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わたしの主は世話がやける  作者: しゃもじ
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プロローグLast

わたしが拾われてから100日余りの月日が流れ、身体は少し成長し、知識はさらに増えた。


例えば暦。

100日余りは人間の言い方で3ヶ月半と言うらしい。1ヶ月は28日、13ヶ月で1年だ。

今日は12月の20日で、季節は冬の初め頃になる。


例えば国。

我々が住んでいる国は、大陸の北にあり、名をフロークス公国という。東のスネッグ王国、西のスランク皇国と並び、三大大国と呼ばれている。

この三国は治安がいいことで有名で、過去200年に渡り戦争をしていないそうだ。

また、それぞれの国に特産があり、我らがフロークス公国は服飾と料理、スネッグ王国は芸術と音楽、スランク皇国は建築と娯楽を主な生業としている。

他にも小国はいくつかあるが、今は割愛する。


例えば制度。

この国には頂点に公王がおり、その下に公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵と貴族が連なる。

政治に口出しできるのは基本的にこの貴族までで、年に一度の会議で国の方針やら外交の予定やらを決めるそうだ。

しかし平民が何の関わりも持てないかというと、そうではない。

何せ平民は、この国の人口の実に9割を占めるのだ。その多数の意見を切り捨てるのは愚の骨頂だと公王は仰り、それぞれの領地を治める貴族に目安箱の設置を義務づけた。領民はいつでも好きな時に投書ができて、不満に思っていること、直してほしいこと、貴族に望むことなどを匿名で意見することができるのだ。

投書を受けた貴族はそれを王宮に報告する義務が生じ、無断で意見を切り捨てた貴族には厳しい罰則が課せられるのだとか。

今のところ大きな問題もなく、つつがなく国は成り立っているらしい。


例えば仕事と学業。

この国の子供には、10歳になると学院と呼ばれる教育機関に通うことが義務づけられる。そこで6年間の教育がなされ、卒業となる。卒業後は更なる知識を求め大学院に行くか、仕事に就くか選ぶことになる。特に決まっているわけではないが、貴族は大学院、平民は学院が斡旋する仕事に就くことが多いそうだ。

ところで10歳までの子供なのだが、何も毎日のように遊び呆けているわけではない。彼らは彼らで、文字の読み書きや四則演算などを、各自10歳までに憶えるのだ。

子爵や男爵といった領地を持っていない貴族は家庭教師を雇って各家庭で勉強をするが、平民は違う。

より正確に言えば、平民と"領主の子供"は違う。

彼らは3日に1度、領主の屋敷に集まって、講習会をするのだ。

そこで講師を勤めるのはその地を治めている領主で、これが彼らの主な仕事となる。もちろん旦那さまも講師をしているぞ。

講習会がない日は村人と交流したり、畑を荒らす猪を退治したり、王都へ送る書類を製作したりと精力的に活動している。

5日に1度程は自主的に休日を設けており、その日はグリゼルダさまと遊んだり、家族サービスをしたりして充実した日々を送っている。

…………旦那さまの説明になってしまったな。


とまあ、このような知識を蓄えたわけだ。無駄になる知識などないのだから、いずれ主の役にたつ日も来よう。


「──セレナァ! お散歩行こぉ! 玄関集合ね!」


おっと、主のお呼びだ。

これはわたしとグリゼルダさまの日課であり、わたしの楽しみなのだ。

今日も及ばずながら、ボディガードを勤めさせて戴こう。

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