59.デジタル温度計で測れたのは、手捏ねの「ぬくもり」でした。
いきなりですが、バババン!
デジタル温度計を手に入れました。
というか、今まで使ってなかったんかい!
っていう突っ込みが各所から聞こえてきそうですね。
今回連載を執筆するにあたり(とても大仰ですが)、パン作りに関する各種・各所の資料を調べました。
その結果、捏ねや、発酵、焼き上げなど、すべての工程で温度管理がとても重要な位置を占めていることを痛感しました。
特に「生き物」であるイーストの働きと、バターの役割を十二分に発揮させるためには温度管理が欠かせません。
これまでは生地の状態をみて、これまでの経験からくる「カン」に頼って、オーブンの温度・発酵時間などを適当に加減していました。
今回、デジタル温度計を入手しましたので、一つ一つの工程で温度を計測しながら作業を進めてみました。
まず、材料を混ぜる前の状態です。
強力粉や砂糖、塩などをボールに投入。
その温度を計測すると25.5度でした。
水は水道水を計量カップにとります。こちらは26.1度です。
ボウルに水を投入し、混ぜ合わせます。
コネコネコネコネ…
以前にも書きましたが、ある程度生地がまとまったら、6つ位にちぎり分け、またくっつけるという作業を繰り返すと、非常に手早く&滑らかな生地となります。
だいたい生地がまとまった時点で温度測定します。
中心温度は28.7度でした。上がっていますね。
続いて、捏ね上がり時点で再度、温度を計測します。
強力粉400グラムのレシピなので、かなりデカイ生地です。
表面と中心部で温度差がありそうなので、それぞれ計測しました。
表面は28.2度。中心部は30.5度でした。
捏ねる前は25.5度、途中28.7度を経て最終的には約4度の上昇となりました。
温度上昇の要因として考えられるのは、
①室温、②体温、③生地の摩擦熱、④発酵に伴う発熱、
でしょうか。
①は室温は25度だったので、温度上昇に寄与したとは考えにくいです。
②は当方の体温は36.5度。手捏ねの「ぬくもり」が生地に伝わったと考えられます。
③は機械ならまだしも、手捏ねで摩擦熱が発生するのかな? パン生地ではないですが、金属の針金を曲げて伸ばす動作をすばやく何度も繰り返すと、針金にかなりの熱が発生します。パン生地では、う~ん、どうなんでしょう? ネットでざっくり調べてみますと、機械捏ねの場合は考慮に入れる必要がありそうなのですが…
④堆肥などを作る時に発酵熱が生じることが知られています。これと同じようにイーストの発酵に伴う温度上昇が考えられるのですが、当方の手に負えないです。確かなことはいえませんが、数時間に数度のような単位ではないか、と推測します。イーストを使って、今度実験してみます。
いずれにせよ、カンで生地を捏ね上げたにもかかわらず、発酵に適した28~30度になっていたことに驚きを感じたとともに、自信にもなりました。
さて、ここから発酵です。
オーブンを発酵モードにセットし、庫内温度を30度に設定します。
ボールに入れたまま生地を庫内に収めて、1時間弱発酵させました。
途中、生地の表面温度を測りますと、30分後で30.1度! おお、シャープさん、すごい!
我が家のオーブンレンジは、今、色々と話題のシャープ製。その技術の確かさに脱帽いたしました。いえ、決して疑っていたわけでは、ないんですよ。
生地が2倍程度に膨らんだので、レンジから取り出しました。
この時点で計測すると、表面29.1度、中心は31.3度。
また、中心の方がアツイ。気になりますね。
生地にパンチを入れ、ガス抜きしてから2次発酵に移ります。
レンジの設定温度を35度に上げて、生地が膨らむのを待ちます。
時間にして30分くらい経った後、生地の中心温度は32度となっていました。
ほぼ想定内というか、これまたベストな温度でした。
続いて、焼き上げです。
オーブンの設定は220度10分→190度10分としました。
実は、この連載「おいしいパンを作りましょう」の内容は、1次発酵までしか進んでいないので、焼き上げ温度に関しては未検証の状態です。これまた深いお話が詰まっているのだと思われます。…ということで、このオーブン設定は、これまでの経験によっています。
さて、やっと焼き上がりました。
見た目、いい感じです。
さて、心を鬼にして温度計を突き刺します。
ぶすり。
その中心温度は…82.2度を指していました。
写真では少し下がっていますが。
恐らく生焼けではないのでしょうが、90度前後を想定していたので焼き上げを180度で10分追加しました。
再度計ると、89.5度まで上昇しておりました。やれやれ。
切って内部を実際に見る以外に、焼き上がりパンの状態が把握できなかったので、この場面では温度計が威力を発揮いたしました。
さて、そのお味は…後日報告させていただきます。
以上、温度計を使ってパン作りの作業を振り返りました。
意外とカンに頼っていた捏ね作業が、レシピ通りの温度となっていたことに安心?しました。
温度計はサポート役。あくまで生地の状態を把握して、最適な状態をキープすることが重要であることが再認識できました。
夏場や冬場など、室温や水温が極端な条件の時や、焼き上げの状態を把握する時に、温度計に頼る場面が増えそうですね。