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57.バターは固まっているが、オリーブオイルは液状だ。なぜなぜ?

 パンづくりにおけるバターの役割。

 前回のおさらいになりますが、再掲いたします。


 ①味わいを高める

 ②生地の伸びをよくする

 ③生地のボリュームをだす


 おおまかにいって、この3つでした。

 ①の「味わいを高める」はバターの主成分、脂質によっています。


 バターの成分は次のようになります。


 と書きつつ、ちょくら席を外して台所へ。

 冷蔵庫の扉を開きます。

 一番上の棚にひそんでいたのは、森永乳業さんの「北海道バター」でした。

 さて、その北海道バター100グラムあたりの成分表をみると、


 エネルギー 735キロカロリー すっすごい!

 たんぱく質  0.5グラム ほとんどゼロですね

 脂   質 81.1グラム 堂々の主成分!

 炭水化物 0.8グラム これもほぼゼロ

 ナトリウム 630ミリグラム 食塩相当量は1.6グラムです


 となっています。

 前回に書きましたが、バターは牛乳に含まれる脂肪分を固めたものです。

 この脂肪分が持つ味わいがパンに豊かな風味をつけてくれます。


 なお、100グラムから81グラムを引いた残りは約20グラム。

 そのうち15グラム位が水分です。

 全部が油脂でできていそうなものですが、意外と多いですね。


 気になったので似た用途のショートニングを調べました。

 こちらは100グラム中に、なんと脂質が99.9グラム!

 ほとんど水分は含まれていませんでした。

 バターが持つこの豊富な水分。

 きっと味わいのカギを握っているものと考えられます。

 しかし、これ以上は当方の手に負えなさそうなので、ここまでで「水入り」とします。


 さて、バター以外にも、パン作りに使う油脂があります。

 マーガリンやショートニング、ラード、オリーブオイルなどです。


 マーガリンは植物由来の油脂なので、バターに比べてあっさりした味わいに。ショートニングはマーガリン同様、植物由来の油脂ですが味も香りもほぼありません。あまり風味をつけたくないときに使うと良いようです。


 一方、オリーブオイルはオリーブの実を絞って抽出した油ですね。爽やかな、青っぽい香りが特徴ですが、バターなどと異なって常温では液体です。


 ラードは豚の油が原料ですが…残念ながら、ラードを使ってパンを焼いたことはないです。ネットなどで調べてみると、香ばしく重めの風味となるようですね。


 ラードとパンといえば…思い出しました。

 以前、このエッセー(10.小麦は、その用途に応じて、四つに分れる。)でも触れました塩野七生さん著の「ローマ人の物語」に興味深い記述がありました。

 


 ローマ人は、肉食人種ではなかった。魚は好んだが、動物の肉には執着していない。戦闘の連続で小麦の補給が絶え、やむをえず肉を食べたという記述があるくらいだ。そのローマ人の主食は、小麦を使ったパンか、それとも小麦粉を主としたおかゆである。野菜や果物は好んだ。

(塩野七生著『ローマ人の物語 ハンニバル戦記』文庫本3<新潮社>146ページ)



 ローマの軍団では、十五日ごとに、一日一キロの割合で主食である小麦やその他を配給すると決まっている。内訳は、八五〇グラムの小麦、一五〇グラムの油脂ラード、二〇グラムのチーズに少々の酢であった。

(「『同 ユリウス・カエサル ルビコン以前<中>』文庫本9」91ページ)



 古代ローマ人もパンを食べていた。

 小麦をしっかり一日850グラム!

 製粉前の重量かな? パンのために製粉すると分量が減ると思います。

 それでも、結構たくさん食べていたようですね。

 この一節で、遠い土地の、遠い時代のお話にぐっと親近感が沸いたのを覚えています。

 カロリー摂取の意味もあったのでしょう。

 ラードが配給されていたようです。

 地中海・イタリアといえばオリーブオイルですが、遠隔地へ長期にわたって行軍する厳しい環境下においては、オリーブオイルよりも変性しにくいラードが主だったでしょう。

 欧州では、今日こんにちでもパンにラードを塗るのは珍しくないようですが…ますます興味が膨らみますね。


 さて、オリーブオイルが常温で固まらないのは、油脂を構成している成分がバターよりも固まりにくいからです。

 具体的には、融点(固体が液体になる温度)が16度のオレイン酸とリノール酸(融点-5度)が、オリーブオイルの8割を占めています。

 このため、オリーブオイルは常温では液体状となっています。

 けれども当然16度以下の環境になると、固まりはじめます。


 対するバターは、パルミチン酸(融点62度)が3割を占め、ミリスチン酸(融点は53度と58度)とステアリン酸(融点69度)と合わせると、全体のほぼ5割が50度以上の融点の脂質となります。

 前回書いたとおり、バターが30度くらいまで固体を保っているのは、この油脂成分によっています。


 そして、バターが固形を保っている状態、つまり粘土のように変形を保つ「可塑性かそせい」を持つ状態こそが、冒頭の②と③、ふっくらパンになる手助けをしています。


(バター編、まだ続きます)

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