プロローグ3
あの方はすぐに戻ってきた。
「お待たせー、ごはんだよ!」
何やら片手に白い液体が入った容器を持っている。あれは一体なんだろうか?
「さあ、たーんとお食べ、ミルクだけど」
そう言ってわたしの口元に容器を近づけてくるが…………はて?
これはなんだろうか?
食べ物なのだろうか?
確かにそのような匂いはするが、主にあの容器の一番柔らかそうな部位から。
しかし……わたしのイメージする食べ物とはだいぶ…………う〜ん。
途方に暮れて首を傾げる。
「あれ? 飲まないの? ……あ、そっか、飲み方がわかんないんだね。いい? こうするんだよ」
このお方はわたしの口元に近づけていた容器をご自分の口元に近づけると、その柔らかそうな先端に噛み付いた。
するとどうだろう。その柔らかそうな先端から白い液体が出てきたではないか。
なるほど、あれはあのように中の液体を飲むための容器だったのか。
「はい、やってみて」
わたしの前に再び容器が差し出される。今度は大丈夫だ。
そっと先端部分に噛み付く。中から甘く、温かい液体が口内に流れ込んできた。
一口含むと、わたしは自分が空腹であると気づいた。
むさぼるように容器に喰らい付き、あっという間に中身を空にしてしまった。
「ふふふ、よっぽどお腹が空いてたんだね。おかわりいる?」
なんとなく、もっと飲むかと訊かれた気がしたので、ブンブンと首を縦に振った。
「うん、わかった。持ってくるからちょっと待ってて」
立ち上がり、あの色の違う壁から出て行ったお方は「シルヴィ! ワンちゃんがおかわりだってえ!」と叫びながら走って行った。
…………あのお方の種族は、叫びながらでないと走れないのだろうか?