69.ふっくらのはずが、姿を現すデッカイ空洞……心にポッカリ穴が開かないよう、優しくパンチだ。
前回までに紹介いたしました、生地のガス抜き・パンチの工程。
その効果・効能をざっと書き出しますと、以下のようになります。
①偏って発生したガス(二酸化炭素)の気泡を取り除く
②外側と中心部の温度差を均一にする
③緩んだ生地への適度な刺激で、グルテンの張りを復活させる
①は前回にも書きましたが、生地に大きな気泡ができると食感が非常に悪くなります。
パンを焼き上げたとき、プックリ膨らんでくれると嬉しさ倍増です。
けれど、いざ切り分けた時に姿を現すデッカイ空洞……
心にもポッカリと穴が開いたような、そんな無念さに襲われます。
大きな気泡を取り除く、もしくは、より小さな気泡へと分散させます。
そうすることで、生地の肌理をキレイに整えることができます。
②は生地の温度差を平均化して、発酵のムラをなくします。
温度計を買ったばかりで、何ら実証できていないので申し訳ありません。
しかし、当方のようにデカいパンの場合、表面近くと中心部で温度差が発生しているものと考えれられます。
温度が高い方が発酵が早く進んでしまうので、そのようなムラをなくす目的があります。
③発酵中は、生地には重力以外に力が加えられていません。
その結果、生地はユルユルの状態となっています。
当然、捏ねでできたグルテンの膜も緩んでいます。
ビシッと「愛のムチ」でグルテンが刺激されることで、しなやかさと弾力性が増します。
パンチの作業では、バンバン&ギュウギュウのような手荒な作業は厳禁です。
グイグイと力任せに押し込んで気泡を取り除くと、生地が傷みます。
せっかく捏ねで形られたグルテンの膜が壊れ、膨らみが悪くなるのです。
本来的には、台の上に打ち粉をして、発酵を終えた生地を置きます。
中心部から外に広がるように、手のひらで優しく押さえてガスを押し出します。
しかし、ズボラな当方。
毎回、発酵を終えた容器の壁に生地を押し付けて、気泡を取り除いています。
が、たびたびデカい気泡が残ってしまうのです……
やっぱり、手間を惜しんではいけませんね。
さて、いまさらですが。
以前に書いた鳥島君と浜崎さんの物語は、このガス抜きとパンチを題材にしたものです。
春の親睦会という名の宴会でガス抜きをした部員たち。
バタさんと山上さんはバーで意外な交流を。
村中先輩の厳しくも暖かい後輩への思いやりを。
そして、鳥島君と浜崎さんは「パンチ」を通して、グッとお近づきに。
温度差がなくなり、親密さを増した部員たち。
都会の片隅の5階は、一段とその味わいを深くしたのでした。
次は、ベンチタイムから2次発酵へと移りま~す。
文中の挿話として、「ガス抜きのカラオケ」のお話しも書いたのですが……
あまりにもイマイチだったのでお蔵入りしました。
別に報告しなくてもいいんですけど、ね♪ パン大好き




