表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたしの主は世話がやける  作者: しゃもじ
0章
5/13

プロローグ5

あのお方を見送り、このふわふわな寝床から下りる。

いつまでも主の寝床を占領しているのは失礼だからな。

にしても、腹にものが入るとこんなにも動けるようになるのだな。脚を無様に震わせていたあの頃が懐かしい。大して時間は経っていないが。

今なら先ほど走っていったあの方に、一呼吸のうちに追い付けそうだ。無論そんなことはしないが。

ふわふわの下で丸くなって待っていると、やがてあの方が戻ってきた。


「ただいまぁ! ってあれ? 降りちゃったの? そのままでよかったのに」


あの方はこちらに寄ってきてわたしを抱き上げた。そしてそのままこの空間を出て、何やら細長い空間を歩いていく。

……自分で歩けるのだが。それにあの甘くて白い液体はどこに……?

疑問に思ってお顔を見上げると、例の心安らぐ表情で話しかけてくる。


「ちょっと遅くなってごめんね。でもあたしたちもこれからごはんだから、そこで一緒に食べようね」


"ごはん"とはさっきも言っていたな。確か白い液体を指していた。

と言うことはつまり、"ごはん"の場所まで移動しているのか?

先ほどの空間で食べればいいものを何故……。


考えていたら到着したらしい。

そこに溢れる食べ物の匂い、そしてこの方と同じ形をした生き物を三匹確認し、わたしは猛烈に反省した。

そうだ、何故思いつかなかった!

何も食事をするのは自分だけではないのだ。この方はもちろん、いるのであればご家族も、食事は必要なのだ。

食べ物を戴くならば、下の者が出向くのが当然であるというのに…………どうやらわたしは知らず知らずのうちに甘えていたらしい。己を厳しく律しなければ。


動物の毛を集めて作ったような柔らかい床に下ろされ、目の前に"ごはん"が置かれる。

しかしまだだ。この群れのボスより早く食べることは許されない。

まずはボスを見極めなくては。

…………おそらくあの、一番身体が大きな方だな、風格がある。

そちらをじっと見つめ、その方が食べ始めるのを待つ。

ご家族の方々が一斉に食べ始めるのを確認して、わたしも食事を開始した。

──ああ、甘い。

今はこのように施しを甘受することしかできないが、いずれこのご恩を返させて戴かなくては。

そのいずれ来るご恩返しの日々の為、わたしは目の前の"ごはん"をたいらげた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ