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わたしの主は世話がやける  作者: しゃもじ
0章
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プロローグ6

一つ気付いたことがある。

ここにいる方々の話に耳を傾けていて思ったのだ。


わたし、ひょっとしてめちゃくちゃ賢いんじゃね? と。


…………。

この家の旦那さまの口調を真似てみたのだが、わたしには合わないな。以後封印するとしよう。

話を戻す。

ご家族が食事をしながらする会話を聞くともなく聞いていたら、段々とその内容が理解できていったのだ。

凄い、わたし賢い。

主たちの仰ることが理解できれば、より細かいところでもお役に立つことができる。

それはわたしにとって至上の喜びだ。


ここで一旦、食事の時間に把握したことを整理しておこう。


まず、主たちは"人間"という種族で、野生動物とは一線を画する生き物らしい。独特のコミュニティを持ち、様々なルールを設け、優れた技術を持つ種族。

極端な話この世の生き物は、人間とそれ以外に分類できるかもしれない。


この建物は"屋敷"、もしくは"家"と呼ばれる住処で、今わたしがいるこの場所は"食堂"というごはんを食べる専門の空間らしい。

ごはんとは何もあの白い液体のことを示す単語ではなく、食物の総称、代名詞のように使われる単語のようだ。


この屋敷の所有者はイースレイ・クロフォード、つまりは旦那さまで、我が主のお父さまでもある。

とても背が高く、この屋敷で2番目の身長の奧さまよりも頭二つ分くらい高い。金色の髪をしている。

侯爵という、人間のコミュニティではかなりの地位を誇る方らしい。

…………しかしあまりそうは見えないな。奥さまには頭が上がらないようだし、我が主も、話しかけられてもたまに無視してるし。

随分と肩身が狭そうだ。

あ、今使用人に舌打ちされた。

……ボスの見定め、間違えたかなぁ。


続いてアンドレア・クロフォード、奥さまだ。

旦那さまの配偶者で我が主のお母さまだ。旦那さまよりも明るい金色の髪をしている。

侯爵夫人という肩書き以外に服飾師という一面も持っているらしく、その界隈では知らぬ人はいないのだとか。

あの胴体を覆う繊維、つまり服、体温調節の為だけのものではなかったのだな。


次は我が主。残念ながらまだわたしが勝手に呼んでいるだけだが、とにかく我が主、グリゼルダ・クロフォード。

とても小柄で、一目で子供なのだとわかる。奧さまよりさらに頭一つ分くらい背が低く、銀色の髪をしている。お歳は八歳だそうだ。

よく笑い、よく話しかけてくるお方で、このお方のおかげで言葉を覚えられたと言っても過言ではない。

野菜が苦手なようで、こっそりわたしに「食べていいよ」とニンジンという橙色の根菜を渡してきたりもした。もちろんありがたく戴いた。……使用人にはバレていたみたいだが。


最後にシルヴィア、この屋敷の使用人だそうだ。メイドとも呼ぶらしい。

主たちと血の繋がりがあるというわけではなく、住み込みで家の手伝いをする、素晴らしい職業を生業としている方だ。つまりは広い意味で、わたしの先輩にあたる方になる。敬意を持って接しよう。

そして彼女、獣人と言う種族らしい。頭部に虎のような耳、臀部に虎のようなしっぽが生えている。

少し複雑なのだが──人間という種族の中に、主たちのような"普人族"、シルヴィア先輩のような"獣人族"と分かれているらしい。その中でも彼女は"虎人族"という種族に分類されるそうだ。


つまり人間の中の普人族が、グリゼルダさまや、旦那さま奥さまで、人間の中の獣人族の中の虎人族が、シルヴィア先輩ということになる。

他にもたくさん種族があるらしいが、今分かっているのはこのくらいだ。

話の整理終わり。


主たちが食後の紅茶というものを嗜んでいる時に、奧さまがわたしを見て言ってきた。


「ねえゼルダ。その子、うちで飼うのよね?」

「むぅ、違うよ。飼うんじゃなくて、あたしがこの子のママになるの」


ママ──お母さまのことか。なんと畏れ多い……。しかし、嬉しいものだな。

ふわふわした気持ちでいると、奧さまがわたしにとって転機となる言葉を発した。


「ふふ、そうだったわね。でもそれならなおさら、名前をつけてあげなきゃじゃない?」

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