70.ベンチタイム(bench time)の対照語はフロアタイム(floor time)。休息の時間は、静粛に。
ガス抜き・パンチ工程に続くのは、「お休み」の時間です。
これはベンチタイムと呼ばれています。
英文のスペルで表すと
bench time
です。って、そのままやないか!
山田君、ベンチ2個持ってって!
少し横道というか、言い訳というか、当方のパン作りについてです。
この連載の冒頭で説明した通り、食パンばっかり作っています。
それも400グラムの強力粉を捏ねたまんま、型に入れず、丸い食パンを焼いています。
型に入れないのは、単に邪魔臭いという理由だけです(おいおい)。
知人の結婚式の引き出物で頂いた、いや、もうちょっと厳密に言えば、引き出物のカタログギフトで注文させていただいた、強力粉500グラムレシピに対応する食パン型は所有しております。
メンテもそれほど大変というわけではないのですが……
何となく、使ったり仕舞ったりする際の「ひと手間」が、当方にとって大きな壁になっているようですね。
ということで、当方のパン作りには生地を「切り分ける」という作業がありません。
パンチしたあとに、大まかに、クルンっとひとまとめに丸めて、ハイおしまい。
「切り分け」がないどころか、あっという間に「成型」まで終わってしまいます。
通常の工程では1次発酵→ガス抜き→分割→ベンチタイム→ガス抜き→成型→2次発酵、と続きます。当方は「分割」がないのでガス抜き→成型→2次発酵となり、ベンチタイムがありません。
いや、この場合2次発酵の最初の10分位がベンチタイムにあたるのかな?
ベンチタイムの対照語はフロアタイム(floor time)です。
フロアタイムは生地を発酵させる時間のことを指しています。
どうやら、生地を入れた箱を床に置いて発酵させていたから、というのが語源のようです。
パンチして切り分けた生地を、椅子などに乗せて休ませたことからベンチタイム……といわれていますが、天邪鬼なパン大好きは、ちょっと別の解釈を考えてみました。
ベンチには椅子の連想から、国会議員の議席や裁判所の判事・裁判官という意味もあるそうです。
カンッカンッ
裁判長の木槌が緊迫した法廷の空気を切り裂いた。
「静粛に。これにて休廷する」
「異議あり!」
「異議は認めません。ベンチの裁定による休息時間は絶対です」
「くっ、ベンチタイムは覆らぬか」
若き弁護士・牛岡は右手の拳を見つめ、昼飯に向かった。
いや、妄想が違う方向にいきました。今のナシです。
ベンチには作業台、つまりワークベンチという意味もあるそうです。
とすると……もしかしたら、床の箱で発酵させていた生地を、いざ、作業台に乗せてガス抜きや分割・成型をする時間だからベンチタイムと呼ばれるようになった……違うかな?
さて、まったくもっての余談ですが、ベンチを調べていて気になったので。
パソコンの性能などを計測する「ベンチマーク」。
測量での「水準点」やそれから派生した「基準」を意味する、このbenchmarkの語源は、まさに椅子のベンチらしいのです。
それは、海外で歴史的に使われていた水準点の表記が「不」の字のようだから。
……と書いてもワケわからないですね。図示いたしましょう。
矢の外見に似ているから→↓←↑を「矢印」と呼ぶのと同じように、ベンチマークの外見から「椅子印」と呼ばれるようになったらしいのです。いやはや、意外な発見でした。




