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わたしの主は世話がやける  作者: しゃもじ
1章
9/13

初めてのお使い

1月1日。

年が開けて新年を迎えた今日この頃。


わたしは一匹で町までお使いに来ていた。


…………。

嘘は言っていない、本当のことだ。シルヴィア先輩から頼まれたのだ。




「夜ご飯はシチューがいいな」


事の発端はグリゼルダさまのこの一言だった。

そのリクエストはあっさり通り、わたしも好物であるシチューに胸を膨らませていた。

ところがシルヴィア先輩が食料庫をチェックしたところ、ミルクとタマネギが切れていたのだ。年明けでドタバタしていたので、食材の残りに気を配る余裕がなかったらしい。

シチューを作れないと知って落ち込むグリゼルダさまに、「……わたくしのミスです。申し訳ありません」とシルヴィア先輩が頭を下げる。

「気にしなくていいわよ。今日は別のメニューにしましょ」と奧さまが宥めるも、先輩は自責の念が強く、「いえ、そういうわけには参りません。急げば間に合いますし、今から買って参ります」と、部屋を出て行こうとした。

──もう日が沈みそうだ。この時期はひどく冷える。

そう思ったわたしは素早く出口に立ちふさがって、彼女を止めた。


「どうしたの、セレナード? わたくし、買い物に行かなきゃなんだけど……」


訝しげにわたしを見る彼女に、首を横に振って応える。

こんな寒い中、先輩である彼女を買い物に行かせるなんて耐えられない。わたしは狼、この程度の寒さならなんともない。だからわたしが代わりに行く。

──と伝えたいのだがどうしたものか。

困り果てて主を見ると、ニコッと笑ってくださった。

……いえ、可愛いのですが、わたしがしてほしいことはそうではなく……。

う~んと頭を抱える。


「ごめんごめん、冗談だよ。セレナが代わりに行く、って言いたいんだよね?」


伝わっていた!

言葉にせずとも気持ちが伝わったことに感動しながら、ブンブンと頷く。

改めてシルヴィア先輩を見ると、顎に手を当てて何かを考えていた。


「うーん……。……奧さま、わたくしはセレナードにお願いしても構わないと思うのですが、奧さまはどう思われますか?」

「私もいいと思うわよ。レイと一緒に見回りに行ったり、ゼルダと一緒にお散歩したりしてるから、町の皆もセレナのこと知ってるし。お金とメモとリュックがあれば充分かしら?」


わたしが行ってもいい流れだ。それがわかったので大人しく待つ。

しばらくして、シルヴィア先輩が何処からともなく持ってきたリュックに、幾ばくかのお金と奧さまのメモが入れられ、それをグリゼルダさまが手ずから背負わせてくださった。


「おおー、セレナそれ似合うね!」


一瞬でこのリュックが気に入った。わたしの宝物にしよう。

上機嫌に玄関まで行き、皆さまを振り返る。


「あんまり遅くなっちゃダメだよ?」

「馬車に気をつけるのよ?」

「じゃあお願いね、セレナード」


お三方の見送りに深く頷き、わたしは踵を返して走り出した。

さあ、わたしの初めてのお使いだ。

頑張るぞ!

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