界。でも便利です。光があってインターネットでいつでもだれとでも繋がっている。そんな世界。なのにみんな苦しそう。生きづらそう。なんで生きてるんだろうとかなんのために生きてるんだろうとか考えてしまうのは、きっと危険のないなんでもできてなにもできない社会に嫌気をさしているから。朝起きたら、地球を救うために怪物と戦って! って羽のはえた少女が話しかけてくれたらどんなにいいことか。おはようこんにちはこんばんは。そしてまたおはよう。つまらない世界。毎日毎日同じことを同じようにまるでコンピューター。それでも私たちは生きています。
目が覚めて伸びをして、ため息。目に写るものすべて写真のように平べったく見える。感動も悲しみも感じない。このまま消え去ったら楽なのに。私たちは学校へ行かなければなりません。意味なんかない。ルールだから無理矢理です。問答無用。行かない人は悪。社会のゴミ。気持ち悪い。吐き気のような、怒りのようなものが込み上げてくる。僕は笑い声をあげたくなるのを我慢しながら笑った。お腹がつりそうになっていることに気がついたけど、気にすることはなかった。急に無表情になった。虚しさが身体を支配した。全部嫌になった。床に落ちていたつけペンで左腕をガリガリと削った。血が滲み出てきた。痛みは感じなかった。僕は今、死んでいた。
すべてが無。街を歩く。彼氏とか彼女とか恋する顔をして自分を騙して道化を演じる気持ち悪さ。機械みたいに決まった順序で演じて好きになって貰って、相手もそれを分かってて好きになって、知ってるくせに自分すら騙して繰り返す。私だけをみて? 俺だけをみて? 共依存。そのうち飽きてただの他人。恋ってなんだろうって考える。本当に幸せなのかな、付き合ってるリア充。演じるのが楽しい人なだけなのかもしれない。きっとそう。胸の中心から苦しさが広がった。嫌になった。壊したくなった。僕じゃなくなった。笑いたくなった。
自分の奥の意識にゆだねて身体を動かしてみる。まるで催眠術にかかったみたいな感じ。ふわふわしてて気持ちがいい。僕はどこに向かっているのだろう。わからない。なにかが弾ける。身体のなかで弾ける。面白くもないのに笑っちゃう。ふわふわしてて夢みたい。あはは、つまんない。
死にたいと思った。死にたいって思うことは自然なことのはずなのに病気だって。なにをもって病気なのかよく分からないね。人ってみんな少なからず死にたいって思ってる。だって人だもの当たり前。社会っていう箱のなかで消耗品として働き続けるだけの人生で生きる意味なんか見いだせない。見いだせるわけかない。みんな病々うるせーんだよ、みんな狂ってんのに、普通な人なんか存在するわけないのにそうやってお前は病気、あなたは違う。都合よく決めていく。
足が止まった屋上。風が吹いている。ここから落ちたら死ねるかな? いや、死ねないかな? 死ねるとしてもどうせならスカイツリーから落ちて死にたいな? ゴウゴウってすごい音、迫りくるビル、突き抜ける。そして地面。穴を空けたい。僕は一体なにをしたいのだろう。消えたいと思った。逃ようと思った。でも、逃げたところでこの苦しみ、虚しさはなくならない気がする。じゃあ死ねばいいのかっていったらそうではない気がする。死んでもまた、なにも変わらない。時間が過ぎていくだけです。丸まりたいと思った。丸まる意味なんかないと思った。どうすればいいの、僕は今、八方塞がりです。どこにも動けません。ああ、消えてしまいたい。
人は変われるらしい。でも、変わった自分って一体だれなんだろう? その自分って本当に自分って言ってもいいのだろうか。心配になる。変わるくらいならいなくなりたいし、変わったところで世界は変わらないし、屈したペットみたいで気持ち悪くなる。そもそも自分ってなんだろう。僕の考えはオリジナルように感じられるし、コピーのようにも感じられた。人っていうのはきっと影響される。誰にも影響されないで生きていきたいのに、どうしようもなく影響される。この腕の傷もきっと僕一人だけじゃないし、みんなあるんだ。この苦しみも同じ人はいるはずだし、僕だけ、僕だけの考え、僕だけの思考なんて本当にあるのだろうか。世界で一つだけの考え方。感じ方。世界中みんなが林檎って言ってるなか、僕だけバナナだって自信たっぷりに言えるくらいのなにか。そんなものがあるのだろうかって考える。僕の構成を一つ一つを見るとどれも当たり障りのない数多くある選択肢の一つを合わせたようなもので、『僕』という存在だけを表した一つはどこにあるのかな。
携帯がなった。僕は静かな誰にも影響されない時間が欲しかったから、携帯を真下へ叩きつけた。静かな、誰とも繋がれない心地のいい世界。風が吹いた。車の音が風にのって聞こえてきた。僕はパラペットの上に座って下を見下ろしてみた。世界はどこまでも規則的に動いていて、歩く人はどれも亡霊のようだった。
あとがき
ここ数日間僕は荒れていた。僕の活動報告を見た人は分かるかもしれないが、かつて理解することができなくて悩んでいた『リストカット』をする心理が分かるようになった。今作の主人公の様に死にたいと思ったり、死ぬ意味はないと思ったり、矛盾していた。また、一人でいる時間は地獄だった。言葉には表せないような苦しさを永遠に感じていた。
今作にあるようにこの苦しさは僕だけのものじゃないだろう。みんなとは言わないが、この苦しさを感じているものは必ずいる筈だ。それは今回僕がこの作品を書いた理由の一つである。今作の主人公は僕であるようであって僕じゃない。僕は怖がりでなにか物を壊すことなんかできないし、学校もサボったことどころか休んだことすらない──まあ、授業中に起きていたこともないのだが──。
この作品はきっと僕の願望であって、僕の望んだ自分であるのだと思う。自分の妄想をただ書き殴った乱文で、もしかしたら小説ではないのかもしれない。ただ、この作品を読んでなにか感じてくれる同志が一人でもいてくれれば僕は満足である。